3.75%(1万5,000円相当)の月例賃金改善を要求/NTT労組の春闘方針

2026年2月18日 調査部

NTT東西やドコモなど、NTTグループ企業の労組でつくるNTT労働組合(十川雅之委員長、約14万1,000人)は2月13日に都内で中央委員会を開き、3.75%(1万5,000円相当)の賃金改善を求める「2026春季生活闘争方針」を決めた。物価上昇に負けない賃上げで全組合員の生活向上をめざすため、2025年度の物価上昇予測値に1%を加えて実質賃金の引き上げに取り組む。要求水準は、過去最高だった昨年の妥結水準を上回る。

月例賃金・特別手当等の改善による年間収入の引き上げに取り組む

方針は、基本的考え方として、上部団体の連合や後述する情報労連の方針に加え、「これまでの春闘総括等を勘案した上で、実質賃金の持続的な上昇を伴う“賃上げノルム”を確立させるための社会的役割・責任を果たすとともに、NTT労組に結集するすべての働く仲間の『底上げ』『底支え』に向けて取り組む」ことを明記。要求の確立にあたっては、物価動向等の取り巻く環境を踏まえ、①物価上昇に負けない賃上げによるすべての組合員の生活向上②積極的な「人財への投資」を通じた「組合員のモチベーション向上」および「人財の確保・定着」による、NTTグループの持続的な成長・発展――等を総合的に勘案し、月例賃金・特別手当等の改善による年間収入の引き上げに取り組むとした。

25年の物価上昇予測(2.75%)に生活向上分(1%)を加える

具体的には、NTT労組中央本部は、主要会社に対して「制度による昇給(査定昇給)分を除き、グレード賃金および成果手当の3.75%(1万5,000円相当)改善」を要求。それを受けて、各企業本部は「対置するグループ会社等に対し、すべての雇用形態に具体的要求を確立する」こととした。

賃上げ要求の根拠について水野和人事務局長は、「物価上昇に負けない賃上げの実現に向けた『根拠のある要求』とし、月例賃金改善については、賃上げ分として、民間予測フォーキャスト調査(11月分)における2025年度の物価上昇予測『2.75%』に実質賃金プラス1%の引き上げにつなげるための生活向上分『1%』を加えた」と説明した。

「要求を実現し、NTT労組に結集するすべての組合員の生活向上を図る」(十川委員長)

NTT労組は、24春闘で月例賃金5%の引き上げを要求し、「3%以上(同1万円相当:グレード賃金700円、成果手当9,300円)の改善」で会社側と妥結。25春闘では、「制度による昇給(査定昇給)分を除き、グレード賃金および成果手当の3%(1万2,000円相当)改善」を要求し、過去最高水準となる「月例賃金一人平均1万2,000円改定(グレード賃金700円相当、成果手当1万1,300円相当)・改定率3.08%」の満額回答を引き出して決着した。

十川委員長は冒頭のあいさつで、「NTT労組は、さまざまな課題を残しつつも、春季生活闘争を通じ、連続して月例賃金改善を図ってきた。とりわけ、2025春闘では、賃上げ分として3%・1万2,000円の満額回答を果たした」などと振り返ったうえで、「『賃金も物価も上がらない社会』が少しずつ変わりはじめているが、いまだ物価上昇に賃上げが追い付かず、実質賃金は4年連続でマイナスとなり、『生活が良くなった』という実感は社会全体にまで広がっていない」と指摘。「今次闘争で『3.75%』要求を実現し、NTT労組に結集するすべての組合員の生活向上を図るとともに、NTTグループ事業、そして日本経済の成長・発展に繋げることが極めて重要だ」などと主張した。

なお、特別手当(一時金)は、昨年水準を基本に要求し、業績堅調な会社は上積みをめざす構え。そのほか、地域別法定最低賃金に上積額を加算した「情報労連最低賃金協定」締結の維持・拡大を進めるとともに、サプライチェーン全体で生み出した付加価値の適正配分に向けて、社会全体での公正な取引環境の実現にも取り組む。

