正規雇用看護職員の離職率は11.0%/日本看護協会調査
2026年4月8日 調査部
日本看護協会(秋山智弥会長)は3月31日、「2025年病院看護実態調査」結果を公表した。それによると、看護職員の離職率は11.0%で前年度から微減。新卒採用看護職員の離職率も前年比0.4ポイント減の8.4%となった。看護職員の給与(平均)は、税込で「高卒+3年課程」の新卒初任給が前年より8,951円増えて28万5,078円、「大卒」の新卒初任給も同8,464円増の29万2,527円だったのに対し、勤続10年(31~32歳)の非管理職は同5,953円増の34万278円。いずれも上昇したものの、新卒看護師と勤続10年看護師の給与引き上げ額の差が目を引く。また、夜勤手当は3交替制、2交替制ともに2010年とほぼ同じ手当額にとどまっている。なお、日本看護協会は同日、「2025年看護職員実態調査」結果も発表した。調査結果からは、今後も看護師として働き続けたいとの意向が前年度調査より5ポイント近く低下して約6割となるなどの実態が明らかになっている。
「病院看護実態調査」は、病院看護職員の需給動向や労働状況、看護業務の実態などの把握を目的に毎年、実施しているもの。調査期間は2025年10月1日~11月17日。全国の病院8,022施設の看護部長に回答を依頼し、3,502施設からの有効回答をまとめた(有効回収率43.7%)。
新規採用看護職員の離職率は8.4%に
調査結果によると、2024年度の正規雇用看護職員の離職率は前年度より0.3ポイント減少して11.0%。新卒採用看護職員も0.4ポイント.減って8.4%となった。既卒採用看護職員は前年と同じ16.1%。2024 年度の正規雇用看護職員の総退職者数が減少した(「とても減少した」と「やや減少した」の合計)と答えた病院は31.8%で、前年度に比べ3.2ポイント増加している。
看護管理者が考える新卒看護師の主な離職理由は精神的疾患がトップ
2024年度に年度内離職した新卒看護師がいた病院の看護管理者が考える主な退職理由(上位5つ選択)の割合は、「健康上の理由(精神的疾患)」が54.6%で最も高く、以下「自分の看護職員としての適性への不安」(46.6%)、「自分の看護実践能力への不安」(44.2%)、「上司・同僚との人間関係」(27.0%)、「他施設への関心・転職」(23.0%)、「健康上の理由(身体的疾患)」(15.4%)、「他分野(看護以外)への関心・転職」(14.9%)が続き、これら上位7項目が10%を超える回答割合を示している。なお、主な退職理由の上位7項目を病床規模別でみた場合も「健康上の理由(精神的疾患)」の割合が高い傾向にあり、とりわけ500床以上の病院では、71.2%に達している。
なお、2024年度に病気で1カ月以上の連続休暇を取得した正規雇用看護職員がいた病院は72.6%で、そのうちメンタルヘルス不調者がいた病院は79.5%と約8割を占めた。「メンタルヘルス不調者がいた」病院の平均人数は5.4人で、2023年度と同様の結果。なお、2024年度に産休・育休で1カ月以上の連続休暇を取得した正規雇用看護職員がいた病院は81.2%、介護で1カ月以上の連続休暇を取得した正規雇用看護職員がいた病院は16.4%だった。
正規雇用看護職員の基本給引き上げ率は新卒の約3%に対し勤続10年は1.6%
次に、看護職員の給与をみていくと、2025年度の新卒看護師(高卒+3年課程卒)の初任給は、基本給が平均21万6,416円(前年度比6,719円・3.2%増)、税込の給与総額が平均28万5,078円(同8,951円増)。大卒の新卒看護師の初任給は、基本給が平均22万1,883円(同6,269円・2.9%増)、税込給与総額は平均29万2,527円(同8,464円増)だった。これが勤続10年の看護師(31~32歳・非管理職)になると、基本給は平均25万4,286円(同3,906円・1.6%増)、税込給与総額は平均34万278円(同5,953円増)となる。看護師の平均基本給与額は新卒看護師、勤続10年の看護師ともに前年度より増加していたが、引き上げ率は新卒の3%前後に対し、勤続10年は1%台に留まっている。
なお、本調査における「税込給与総額」は、通勤手当・住宅手当・家族手当・夜勤手当・当直手当・看護職員処遇改善に係る手当等を含む(時間外手当は除く)。ただし、新卒者には家族手当は含まれず、単身・民間アパート居住とする。また、夜勤をした場合には、当該の月に3交代で8回(2交代で4回)をしたものとする。
