「開発・設計職基幹労働者」の賃金水準の引き上げ額を1万8,000円以上とする統一要求基準を掲げる/電機連合の中央委員会
2026年2月13日 調査部
電機連合(神保政史会長、56万5,000人)は1月27日、都内で中央委員会を開催し、2026年総合労働条件改善闘争方針を決定した。大手電機メーカーで構成する中闘組合の賃金の統一要求基準については、「開発・設計職基幹労働者」(30歳相当)の賃金を現行水準から1万8,000円以上引き上げることを掲げており、比較可能な1998年以降でみると、最も高い要求水準となっている。賃金以外では、労働者の健康を守る取り組みの項目に新たに、勤務間における休息時間で十分な休息・回復を図れるよう、業務時間外の連絡ルールの整備など運用面の検討を行うことを盛り込んでいる。
引き続き「産別統一闘争」を展開
電機連合では、大手で構成する中闘組合が、闘争行動を背景に、要求から交渉日程、妥結まで足並みを揃えて交渉に臨む「産別統一闘争」を展開している。現在の中闘組合は、パナソニックグループ労連、日立グループ連合、全富士通労連、東芝グループ連合、三菱電機労連、NECグループ連合、村田製作所グループ労連、シャープグループ労連、富士電機グループ連合、OKIグループ連合、安川グループユニオン、明電舎の12組織で、前年と同じ顔ぶれ。
「産別統一闘争」の対象とする労働条件項目は「統一要求基準」、闘争行動を背景としない労働条件項目は「統一目標基準」、各組合の自主的・主体的な取り組み項目や労使での継続協議が必要な項目(独自要求を含む)は「統一推進項目」としている。
生産性・労働力市場・生計費の要素から情勢を分析
方針でははじめに、2026年闘争を取り巻く情勢を説明。電機連合では、賃金の決定に際し、「生産性」「労働力市場」「生計費」の3つの要素を重視しているが、このうち「生産性」については、日本銀行の展望レポートにおける2025年度の実質GDPがプラス0.7%となっており、先行きは海外経済の減速などから成長ペースは伸び悩むものの、「その後、海外経済が緩やかな成長経路に復していくもとで、成長率を高めていくと見込まれる」としている。
「労働力市場」については、直近の完全失業者数は増加している一方、人材の不足感は継続していることなどに言及。「生計費」については、消費者物価指数(生鮮食品を除く)が2025年度に2%後半で推移し、2026年度前半には2%を下回る水準まで縮小すると予想されていることや、実質賃金が2025年1月から11カ月連続マイナスとなっていることなどを指摘している。
中闘組合の中間決算期時点の営業利益は前年度実績より6.4%増加
また、中闘組合企業のうち11社(非上場の株式会社東芝は含まない)の2025年度通期の業績見通しをみると、11社合計の中間決算期時点の売上高は36兆6,300億円と、前年度実績を1.1%下回るものの、11社合計の営業利益は3兆860億円で、前年度実績を6.4%上回り減収増益となっている。
一方、電機連合が組合員を対象に行った「2025年生活実態調査」では、月例賃金の増減に関する設問で、前年と比べ月例賃金(時間外手当を除く)が「増えた」と回答した割合は73.1%と、2024年調査(67.8%)から5ポイント超増加するも、家計収支感を尋ねた設問では、「貯金の取り崩しなどでやりくりした」(赤字世帯)が24.8%で、前年(24.2%)から微増していることも示した。
「賃金は上がるもの。人への投資が成果の源泉」との社会的ノルムの定着を(神保会長)
こうした国内経済の動向や加盟組合企業の業績動向、組合員の生活実態などをふまえ、2026年闘争におけるコンセプトでは「積極的な『人への投資』を持続し、継続的に実質賃金を向上させ、経済の好循環を確かなものとする」ことを提示。基本方針としては、「実質賃金を引き上げ、すべての人の生活向上を目指す」ことや、「電機産業全体の労働時間あたりの付加価値に見合った報酬額へと引き上げる」こと、「適正な価格転嫁・適正取引をより一層徹底し、生産性向上や企業の体質強化による付加価値の拡大に取り組む」ことなどを掲げた。
