最も切実な要求は正規・非正規ともに「賃金引き上げ」と「人員増」/全労連の女性労働者実態調査
2026年4月24日 調査部
全労連(秋山正臣議長)は4月13日、女性労働者の労働実態に関する調査結果を公表した。労働実態調査結果では、全労連が試算する「最低生計費」に満たない賃金で働く女性が全体の43.6%に達し、無期雇用の非正規雇用者の約半数が年収200万円未満で働いている状況が明らかになった。全体の約7割が「仕事を辞めたい」と感じながら働き続けており、最も切実な要求は「賃金引き上げ」と「人員増」が正規・非正規ともにトップとなっている。また、妊娠・出産・育児の実態を調べた結果からは、それらを理由に仕事をやめた経験がある女性労働者が非正規で4割台に上っていることなどがわかった。
調査は全労連女性部が実施した「女性労働者の労働実態及びジェンダー平等・健康実態調査」と「妊娠・出産・育児に関する実態調査」の2本。どちらも1992年からおおむね5年ごとに行っており、8回目になる今回は2025年4月~7月に調査した。
集約状況については、「ジェンダー平等・健康調査」が17単産・46都道府県の女性労働者7,942人(うち組合員93.9%)。回答者の雇用形態は、「正社員・正規職員」が5,782人(72.8%)、「非正規・非常勤(無期)」が837人(10.5%)、「非正規・非常勤(有期)」が1,025人(12.9%)、「派遣」が72人(0.9%)、「フリーランス・個人請負」が16人(0.2%)などだった。無期・有期を合わせると、「非正規」は23.4%となる。所属組合は、日本医労連40.8%(3,237人)、国公労連13.5%(1,070人)、生協労連8.8%(698人)、自治労連8.4%(662人)の回答者が多く、この4単産で全体の71.6%を占める。
「妊娠・出産・育児調査」は、12単産・45都道府県の2020年以降に妊娠・出産した女性労働者1,660人(うち組合員93.3%)の回答をまとめた。内訳は、「正規」が88.5%、「(派遣、フリーランス・個人請負を含む)非正規」が9.3%となっている。所属組合は、日本医労連52.1%(865人)、自治労連8.9%(147人)、全教6.9%(115人)、国公労連6.6%(109人)の4単産の回答が多く、全体の74.5%になる。
正規以外の雇用形態で働く3割が「正規のような働き方ができないと思った」/「女性労働者の労働実態及びジェンダー平等・健康実態調査」
「ジェンダー平等・健康調査」の結果からみていくと、「正社員・正規職員」以外の雇用形態で働いている女性労働者が、正規以外の雇用形態を選んだ特に強い理由(5つの選択肢から1つ回答)は、「正規のような働き方ができないと思った」が29.9%でトップ。以下、「子育て・介護などのため」(25.2%)、「その他」(22.5%)、「正規社員になりたかったがなれなかった」(14.0%)、「自分の専門・能力を活かすため」(6.6%)の順だった(不明・無回答2.5%)。傾向は前回調査(2020年)とほぼ同じだが「正社員になりたかったがなれなかった」が5ポイント減った半面、「子育て・介護のため」(前回調査比3.3ポイント増)と「正規のような働き方ができない」(同1.9ポイント増)は増えている。
非正規雇用単身者の3人に1人が非正規の収入のみで生計を担う
調査では、「非正規・非常勤」で働く単身者の33.0%(無期:13.9%、有期:19.1%)、1人で扶養者のいる者の15.6%、(同8.0%、7.6%)、共働き(双方とも非正規)の20.5%(同8.8%、11.7%)が非正規雇用の収入のみで生計を立てていることが明らかになった。また、「非正規・非常勤(無期)」の10.2%(うち2つが9.2%)、「非正規・非常勤(有期)」の9.8%(同8.8%)がダブルワーク以上の働き方をしていることもわかっている。
無期雇用の非正規・非常勤の半数が年収200万円未満
全労連の最低生計費試算調査(2025年10月現在)で明らかになった25歳単身者(女性)が必要とする、年額318万円~342万円程度もしくはそれ以下の年収(項目としては「350万円未満」)の女性労働者は全体で43.6%、さらに非正規雇用では8割以上を占めた(「非正規・非常勤(無期)」88.2%、「非正規・非常勤(有期)」82.0%)。非正規労働者の分布をみると、年収200万円未満が、無期雇用で51.0%、有期雇用で38.5%にのぼっている。なお、「正社員・正規職員」でも、350万円未満が28.2%、200万円未満も2.4%いる。
