短時間組合員の賃上げ率が10年連続で正社員を上回り、300人未満も健闘/UAゼンセン「第一のヤマ場」の妥結状況
2026年3月27日 調査部
UAゼンセン(永島智子会長)は3月19日、2026労働条件闘争の「第一のヤマ場」として、同日午前10時時点の妥結集約を発表した。正社員組合員の制度昇給やベアなどを合わせた「妥結総合計」は、加重平均で1万8,219円・5.45%で、ベアなどの賃金引き上げ分は同1万2,966円・3.88%となった。規模別では現状、額・率ともに300人未満が300人以上を上回っている。短時間組合員の時給引き上げは84.6円(6.92%)で、昨年同時期より約9円高く、率でみると10年連続で正社員組合員を上回っている。こうした結果を永島会長は、「今年の交渉で掲げた『実質賃金1%程度の上昇を社会全体に定着させる』取り組みに近づけるもの」だと強調している。
正社員組合員の引き上げ額は「総合計」で1万8,219円
妥結集約によると、19日午前10時時点で、正社員(フルタイム)組合員は142組合、短時間(パートタイム)組合員は99組合、契約社員組合員は15組合が妥結し、合計で4割にあたる87万6,000人強の組合員の賃上げが決まった。
正社員組合員の妥結状況をみると、制度昇給とベアなどを合わせた「総合計」での引き上げ額の加重平均(29万5,417人)は1万8,219円、率では5.45%。賃金体系維持分が明確な組合の賃金引き上げ分の加重平均(20万7,421人)は1万2,966円、率で3.88%となった。UAゼンセンは、「額では結成以来、最高水準となり、物価上昇を1%程度上回る賃上げの定着に向けた大きな一歩となった」と評価している。
300人未満の賃金引き上げ分が300人以上を上回る
これを規模別にみると、「300人以上」の「総合計」での引き上げ額は加重平均(29万474人)で1万8,211円、率で5.44%、賃金体系維持が明確な組合の賃金引き上げ分(20万4,484人)は1万2,955円、率で3.87%。これに対し、「300人未満」の「総合計」での引き上げ額は同(4,943人)1万8,688円、率は5.95%で、賃金体系維持が明確な組合の賃金引き上げ分(2,937人)は1万3,733円、率で4.44%だった。どちらの規模も「総合計」の要求基準の1万8,000円を超え、額・率ともに「300人未満」が「300人以上」を上回っている。ただ、この時期に妥結できる中小組合はまだ少なく、今後、この水準をどこまでキープできるかが規模間格差是正の取り組みの焦点になりそうだ。
「総合計」の賃上げ率は3部門とも5%台
部門別では、「製造産業部門」の「総合計」での引き上げ額は加重平均(4万8,932人)で2万866円、率では5.86%で、賃金体系維持が明確な組合の賃金引き上げ分(4万2,411人)は1万4,077円、率で3.95%。「流通部門」の「総合計」での引き上げ額は同(18万1,205人)で1万6,807円、率は5.14%となり、賃金体系維持が明確な組合の賃金引き上げ分(14万1,821人)は1万2,383円、率は3.77%。「総合サービス部門」は、「総合計」での引き上げ額が同(6万5,280人)で2万154円、率では5.97%で、賃金体系維持が明確な組合の賃金引き上げ分(2万3,189人)は1万4,500円、率で4.41%となっている。「総合計」は、3部門とも5%台の水準となっている。
短時間組合員の引き上げは本部要求基準とほぼイーブン
一方、短時間組合員の妥結状況をみると、「総合計」(時給)での引き上げは、加重平均(56万3,017人)で84.6円(6.92%)と、昨年同時期を9円近く上回った。妥結状況はUAゼンセン本部の要求方針(制度昇給分を含め時間額85円、7%基準)とほぼイーブン。額・率ともに結成以来、最高水準で、正社員組合員の妥結総合計率と比べても、正社員の5.45%を1.47ポイント上回る結果となっている。この時期で正社員の引き上げ率を上回るのは10年連続。なお、前年と比較できる96組合(55万7,041人)の加重平均額は9.86円(0.49%)の増加となっている。こうした内容についてUAゼンセンは、「雇用形態間格差是正の流れが定着している」などと評価している。
また、全体の賃金の底上げを行う観点から重点を置く企業内最低賃金の水準引き上げについては、正社員組合員は妥結平均が月額22万1,216円(95組合)、時間額1,354円(93組合)。前年比較ができる組合の増額分は、月額1万3,699円、時間額101円(ともに83組合)だった。短時間組合員では、前年と比べられる51組合の増額分は67円となっている。
「実質賃金1%程度の上昇を社会全体に定着させる取り組みに近づけた」(永島会長)