相次ぐ月例賃金改善交渉での「グレード賃金」への配分増を望む声

質疑では、各企業本部から、月例賃金改善要求の獲得とともに、正社員等の改善交渉にあたっては、基本賃金である「グレード賃金」への配分増を強く望む声が相次いだ。

ドコモグループ本部は、「生活向上に資する月例賃金改善『3.75%』の実現に対する組合員の期待はかつてなく大きい」ことに加え、「職場からは、評価に左右されず安定的に支払われるグレード賃金への配分増を期待する声も多く寄せられている」などと発言。西日本本部も「将来にわたる生活の安定、働きがいの向上、優秀人財の確保・定着の根幹は、基本賃金であるグレード賃金への配分増にある」と述べたうえで、「成果に左右される改善ではなく、グレード賃金の配分増での持続的な生活向上を実現することが組合員の切実な思いだ」などと訴え、グレード賃金への配分増が重要との認識を強調した。

中堅層の賃金課題の解決につながるグレード賃金への配分増

一方、データグループ本部は、「月例賃金3.75%の改善要求は必ず勝ち取らなければならない。物価上昇が進むなかでの組合員の生活向上はもちろん、人財の獲得・確保の競争が激化する情報サービス産業において、今の賃金水準では全く足りていない」などと賃金水準の引き上げが喫緊の課題であることを強調。さらに、「採用時賃金の引き上げや経験者採用の強化は一定程度進んでいる状況にある一方で、新卒で入社し長年、事業の中心を担って支えてきた中堅層の賃金水準に関する声が大きく、課題認識が非常に強まっている」として、賃金カーブ全体の問題にも踏み込んだ。そして、「グレード賃金への配分増を重視することは、中堅層の賃金課題の解決に繋がる重要なポイント」との考えを示して、3.75%の月例賃金改善の獲得とグレード賃金への十分な配分を求めた。

このほか、持株グループ本部も、グレード賃金への配分増に対する職場からの強い要望があったことを報告した。

こうした声を受けて松本智志交渉政策部長は、グレード賃金を「唯一の基本賃金で安定的に支払われる賃金」だとして、「多くの組合員の期待に応えられるよう、すべての組合員の生活向上、さらには『底上げ』につながる配分増を強く求めていく」などと答弁した。

なお、中央委員会では、「すべての雇用形態の月例賃金改善要求の実現に向け、組織一丸となって闘い抜く」などとする中央委員会宣言を確認した。

月例賃金改善3%以上の方針を決定/情報労連中央委員会

上記の方針を決めたNTT労組などが加盟し、情報関連組織を中心に構成する情報労連(北野眞一委員長、19万2,000人)は1月30日、都内で中央委員会を開き、2026春季生活闘争方針を決めた。月例賃金改善は25春闘同様、「定期昇給相当分の確保を前提に、3%以上」をめざす。企業規模間の格差是正では、方針に1%を加えた「4%以上」の月例賃金改善を要求目安として提示。賃金データを十分に把握できない組合向けには、定期昇給相当分を含む1万9,000円以上の基準も示している。

「『賃上げに拘り抜く』ことを揺るぎない軸とする」(北野委員長)

方針は、① 全体的な底上げ ② 格差是正 ③ 底支え ④ 働き方の改善 ⑤ 春闘のすそ野を広げる⑥春闘を組織拡大につなげる――の6つを取り組みの重点としている。

このうち、「全体的な底上げ」に向けた取り組みでは、月例賃金改善については、「定期昇給相当分(賃金カーブ維持分)の確保を前提に、過年度物価上昇分および物価上昇の見通し等を総合的に勘案し、『3%以上』」を積極的に求める構え。また、一般的に初任給が大きく引き上げられる一方で、中高年層への配分抑制の傾向がみられることを踏まえ、「各加盟組合で賃金実態の把握を徹底し、賃上げ水準の追求と合わせ、すべての世代に行きわたる賃金原資の配分を意識する」としている。

北野委員長はあいさつで、26春闘方針について「『賃上げにこだわり抜く』ことを揺るぎない軸として提起した」と指摘。「労働組合には『賃上げの旗』を決して下さず、現場の声を社会に届け続け、公正な社会をつくるための運動を進めていく責任がある」などと訴えた。

なお、一時金は、「年間収入の向上を図る観点から、水準引き上げをめざす」としている。

賃金実態把握ができない組合には、定昇相当分を含め「1万9,000円以上」を

格差是正については、サプライチェーン全体での適正な付加価値配分と労務費の着実な価格転嫁に向けて、すべての加盟組合が「対置する企業にパートナーシップ構築宣言』を引き続き促すとともに、『取適法(中小受託取引適正化法)』、『労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針』の周知・浸透を図る」。また、「価格転嫁・取引適正化に向けた自社の取引状況の確認・点検に取り組む」としている。

