大手組合の賃金改善分の平均獲得額は比較可能な2014年以降で最高/金属労協の先行大手組合の回答状況
2026年3月27日 調査部
自動車総連、電機機合、JAM、基幹労連、全電線の5つの産業別労組でつくる金属労協(JCM、金子晃浩議長)が2026闘争における集中回答日に設定した3月18日、各産別に加盟する大手労組に対し、経営側からの回答が一斉に示された。同日午後12時30分現在で回答を引き出した大手を中心とする49の集計対象組合の賃金改善額の平均は1万5,450円となり、比較可能な2014年以降で最も高い獲得額となった。すべての集計対象組合(53組合)の集計が出揃った19日午前11時現在の集計では、同額は1万5,418円となっている。18日午後に行われた会見で金子議長は「積極的な賃上げによって組合の生活不安を払拭し、金属産業の現場力、競争力を高めることに加えて、経済の好循環の原動力となり得るなど、労使の社会的役割を果たしたものと高く評価したい」と語った。
1万5,450円は引き上げ率に換算すると5.1%
金属労協が集中回答日に設定した18日、大手を中心とする集計対象組合(今回の闘争では53組合が登録)の回答がほぼ出揃った午後12時30分現在の回答集計(49組合)では、49組合すべてでベースアップなどの賃金改善分を獲得し、回答額の単純平均は1万5,450円となった。
賃金改善分は昨年同時期の1万4,598円を852円上回るとともに、比較可能な2014年以降で最高となった。1万5,450円は引き上げ率に換算すると、5.1%になるという。
「前年以上に労使での共通認識が図れた」(金子議長)
同日午後に金属労協本部(都内)で行われた金属労協・連合金属共闘連絡会議の記者会見で、金子議長(自動車総連会長)は、ここまでの交渉での経営側の姿勢について「昨年のアメリカの関税政策や現在の原材料供給リスクの不確実性、国際競争力の激化、足元では中東情勢なども労使交渉の話題に上がっており、様々な事業環境の不透明さ、さらにはこの4年間の賃上げの水準感の高さもあり、具体的な水準については最終盤までなかなか慎重な姿勢を保っていたところも多かった印象がある」とする一方、「闘争全体を通じてみれば、物価上昇による生活負担感の増加や賃上げに対する社会的要請の高まり、さらには人材確保や企業の魅力向上などの観点から、賃上げの重要性については、前年以上に労使での共通認識が図れてきていたのではないか」と話した。
同時点までの回答については「物価上昇を大きく上回る高い水準での回答だ」とし、「積極的な賃上げによって組合の生活不安を払拭し、金属産業の現場力、競争力を高めることに加えて、経済の好循環の原動力となり得るなど、労使の社会的役割を果たしたものと高く評価したい。今後回答を引き出す組合については、いい流れをしっかり受け止めて、この成果を糧に自らの要求を実現する賃上げの獲得を引き続き強く求め、結果にこだわる取り組みを進めてほしい」と語った。
最終的なすべての集計対象組合(53組合)での集計をみると、要求額の単純平均1万6,270円に対し、賃金改善分の単純平均は1万5,418円。昨年と比べるとプラス820円で、2014年以降での最高水準であることには変わりはない。
自動車総連では大手12組合すべてで満額か満額を上回る回答
主要な加盟産別の回答状況をみると、自動車総連(金子晃浩会長)では、トヨタ労組と日産労組は要求額、回答額ともに非公開としているが、自動車総連は「要求どおりの回答を獲得した」と説明。スズキ労組は総額で1万9,000円の要求に対し、経営側はそれを上回る2万500円を回答した。また、マツダ労組や三菱労組など、残りの9組合でも満額回答を獲得し、メーカー主要の12組合すべてで満額かそれを上回る回答を受けた。
メーカー主要12組合でのカーブ維持分と改善分を合わせた平均回答額(単純平均)は1万9,333円で、昨年を863円上回り、1993年以降で最も高い水準となった。
一時金については、本田技研労組といすゞ労組を除く10組合が要求どおりの回答を獲得しており、月数が高いところではトヨタ労組が7.3カ月、スズキ労組が6.3カ月などとなっている。メーカー主要12組合での平均回答月数(単純平均)は5.6カ月で、昨年を0.2カ月下回った。
ヤマハ発動機など2組合で年間休日数の引き上げを獲得
自動車総連では2027年までに休日5日増をめざす年間休日数の引き上げに取り組んでいるが、「2026年度カレンダーにおいて、年間休日数を1日追加する」ことを要求していたヤマハ発動機労組で、「年間休日1日増(122日)」を獲得。「2028年度カレンダーまでに年間休日数を126日とする」ことを要求していた日本特殊陶業労組では、「年間休日2日増(123日)」を獲得するなど、大手メーカーで初めて具体的な引き上げ回答を獲得する組合が出た。
18日の会見で金子会長は、大手メーカーの回答結果について「今後に続くすべての組合にとって大きな後押しになった。大変厳しいなかで各組合が自らの目指す要求水準をしっかり獲得できたことを高く評価したい」などとコメント。年間休日数で初めて引き上げ回答を獲得した組合が出たことについても、継続交渉中の他組合の後押しに大きく貢献したことを強調した。
中闘組合は6組合で満額回答を獲得、すべてで昨年実績と同等か昨年を上回る水準に
電機連合(神保政史会長)で産別統一闘争を展開する中闘組合(12組合)は、「開発・設計職基幹労働者」(30歳相当)の個別ポイントで「1万8,000円以上」の水準改善を要求していたが、パナソニックグループ労連、日立グループ連合、三菱電機労連、全富士通労連、NECグループ連合、村田製作所グループ労連の6組合が満額回答を受けた。東芝グループ連合と明電舎の2組合は1万6,000円、シャープグループ労連、富士電機グループ連合、OKIグループ連合、安川グループユニオンの4組合は1万5,000円で折り合った。