夜勤手当額は3交替制・2交替制とも横ばい続く
調査は、「経年的な変化を把握する」ため、夜勤手当額も調べている。それによると、看護職員が平日に行う1回あたりの夜勤に支払っている手当は、「深夜時間帯(22時から5時まで)の割増賃金を含む定額の夜勤手当を支給している」割合が52.0%で最も高く、次いで「深夜時間帯の割増賃金とは別に定額の夜勤手当を支給している」(31.2%)が高かった。「定額の夜勤手当を支給している」と答えた病院の1回あたりの夜勤手当は、「3交替制準夜勤」4,300円、「3交替制深夜勤」5,211円、「2交替制夜勤」1万1,470円で、手当額はいずれも2010年とほぼ変わっていない。前述の通り、看護師の月額給与は上がっているが、夜勤手当額については横ばいが続いている。
2025年9月の1カ月間の一般病棟に勤務する看護職員の夜勤状況を調べたところ、回答病院全体の「夜勤時間0時間の夜勤者」の割合は全体の6.7%(対前年度比0.3ポイント増)。「夜勤時間1~16時間未満の夜勤者」の割合は9.0%(同0.2ポイント増)だった。その一方で、「夜勤時間72時間を超える夜勤者」の割合は33.9%。前年度より0.4ポイント減ったものの、依然として全体の3分の1を占めている。
看護職員(正職員)を確保するために導入している働き方(複数回答)を尋ねたところ、「日勤のみ」が54.7%と最も割合が高く、次いで「夜勤回数や夜勤時間、曜日が選択できる」(44.1%)、「短時間勤務」(39.3%)、「本人の希望の専門領域・部署への配属」(38.7%)などの順。「夜勤のみ」の働き方を選べるところも31.2%あった。
72.9%の病院で看護師から医療関係職種へのタスク・シフト/シェアを実施
看護師から医師以外の医療関係職種(看護補助者は含めず)へのタスク・シフト/シェアの実施状況は、「実施している」と回答した病院が前回調査より2.3ポイント増の72.9%。タスク・シフト/シェアを実施した「医師以外の医療関係職種」(複数回答)は、「薬剤師」(64.2%)や「臨床検査技師」(48.9%)、「理学療法士」(45.8%)、「臨床工学技士」(39.0%)などで高い。
タスク・シフト/シェアの取り組みを進めるにあたっての課題(複数回答)は、タスク・シフト/シェアを「実施している」病院の75.7%、「実施していない」病院の66.0%が「タスク・シフト/シェアを受ける側の医療関係職種の余力(人員確保等)」と回答。次いで割合が高かったのは、「医療従事者全体の意識改革・啓発」で、「実施している」病院の63.0%、「実施していない」病院の58.9%が選択している。ちなみに、「タスク・シフト/シェアに関する組織の方針決定や取組み内容を決定する会議体等がない」は、「実施している」病院が26.2%だったのに対し「実施していない」病院は49.3%もあり、他の課題に比べタスク・シフト/シェア実施の有無で大きな開きがみられた。
半数の病院が「看護記録の作成支援」の導入を検討
調査は、AI・ICTを活用した看護業務効率化に関する質問も設けている。AI・ICTを活用した看護業務効率化の取り組み状況は、「患者の状態把握」のための離床センサー等を導入している病院が73.8%でトップ。次いで、「勤務シフトの作成支援」のためのソフト等を導入している病院が32.4%、「院外との情報共有・協働」のためのICT等を導入している病院が26.8%あった。また、「看護記録の作成支援」のための音声入力ソフト等を導入している病院は5.6%に過ぎなかったものの、今後の導入を検討している・関心があるとした病院が49.9%あり、導入意向が一番強かった。
看護業務の効率化に向けたAI・ICTの導入の課題になること(上位3つ選択)は、「財源の確保(初期費用)」(84.3%)や「財源の確保(運用費)」(69.2%)といった財源問題が突出して高く、以下、「院内の他システムとの一体的な運用」(25.2%)、「院内のシステム部門との連携・協働」(22.2%)、「組織上層部の理解」(20.0%)などとなっている。
看護職として働き続けたいとの回答が約6割に低下/2025年看護職員実態調査結果