企業規模間の格差是正では、全体的な底上げ「3%以上」の方針に1%以上を加えた「4%以上」の月例賃金改善を要求目安として示した。賃金実態の把握ができないなどの事情がある組合には、定期昇給相当分を含め「1万9,000円以上」を要求目安として提示し、月例賃金の改善を後押しする。

個別賃金方式で「最低到達目標水準」と「めざすべき賃金水準」の6銘柄を提示

なお、情報労連は、2025年度に実施した「総合労働条件調査」の「ポイント別賃金水準(モデル賃金)」や「情報労連賃金実態調査」の結果等を踏まえ、個別賃金方式による標準労働者の6つの個別銘柄(年齢ポイント)で「最低到達目標水準」と「めざすべき水準」を提示している。前者は、加盟組合のなかで賃金水準の低位にある組合が、最低でもこの水準を超えるとの考え方で設定したもの。後者は、既に中位にある組合が、より高い水準をめざすための指標になっている。

具体的には、最低到達目標水準(所定内賃金)は、18歳(勤続年数0年):19万3,000円、25歳(同7年):21万6,000円、30歳(同12年):24万6,000円、35歳(同17年):27万5,000円、40歳(同22年):29万6,000円、45歳(同27年):32万7,000円。めざすべき水準(所定内賃金)は、18歳:21万1,000円、25歳:25万2,000円、30歳:30万3,000円、35歳:34万6,000円、40歳:37万2,000円、45歳:39万6,000円をあげている。

有期契約等労働者の賃金は「経験5年相当で時給1,450円以上」をめざす

雇用形態間格差の是正では、有期契約等労働者の賃金について、雇用形態によらない「均等・均衡待遇」実現に向けた取り組みを継続するとともに、雇用形態間格差の実態を踏まえ、2025年度法定地域別最低賃金の引き上げ率6.3%を上回る7%を目安とする。また、連合が掲げる「働きの価値に見合った水準」への引き上げを見据え、賃上げ・昇給などにより、経験5年相当で時給1,450円以上をめざす。

底支えについては、最低賃金協定を未組織労働者も含めたすべての働く仲間のセーフティネットと位置づけ、すべての加盟組合が最低保障賃金の引き上げに向けて「情報労連最低賃金協定」もしくは「企業内最低賃金協定」の締結に取り組む考え。前者の締結に向けては、2026年10月以降に改定される法定最低賃金に上積みする額(2円~10円)を要求する。後者の締結をめざす組織は、当該企業の実態および連合が掲げる水準 (時給1,300円以上)を踏まえて要求水準を検討する。

「つながらない権利」の確立に向けたガイドラインを策定

一方、方針は、「すべての働く仲間の立場にたった働き方」の実現に向けて、労働時間の適正化やつながらない権利、人材育成と教育訓練の充実、60歳以降の雇用などの取り組みも列記している。

労働時間については、各加盟組合は自組織の実態を点検し、「年間所定労働時間2,000時間以下」を最低到達目標、「年間所定労働時間1,800時間以下」をめざすべき目標などとする「情報労連・時短目標」を踏まえた労働時間の適正化などに取り組む。

さらに、デジタル化の進展に伴う働き方の多様化等を踏まえ、① 心身の健康維持 ② 長時間労働の抑制 ③ 生活時間の確保――等の観点から、「つながらない権利(勤務時間外の連絡ルール)」の確立に向けた取り組みにも重点を置く。具体的には、「『つながらない権利』確立に向けたガイドライン」を策定・活用することで、職場の実態を踏まえた労使間協議を進める考え。

人材育成・教育訓練の充実や70歳まで雇用されて就労できる環境づくりも

人材育成と教育訓練については、「労働者の技術・技能の向上やキャリア形成に資することはもとより、企業の持続的な発展を支える重要な取り組み」だとして、環境整備に向けた労使協議を推進。60歳以降の雇用では、「高齢期の労働者がやりがいを持ち、健康で安心して安定的に働くことができる環境整備や役割・責任に応じた処遇構築をめざすとともに、希望者全員が70歳まで『雇用されて就労』できるように取り組む」ことなども明記している。

要求については、2月末までに全国単組が要求書を提出。大手加盟組合を中心に3月18日を情報労連集中回答日に設定する。