正規・非正規とも2割強が「差別がある」と回答
仕事の内容や待遇面で男性に比べ不当な差別を受けているかを尋ねた問い(12の選択肢から複数回答)では、前回調査(72.3%)とほぼ同じ全体の72.5%が「差別はない」と答えた一方で、「正社員・正規職員」の22.7%(前回調査22.3%)、「非正規・非常勤(無期)」の24.0%、「非正規・非常勤(有期)」の24.9%(同「非正規」で24.2%)が「差別がある」と回答した。
内容の上位(「その他」を除く)をみると、「正社員・正規職員」は「昇進・昇格に差がある」「能力を正当に評価しない」「結婚や出産で勤め続けにくい雰囲気」、「非正規・非常勤(無期)」は「賃金に差がある」「能力を正当に評価しない」「昇進・昇格に差がある」、「非正規・非常勤(有期)」は、「能力を正当に評価しない」「賃金に差がある」「昇進・昇格に差がある」の順に格差を感じている割合が高い。
ハラスメントを受けた後の対処は「同僚や友人・上司に相談」が多い
ハラスメント経験については、「ない」との回答が58.5%で前回調査(65.1%)を下回り、おおむね3人に1人(34.8%)が「ある」と答えた(「不明・無回答」6.7%)。具体的な内容(15の選択肢から複数回答)としては、人格否定や差別的発言、怒鳴るなどの「適切でない表現で指示、指導を受けた」(11.4%)、「ことばでセクハラを受けた」(9.0%)、「客や利用者、取引先等からのハラスメント(カスタマーハラスメント)」(8.5%)、部下や大勢の人の前など「適切でないタイミングや場所で指示、指導を受けた」(6.7%)などが続く。
ハラスメントを受けた後の対処方法(11の選択肢から主なもの3つまで回答)は、「同僚・友人に相談した」割合が最も高く、次いで「上司に相談した」、「だれにも言わずに耐えた」、「家族に相談した」「相手に抗議・拒絶した」が続く。このうち、抗議や相談をして「解決した」人は全体の約3割(29.2%)。「解決しなかった」人は47.1%で、「不利益な扱いをされた」とする人も2.0%いるなど、納得する解決が難しい実態がうかがえる。
約7割が「仕事をやめたいと思うことがある」
こうした状況のなか、7割近くの人が「仕事をやめたいと思うことがある」(「いつも思っている」14.8%+「ときどき思っている」53.6%)。やめたい理由(11の選択肢から複数回答)は、正規・非正規(無期・有期)のいずれも「多忙で身体的・精神的にきつい」と「仕事に見合った賃金が払われていない」が突出している。ただし、上位2項目の割合は非正規がほぼ同じなのに対し、正規は「多忙で身体的・精神的にきつい」が飛び抜けて高くなっている。
健康不安のある人の半数が「具合が悪くても仕事を休めない」
現在の健康状態については、38.6%が「健康である」とした一方で、「やや不安がある」(46.8%)と「大変不安がある」(6.5%)を合わせた53.3%が不安を感じていたほか、「病気加療中」も6.3%みられた。「具合が悪くても仕事を休めなかったことがある」人も50.8%でほぼ半数。その主な理由は「人員不足」「仕事が多忙」「同僚への気兼ね」だった。
増える「賃金の引上げ」を求める声
職場の状況について「今、もっとも切実な要求」(23の選択肢から3つ以内で回答)を聞いたところ、「賃金の引上げ」(68.6%)と「人員増」(51.9%)の割合が突出して高かった。特に、「賃金の引上げ」が、「正規」で前回調査比20ポイント増の69.3%、「非正規」も前回より約13ポイント増えて67.5%に跳ね上がっており、物価上昇局面での賃上げを求める声が大きくなっている様子が浮び上がる。なお、「人員増」の要求では、非正規が前回より約10ポイント増えたことが目立つ。
賃上げに関しては、自由記述欄にも「物価高騰のため、賃金アップして、心に余裕を持った生活を送りたい」「賃金(手取り)が少なく、常に退職が頭にある」などの意見があったほか、初任給や若年層に賃上げの比重が置かれているなかで「10年勤めた先輩職員から手取りは1年目とほとんど変わらないと聞いて、それなら続ける意味がないのでは?と思う」「低賃金の中このまま5年、10年続けられるか自信がない。なんとか賃金を上げて欲しい」などの声も寄せられた。
人員不足に伴う業務過多や不平等感を訴える声も