そのうえで、「組合員の大きな期待に応えるとともに、日本を牽引するリーディング産業としての役割を果たし、すべての労働者への社会的な波及と経済への好循環を確かなものとするため、積極的な賃金水準の引き上げに取り組む」としている。
神保会長は冒頭あいさつで、「2024年、2025年と2年連続で5%を上回る賃上げを達成できたが、近年の物価上昇に賃上げが追いつかず、実質賃金は再びマイナスに転じている」として、「持続的な賃金引き上げを未来につなげるためには『賃金は上がるもの。人への投資が成果の源泉』という社会的なノルムを定着させることが不可欠」だと訴えた。
また、1月1日に施行された「中小受託取引適正化法」(取適法)の周知徹底により「サプライチェーン全体で公正な取引関係を定着させることは重要」としたうえで、「取引慣行の改善や生産性向上に向けた投資を着実に積み重ねていく必要がある」として、労使での真摯な協議を通じて改善を進めていく重要性を強調した。
産業別最低賃金(18歳見合い)は21万3,000円以上の改善を目指す
具体的な要求基準をみると、賃金では産別統一闘争の統一要求基準として、「開発・設計職基幹労働者」(年齢要素としては30歳相当)の個別ポイントの賃金における水準改善額(引き上げ額)を1万8,000円以上と設定した。電機連合によると、中闘組合の賃金体系維持分の平均は7,000円~8,000円程度であることから、賃金体系維持分も含めると2万5,000円~2万6,000円以上の要求となる。なお、率に換算すると、1万8,000円は「5%前後」、7,000円~8,000円は「2%前後」に相当するとのこと。
水準改善額1万8,000円は、前年より1,000円の引き上げとなっており、水準改善のみの個別要求方式を取り入れた1998年以降でみると、最も高い要求水準となっている(なお、個別要求方式導入時の個別ポイントは35歳技能職の標準労働者だった)。
また、統一要求基準である産業別最低賃金(18歳見合い)については、前年より1万3,000円引き上げ、21万3,000円以上に改善することを掲げた。
25歳最低賃金は21万5,500円以上、40歳最低賃金は25万8,000円以上を目標に
産別統一闘争の対象とはならないが、統一的な達成を目指す統一目標基準の項目では、「製品組立職基幹労働者」の賃金水準改善、年齢別最低賃金、高卒初任給、大卒初任給、技能職群(35歳相当)ミニマム基準などを設定している。
「製品組立職基幹労働者」の賃金水準改善については、「開発・設計職基幹労働者賃金」の水準改善額に見合った額にすることを提示。年齢別最低賃金については、25歳最低賃金と40歳最低賃金の2つの年齢ポイントで要求基準を設定し、25歳最低賃金については21万5,500円以上の水準、40歳最低賃金については25万8,000円以上の水準に改善するとした。いずれの年齢ポイントも、現行水準に対して1万3,000円の引き上げを念頭に置いている。
高卒初任給については、現行水準に対して1万3,000円引き上げることを念頭に、21万3,000円以上の水準に改善することを掲げ、大卒初任給についても現行水準に対して1万3,000円引き上げることを念頭に、27万6,000円以上の水準に改善するとした。技能職群(35歳相当)ミニマム基準は前年より1万円引き上げ、24万円に設定している。
一時金は年間5カ月を中心に「産別ミニマム基準」で年間4カ月確保を掲げる
一時金については、統一要求基準として「平均で年間5カ月分を中心とし、『産別ミニマム基準』として年間4カ月分を確保する」としている。
なお、中央委員会の翌日に実施された金属労協の2026年闘争推進集会における、電機連合の今次闘争方針の説明では、賃金水準改善の原資に一時金の原資を活用することに関して、「生活の安定につながる月例賃金が増額されることは望ましい一方で、一時金の過度な変動が生活設計に影響することのないよう注意が必要」と付記していることを示している。
