「人員確保」を最重点課題とする2026春闘方針を決定/自治労の中央委員会

2026年2月6日 調査部

地方自治体のほか公共サービスに関連する組合で構成する自治労(石上千博委員長、68万9,000人)は1月29日、30日の両日、都内で中央委員会(オンライン併用)を開き、「2026春闘方針」を決定した。自治体の人員不足が深刻化していることをふまえ、方針は、2025年に引き続き春闘の最重点課題に「人員確保」を据えた。石上委員長はあいさつで、「昨年に引き続き、全ての単組が取り組むべき重要課題として、人員確保闘争を前面に掲げる」と宣言し、「昨年の春闘では要求書提出単組の7割以上が重視する要求事項に人員確保を掲げており、組合員からのニーズが高まっている人員確保、その現状をふまえれば改めて、春闘期から各職場の実態を把握点検し要求する。そして6月期の人員確保闘争に向けた取り組みにつなげていく」と強く訴えた。

人員確保、賃金改善等を春闘期から要求していく

方針は2026春闘に向けた課題の中で、自治体現場では、年々、さまざまな行政ニーズが増え続けることで対応する人員に不足が生じ、離職・休職が増加していることや、特に医療や介護といった資格職の人員不足が深刻化していることに触れ、「安定的な公共サービスを提供していくため、各職場の人員配置や業務量、時間外労働の状況を点検し、必要な人員を要求・確保していかなければならない」と指摘。加えて、現在働いている労働者が働き続けられる賃金の改善や職場の環境整備などを通じて、人員の定着や離職防止に取り組むことが「必要不可欠」だと強調している。

自治労ではこうした取り組みを、「年間の闘争のスタート」と位置づけて春闘期から要求・実践していくとし、4月の新規採用職員の配置後に再度点検し、不足人員は6月の人員確保闘争で要求していくといった取り組みのサイクルの構築・推進を掲げている。また、人員要求のみならず、賃金の改善や、労働者への聞き取りや職場討議で浮き彫りとなった労働条件や職場環境の改善に対する要求・交渉についても春闘期から進めていくことも重要視する。

「人員確保」を全単組の必須要求項目に

こうした考え方をふまえ、方針は2026春闘の要求の柱として、2025年春闘に引き続き、最重点課題に「人員確保」を掲げ、全単組の必須要求項目に設定した。また、重点課題として、「賃金の運用改善や働き続けられる職場の実現(1単組1要求)」を設定。働き続けられる職場づくりや人材が集まる魅力的な職場を目指し、「賃金の点検・運用改善」「長時間労働の是正・適切な労働時間管理」「働きやすい職場への改善(ハラスメント対策等)」が不可欠だとして、各単組が実態をふまえて1単組1要求のうえ交渉に取り組むとした。

このほか、「ジェンダー平等」や「労務費の適切な価格転嫁の推進」についても2026春闘の柱に据えた。

当局側の基本認識を確認したうえで要求する

「人員確保」の基本的な考え方をみると、「賃金改善と同等、あるいはそれ以上に組合員ニーズの高い課題」だとして、組織力の維持・向上に向けて「必要不可欠な闘争に位置づけて取り組む」と掲げている。そのうえで、「人員確保は当局の責任であることを大前提として、当局側の人員確保の基本認識を確認し、不十分であるならば追求していく」としている。

また、「当局側の認識と意向をふまえながら、春闘期においては、すでに次年度の人員がほぼ決定していることから、直近の職場状況や次年度に想定される業務量から職場ごとの人員数を確立し、適切な人員配置を求める」ことや、「春闘段階で人員不足が確実である場合は、年度途中での採用を行うなど早急な対応を求める」ことも明記している。

具体的な取り組みとしては、「部課ごとの年間の時間外労働時間数や休暇取得状況を把握し、欠員の現状、職場ごとの業務の実態と不足人員数について必ず職場討議を行う」ことや、「恒常的に欠員となる休業者(産休・育休者、病休者等)や新規事業、自然災害等突発的対応が必要な人員等を把握し、労働組合としての必要な人員数を確立する」ことなどに加え、「業務量に見合った適正な人員配置」や「AIなどのデジタル技術を活用した業務の効率化」など、事務処理方法の見直しを検討対象とすることなども盛り込んだ。

基本的な要求事項については、 ① 人員確保に対する基本認識の確認をすること ② 人員配置、採用計画(具体的な採用職種・採用人数)等を明らかにすること ③ 専門職をはじめ人員確保のための実行ある対策を具体化すること ④ 緊急時および災害時に必要な人員を確保すること ⑤ 恒常的休職者を正規職員で補充すること ⑥ 業務量に見合った条例定数および定数管理計画に見直すこと ⑦ 離職防止対策を講じること ⑧ 着実な定年引き上げへの対応をはかること ⑨ 不断の業務の見直しをすること――の9つの事項を設定した。