人員不足に伴う業務過多を訴えるコメントも多く、「人員不足のため、ライフプランが立てにくい。仕事や自己研さんを優先して妊娠・出産が先送りになる」「慢性的な人手不足が各職場でおきており、若手が退職を決断することもある」「いつもギリギリの人員で働いている。休むと他の人に迷惑がかかる。忙しくても自分がガマンして動くしかない」などと言った記載がみられた。また、「同世代の女性が多い職場では産休が重なり、残った人に負担がかかる。子育て世代が多い部署も、フォローは残った人が負担するしかない」「全体の人数はいるが育児時間の方たちは、朝遅く夕方も早く帰宅するため、フルタイムで働ける人の配置を増やしてほしい」「休みを取らないといけない理由は何にせよ代替要員をおく制度ができれば皆平等。先に休みだけ充実させないで。残っている人に配慮を」など、不平等感が職場環境に悪影響をもたらすことを指摘する記述も少なくなかった。
「妊娠・出産・育児を理由に仕事をやめた経験がある」非正規は4割台/「妊娠・出産・育児に関する実態調査」
次に、「妊娠・出産・育児調査」結果に目を移すと、妊娠・出産・育児を理由に仕事をやめた経験のある人は、「正社員・正規職員」が5.0%だったのに対し、「非正規・非常勤」では無期が40.5%、有期は47.9%におよんだ。
2割が「職場に両立を支援する制度や雰囲気がなかった」ために辞める
仕事をやめた理由については、「職場に両立を支援する制度や雰囲気がなかった」の割合が21.1%で最も高く、次いで「勤務時間が合わなかった」(15.8%)、「自分の体力がもたなそうだった(仕事と子育て両立への自信がなかった)」(15.1%)などが続いた。これを雇用形態別で見ると、「正社員・正規職員」は「職場に両立を支援する制度や雰囲気がなかった」(21.9%)、「勤務時間が合わなかった」(12.3%)、「自分の体力がもたなそうだった」(11.0%)、「非正規・非常勤(無期)」は「勤務時間が合わなかった」(26.7%)、「職場に両立を支援する制度や雰囲気がなかった」(23.3%)、「自分の体力がもたなそうだった」(20.0%)、「非正規・非常勤(有期)」は「つわりや体調不良のため」(26.5%)、「職場に両立を支援する制度や雰囲気がなかった」(20.6%)、「自分の体力がもたなそうだった」(14.7%)の順だった。
6割が取得していないパートナーの出生時育児休業
妊娠中の状況(7つの選択肢から複数回答)では、「順調」と答えた人は全体で30.8%。妊娠に伴う何らかの異常については、「つわりがひどい」(28.8%)や「切迫流産・切迫早産」(20.1%)、「貧血」(17.3%)の割合が高い。雇用形態別では、「非正規・非常勤(有期)」は「順調」が19.7%と低く、不調が高い傾向がみられる。
なお、2022年10月から施行されたパートナーの出生時育児休業に関しては、「取得していない」が60.6%と約6割を占め、「1 回」の取得は23.2%、「2回」は3.7%だった。
パートナーの育休取得率は正規で前回調査比4倍に
一方、子育てに関するパートナーの育休取得率は、「正社員・正規職員」では「パートナーが取った」(0.2%)と「自分とパートナーが取った」(21.5%)を合わせて21.7%となり、前回調査(5.3%)の約4倍に増えた。
「非正規・非常勤」の取得状況では、「自分が取った」と「自分とパートナーが取った」を合わせた割合は、無期雇用が60.8%だったのに対し、有期雇用は47.9%にとどまっており、有期雇用で働く労働者の権利を行使しづらい状況が垣間見える。また、「仕事をやめた」非正規の割合も、無期雇用は16.2%にとどまっているが、有期雇用は32.4%で3割を超えている。
パートナーが育休を取った人のパートナーの育休取得期間は、「正社員・正規職員」では1カ月未満が49.8%(前回調査59.9%)、3カ月未満75.8%(同73.6%)、1年未満95.6%(同95.8%)の回答だった。前回調査に比べ1カ月未満が約10ポイント減少しており、取得期間がやや長期化している。
両立支援の改善に向け子どものための休暇制度の拡充を
「子育てに関する両立支援制度の改善」に向けて要求したいことを聞いた設問(8つの選択肢から3つ以内回答)では、「子どもの看護休暇の日数増」(62.0%)、「参観日、PTA活動など家族的責任を果たすための休暇の新設・拡充」(49.3%)、「子どもの看護休暇の対象年令の引き上げ」(39.9%)など、前回調査同様、子どものための休暇制度の拡充を求める回答が上位を占めた。