また、闘争推進集会における説明では、賃金についてのそのほかの取り組み項目として、賃金水準の是正・産業内格差改善に言及。実態調査等の活用・検証によって、「個別賃金水準の明らかな低下傾向が認められる場合や、中高年層における賃金の伸び悩みなど賃金カーブの歪、賃金格差の改善に向けた取り組みの必要性があると判断される場合は、今次闘争において改善に向けた要求を行う」などとしている。
勤務間の休息時間確保の項目では、業務時間外の連絡ルール等運用面の検討実施を追加
方針は賃金・一時金以外では、適正な総実労働時間の実現や働き方改革、労働協約関連項目についての取り組みなどを盛り込んだ。
適正な総実労働時間の実現に向けては、労働時間の実態や年次有給休暇の取得実績などの検証を行い、電機連合「労働時間対策指針」(2019年)に基づき「年間総実労働時間1,800時間程度の実現を目指す」として、統一目標基準で「労働者の健康を守る取り組み」と「総実労働時間の短縮に向けた取り組み」を設定した。ちなみに、2024年度の電機連合直加盟組合(一括加盟構成組合を含む)における年間総実労働時間の平均は1,953.4時間で、前年(1,968.6時間)より減少している。
「労働者の健康を守る取り組み」では、 ① 36協定特別条項限度時間の引き下げ ② 勤務間における休息時間の確保 ③ 産業医等による面接指導の徹底 ④ 労働時間管理の徹底――の4点に取り組む。特に ② では、これまでも項目に組み込んでいた勤務間インターバル制度や深夜労働時間規制の導入に加えて、「休息時間において、業務から適切に離れ十分な休息と回復を図ることができるよう、業務時間外の連絡ルールの整備など運用面の検討を行う」との項目を追加している。
「総実労働時間の短縮に向けた取り組み」では、 ① 所定労働時間の適正化 ② 年休取得の促進――の2点に取り組むこととしている。
新規項目として、交替・変則勤務者の所定労働時間の短縮などに取り組む
働き方改革の取り組みでは、各組合が自主的・主体的に取り組む項目や労使での継続協議を要する項目に該当する、統一推進項目として、 ① すべての労働者の立場にたった働き方改革の継続 ② 柔軟な働き方に関する制度の導入や環境整備 ③ 交替・変則勤務者の働き方に関する環境整備――の3点を設定した。
このうち ② では、オンライン会議の普及等で隙間時間なく会議が続く状況が現場で起こっていることを踏まえ、「思考の切り替えや深い思考へつなげる意図的な余白時間を設定するため、会議やミーティングを実施しない時間帯の設定や余白を意識したスケジュール設計など環境整備へつなげるための労使論議を行う」ことを追加している。
また、 ③ は新規項目として盛り込んだ。電機連合「2025年生活実態調査」結果によると、ワーク・ライフ・バランス状況を尋ねた設問において、ワーク・ライフ・バランスが「あまり取れていない」と「取れていない」を合わせた割合が、勤務形態別でみると交替・変則勤務者が3割超で最も高くなっていた。こういった状況などを踏まえ、「所定労働時間の短縮」「個別事情への配慮」「労使協議体制の確立」(「休日・休暇取得」「勤務シフト」「勤務の不規則性により生じた費用への支援」「健康確保措置」「持続的なキャリア形成へつながる取り組み」を協議する労使委員会の開催の要請など)に取り組むこととしている。
キャリア形成支援やジェンダー平等の実現などの取り組みも提示
労働協約関連項目の取り組みでは、主に ① リスキリングを含むキャリア形成支援の取り組み ② ジェンダー平等の実現 ③ 60歳以降の雇用安定・処遇改善に向けた取り組み ④ 障がい者の雇用促進と職場環境整備 ⑤ 仕事と育児・介護との両立支援と、障がい児等を家族に持つなど個別事情をふまえた取り組み ⑥ ヘルスリテラシー向上の取り組み ⑦ 定年後再雇用者、無期契約労働者、パートタイム・有期契約労働者の労働条件の改善と組織化の推進――の7点を提示している。
なお、金属労協の闘争推進集会における説明によると、統一目標基準として掲げる ① には新たに、AIリテラシー向上に向けた教育体系の整備や、AIツールの安全・有効な活用に向けた運用面の整備における労使協議の実施を盛り込んでいる。
なお、要求提出日については2月19日(木)までとし、回答指定日は連合・金属労協の方針をふまえて決定するとしている。