同日の記者会見で永島会長は、正社員組合員の賃上げ状況を「3年連続で5%台後半、ベースアップも6%に迫る水準となり、額ではUAゼンセン結成以来、最高水準となった」ことを指摘するとともに、短時間組合員についても「(率で)6.9%、時間額では85円と昨年を大きく上回り、結成以来最高の結果を更新しており、この時点での妥結率は正社員を10年連続で上回っている」などと説明。「これらの成果は、今年の交渉で掲げた『実質賃金1%程度の上昇を社会全体に定着させる』取り組みに近づけるもの。不透明な環境下でも労使双方が物価上昇を上回る賃上げの大切さを共有し交渉を進めたことが結果につながった」などと評価した。そのうえで、「先行きが見えにくい状況だからこそ、実質賃金をしっかりと上げていく必要性がこれまで以上に増している」と述べて、実質賃金確保の重要性を改めて強調。その認識が「社会全体に広がるよう、引き続き訴えていきたい」として、今後の交渉の展開に力を尽くしていく姿勢を示した。
化学・繊維素材の労組が共闘体制で相場観を構築
会見では、各部門からも報告があった。前年同期比で3組合増の26組合が妥結し、総合計の額・率ともに前年同期を上回っている製造産業部門は、旭化成やクラレなどの化学素材の4労組が業種共闘を組んで交渉にあたり、2年連続の満額で決着。これに続く東洋紡、日東紡績、富士紡績などの繊維素材の業種でも、妥結した9組合のうち2組合が満額を獲得したほか、それ以外の組合も高水準の回答を引き出した。吉山秀樹・部門事務局長は「同業種の組合で共闘体制をつくり、情報交換しながら闘いを進めたことが結果に繋がった」などと述べて、後続組合に向けてプラスになる相場を示せている状況を指摘。「この流れを相場も含め、後ろに引き継いで、中小・地方の交渉に拡げていく」との考えを示した。
流通では20組合で平均2日間の休日増を獲得
前年を上回る方針としたうえでパートタイマーの時間額の引き上げ要求を正社員より1%高く設定した流通部門は、①正社員は70組合の妥結引き上げ分1,161円、総額1,180円で昨年を上回る②70組合中30組合が4%超の引き上げ総額を勝ち取っており、300人未満組合が300人以上組合を上回る結果にもなっている③他方、パートタイマーは66組合中21組合が総額90円超(前年同期4組合)で、妥結結果はパートタイマーが正社員を1.31%上回っている――などの現状を報告。さらに、労働時間関連でも20組合で平均2日間の休日増(前年は11組合で平均1.7日増)を獲得しているという。桂義樹・部門事務局長は、「労働時間に対する課題を解決しなくてはならないとの労使の共通認識が高まっている」と話した。
総合サービスは約4割が「満額もしくは満額以上」の回答で妥結
総合サービス部門では、正社員の賃金について、ここまでで妥結した46組合中18組合で満額もしくはそれ以上の回答で妥結していることに加え、全体より平均で2,000円程度高い妥結額になっていることを報告。髙井哲郎・部門事務局長は、「賃金水準の低い業種が多いこともあり、率が高く出ているところもあるが、これも業種間格差の是正に繋がっている」と捉えたうえで、「高めの賃上げ額が定着してきている」などと話した。パートタイマーについても、加重平均で前年比5.9円・0.51ポイント上回る結果がでているとしている。「早い段階で、労使で繰り返し議論を進めた結果」だとして、今の流れを中小組合につなげていくことに意欲をみせた。
正社員のベアなどの賃金引き上げ分は加重平均で1万2,895円・3.84%に/「第二のヤマ場」の妥結状況
UAゼンセンは26日に2026労働条件闘争の「第二のヤマ場時点」での妥結状況を発表した。集約は、同日10時時点での、正社員組合員(194組合)、短時間組合員(115組合)、契約社員組合員(20組合)の妥結内容をまとめたもの。合計で93万人強の賃上げが決まった。
それによると、正社員組合員の制度昇給やベアなどの「妥結総合計」での引き上げ額の加重平均(32万4,901人)は1万8,101円、引き上げ率は5.41%。賃金体系維持が明確な組合の賃金引き上げ分の加重平均(23万1,203人)は1万2,895円、率で3.84%となっている。
短時間組合員の「妥結総合計」は、加重平均の引き上げ額が(59万7,596人)で84.3円、率は6.91%。「第二のヤマ場」時点での短時間組合員の「妥結総合計」は、前年同時期より10円以上高く、11年連続で正社員組合員の引き上げ率を上回った。
規模別をみると、300人未満の組合の「妥結総合計」(加重平均)は1万7,983円(5.82%)、300人以上の組合は同1万8,104円(5.40%)。総合計率は、300人未満が300人以上を上回っている。
企業内最低賃金は、正社員組合員の妥結平均が月額21万9,183 円(117 組合)、時間額1,347円(113組合)。前年と比較できる組合の増額分をみると、月額1万3,824 円(103組合)、時間額100円(101組合)の引き上げとなった。短時間組合員では、前年と比べられる59組合の増額分は66円となっている。