日本看護協会は同日、「2025年看護職員実態調査」の結果も発表した。それによると、今後の「看護職としての就業継続意向」は、「とてもそう思う」(18.5%)と「ややそう思う」(44.4%)を合わせた62.9%に継続意向があり、2021年の前回調査(「とてもそう思う」(25.4%)と「ややそう思う」(42.2%)を合わせて67.6%)より4.7ポイント低下した。
就業継続意向を年齢別でみると20~30代で他の年代に比べて低く、現在の勤務先別では病院勤務者で他の勤務先より低かった。また、年齢が20~30代の正規雇用職員(フルタイム)は、「超過勤務時間が短い者」や「有給休暇取得率が高い者」の就業継続意向が、そうでない者より高い。
看護職として働き続けるために重要視するのは「業務や役割、責任に見合った賃金」
看護職として働き続けるために重要視すること(3つまで回答)は、「業務や役割、責任に見合った賃金額である」と答えた割合が53.6%で最も高く、以下、「休みがとりやすい」(49.6%)「職場の人間関係が良い」(48.5%)「希望する働き方ができる」(38.9%)などの順だった。これを就業継続意向の有無別にみても、「業務や役割、責任に見合った賃金額である」は、就業継続意向に関わらず約6割が重要視していた。また、看護職としての就業継続意向がある人の方が「職場の人間関係が良い」や「希望する働き方ができる」を、ない人の方が「休みがとりやすい」や「時間外労働(残業)が少ない」を重視する傾向もみられた。
夜勤中の実際の休憩時間・仮眠時間は規程より短いとの回答が多数
現在の勤務状況が「自営業」「離職中」以外の人に夜勤状況を尋ねたところ、「2交代制(16時間以上の夜勤)」の割合が25.2%と最も高く、次いで「職場(配属部署)に夜勤はない」(19.6%)、「職場に夜勤はあるが現在はしていない(日勤のみ)」(11.3%)、「2交代制(16時間未満の夜勤)」(10.1%)が続く。
病院勤務者の夜勤中の休憩時間・仮眠時間と実際に取得した仮眠時間を比べると、規程で定められている休憩時間は、3交代制は「60~90 分未満」(57.3%)や「60 分未満」(24.3%)が多く、2交代制では「120~150分未満」(45.7%)や「90~120分未満」(23.4%)が多かった。他方、実際に取った休憩時間は、3 交代制で「60分未満」(62.6%)や「60~90分未満」(22.5%)、2交代制では「90~120分未満」(32.9%)や「120~150分未満」(23.8%)が多い。3交代制、2交代制とも規程上の休憩時間の最頻値より実際に取った休憩時間の最頻値が短い時間になっており、「休憩時間が十分に確保されていない現状が明らかになった」(日本看護協会)格好だ。
夜勤を担うには「納得感ある夜勤手当」「夜勤明け翌日の休日確保」「夜勤中の休憩・仮眠の確保」が必要
こうした状況を踏まえて、「夜勤を担うことができる、あるいは夜勤を続けることを可能とする対応や条件」を3つまでの回答で尋ねると、「納得感のある夜勤手当が支給される」の割合が41.4%で最も高く、次いで「夜勤明けの翌日が必ず休日のシフトとなる」(39.7%)、「夜勤中に十分な休憩・仮眠が確保できる」(35.6%)などが続いた。
この1年間に約半数の看護職員に就業先で暴力やハラスメントを経験
この1年間に就業先で暴力や暴言、ハラスメントを受けた経験がある看護職員は49.3%に上る。その内容は「精神的な攻撃」や「意に反する性的な言動」、「身体的な攻撃」などが多かった。
暴力やハラスメントなどを誰から受けたか(複数回答)については、「患者・利用者」(69.3%)、「上司(看護職)」(43.0%)、「医師」(31.7%)の順に高く、トップの「患者・利用者」からの暴力・ハラスメントは、「意に反する性的な言動」、「身体的な攻撃」、「精神的な攻撃」の順、2番目の「上司(看護職)」からの暴力・ハラスメントは「精神的な攻撃」、「過大な要求」、「意に反する性的な言動」、「人間関係からの切り離し」の順だった。
調査は、病院・地域・行政・教育機関など多様な領域で活躍する看護職の働き方の実態と意識を明らかにすることを目的に、同協会の会員を対象に4年に1度、実施。調査期間は2025年10月1日~11月12日。会員名簿から無作為抽出した1万3,633人に回答を依頼し、4,430人からの有効回答をまとめた(有効回収率34.5%)。