各社の同ポイントでの賃金体系維持分は2%程度であり、これを含めた全体の賃上げ率にすると、「6.5%~7%程度」(神保会長)になるという。
今次闘争では、電機連合は16日に、回答未達の場合、闘争行動に入るいわゆる「歯止め基準」を「1万2,000円以上」に設定。最終的には、12組合すべてが歯止め基準を大きく上回る水準で妥結するとともに、いずれも昨年実績と同等か、昨年を上回る水準となった。
一時金の回答をみると、交渉方式を採用する日立グループ連合は年間6.66カ月、三菱電機労連は年間6.10カ月、富士電機グループ連合は年間6.40カ月、OKIグループ連合は年間4.60カ月となっている(これ以外は業績連動方式で決定)。
18日の会見で神保会長は、産業を取り巻く環境や実質賃金の向上などの観点から前年より1,000円高い要求額をかかげた結果、「要求趣旨に沿って論議を重ね、電機産業労使として思いを共有し合えたことがこの結果を結んだ」と評価し、グループ企業やサプライチェーン全体に波及させていくことを訴えた。
コマツは賃金改善1万7,460円、島津は1万3,903円+α
機械・金属関連の中小労組を多く抱えるJAM(安河内賢弘会長)の大手組合では、クボタユニオンが賃金構造維持分込みで2万1,000円(定期月俸改定額、進級原資含む)、コマツユニオンが賃金改善1万7,460円(うち160円は再雇用社員・非正規社員の配分)、オークマが賃金改善1万円(35歳銘柄)、島津が賃金改善「1万3,903円+カフェテリアプラン改善原資514円」、アズビルが賃金改善1万5,600円、横河電機が賃金構造維持分込みで約2万4,500円、シチズンが賃金改善1万3,500円、ジーエス・ユアサが賃金改善1万8,000円、NTNが賃金改善1万5,000円(30歳銘柄)、日本精工が賃金改善1万2,000円(35歳銘柄、29歳以下は若年層賃金是正分としてプラス3,000円)、ヤンマーが賃金改善1万7,000円をそれぞれ引き出した。
18日の会見で安河内会長は、同時点で先行グループが引き出した賃金改善の平均は1万93円で、300人未満の組合でみると9,162円となっていると説明。「いずれの数字も、JAM結成以降で最高で、昨年を上回る。現段階では順調なスタートが切れた」と評価した。また、安河内会長は、「これから中小の回答がでてくるが、中小がしっかりとした回答を得るためには価格転嫁の取り組みが欠かすことができない。そういう意味では1月1日に施行された中小受託取引適正化法(取適法)をわれわれの産業全体に広げていく取り組みが求められている」とし、「3月月内決着に向けて準備をし、4月以降も交渉が続くので、しっかりと最後まで中小企業に注目していただきたい」と話した。
JAMの最新の回答集計(25日まで、執筆時点)をみると、賃金構造維持分を明示している組合で、賃金改善分を獲得した組合は436組合あり、賃金改善分の平均額は1万277円となっている。規模別にみると、300人未満の組合は9,053円、3,000人以上の組合は1万5,359円となっており、その差は6,300円程度となっている。
鉄鋼大手では要求を下回り、船重・非鉄では満額以上の回答も
鉄鋼、造船重機、非鉄などの業界の労働組合でつくる基幹労連(津村正男委員長)は、産別全体として1万5,000円の賃金改善要求を掲げながら、部門間で業績にばらつきがあることを配慮し、部門・部会でのまとまりを前提としつつ一定の柔軟な設定を認め合う方針とした。
鉄鋼、船重、非鉄それぞれの部門の総合組合(大手組合)の回答をみると、鉄鋼大手は各社労組が1万5,000円を求めたのに対し、会社側は日本製鉄が賃金改善1万円、JFEスチールが同7,000円、神戸製鋼が同1万3,000円を回答した。業績の低調を受け、満額回答の組合はなかった。重工大手は、1万6,000円の賃金改善をそれぞれ要求し、三菱重工、川崎重工、IHI、住友重機械、キャタピラー日本(製造委員会)、カナデビアの各組合が満額を獲得。三井E&Sは経営側が要求を上回る1万7,000円(賃金等処遇改善も含む)を回答した。非鉄大手は、それぞれ1万5,000円の賃金改善を要求し、三菱マテリアルと住友金属鉱山が満額を獲得。それに対し、JX金属が同1万6,000円、DOWAが同1万7,000円、三井金属が同2万33円と、経営側が要求額以上を回答した。
18日の会見で津村委員長は結果について、「全体としては要求どおりか要求以上の回答が多い。要求どおりとならなかったところも含めて、労使で経営競争面での課題を共有、認識することができた。部門・部会でまとまりをもって成果にこだわって取り組んだ結果だと受け止めている」などと話した。
全電線は大手4単組が産別方針を上回る賃金改善を獲得
全電線(石橋進一委員長)の大手では、住友電工とSWCCが賃金改善1万8,000円、古河電工は同1万6,000円の満額回答でそれぞれ決着。フジクラは組合の1万9,000円の賃金改善要求に対し、1万8,000円の回答で収束した。石橋委員長は、「大手4単組は1万6,000円~1万8,000円の賃金改善という産別要求(1万5,000円以上の賃金改善)を上回る回答を得ることができた。一時金も4単組すべてで昨年実績を上まわる回答が示された」などと報告。「中堅・中小の単組に、この流れが着実に波及するよう取り組んでいきたい」と訴えた。