「当局の認識を正し要因分析と対策の具体化を追求することも春闘の重要課題」(石上委員長)

石上委員長はあいさつで、「昨年に引き続き、全ての単組が取り組むべき重要課題として、人員確保闘争を前面に掲げる」とした。「昨年の春闘では要求書提出単組の7割以上が重視する要求事項に人員確保を掲げた」ものの、「組合員からのニーズが高まっている人員確保の現状を踏まえれば、改めて春闘期から各職場の実態を把握点検し要求する」必要があるとして、「6月期の人員確保闘争に向けた取り組みにつなげていかなければならない」と強調した。

また、「現状、公務職場では応募者の減少や新規採用者の辞退など、人材確保難が続いており、早期離職の増加も拍車がかかっている」ことを指摘。「行政ニーズが増大する中での人員不足は、長時間労働の常態化を生み出し、昨今、散見される首長や管理職にあるハラスメント問題は旧態依然とした職場実態を表している」などと説明したうえで、「こうした職場実態の改善に労働組合が取り組むことは当然だが、より良い公共サービスを安定的に提供するための体制確立と職場環境を改善することは、当局の当然の責務」だと主張。「労働組合として、当局の認識を正し、要因分析と対策の具体化を追求することも春闘の重要な課題だ」と訴えた。

近隣自治体・同規模自治体との昇給・昇格ラインの比較による賃金の運用改善

賃金の運用改善に向けては、自治労はこれまでも賃金の地域間格差の是正に向け、到達目標(ポイント賃金)に遠く及ばない単組を対象に、国家公務員の給料を100とした場合の「ラスパイレス指数100を最低水準」としてラス逆数から算出した率を運用改善の具体的目標とする方針を掲げている。だが、現状をみると9割弱の自治体が100未満であることや、95未満の自治体が2割程度存在する状況となっている。この点について、方針は「目標との乖離が看過できない状況」だと指摘。

さらに当局側だけではなく、組合側も一部に自治体規模による格差を受け入れている問題があることも指摘し、「マインドチェンジが必要」だとした。そのため、人員確保の観点からも賃金水準を引き上げていくために「すべての単組でラス100以上を目指すことを改めて打ち出す」としている。

また、初任給や地域手当を中心に人材確保に向けた処遇改善や、中堅層が昇格の停滞や賃金の伸び悩みを感じることなく働き続けられる運用改善の重要性も強調している。

具体的な取り組みとして方針は、「初任給基準の引き上げ、到達級の改善と昇格の確保、昇格期間の短縮、上位昇給の活用などを通じ、賃金水準の改善をはかる」ことや「中堅層の賃金改善のため、38歳4級到達をめざして取り組む」ことのほか、「中途採用者の賃金改善のため、民間経験を100%換算とする経験年数換算表の改正および5年超の割り落としの撤廃、2級以上の初任給格付け、在級期間の短縮などを通じ、同学年の新卒採用者との給与格差を生じさせないよう求める」ことなどを列挙。組合員の賃金実態を把握して「近隣自治体・同規模自治体との昇給・昇格ラインを比較し、具体的な目標を設定する」ことにも取り組む。

国基準によらない地域手当や寒冷地手当の改善を求める

手当の改善では、特別交付税の減額措置について言及。これまで国の指定基準を超えて地域手当を支給する自治体に講じてきた、超過分に相当する特別交付税の減額措置が2025年度から廃止されることをうけ、方針は、「地域手当・寒冷地手当について、人員確保の観点から国基準によることのない維持・改善を求める」とした。

再任用者の賃金改善についても、「60歳超の職員と同様に、退職時の職務での任用・級の格付けを継続することを基本とする」ことや「一時金の支給月数を常勤職員と同月数となるよう引き上げを求める」ことを盛り込んだ。また、会計年度任用職員の賃金改善については、「期末・勤勉手当について常勤職員と同月数の支給となっていない単組は支給を求める」としている。

石上委員長は、「公共サービスを担う人材の確保、そして今いる職員が働きやすい、働き続けようと思える職場環境、処遇改善としていくための課題の一つは賃金改善」だと述べたうえで「秋の賃金確定において改善を求めることは当然だが、より高い賃金を勝ち取っていくためには、運用の改善や手当の改善、ラス100を目指すなど様々な課題がある」ことを説明。さらに「会計年度任用職員や中途採用者・再任用者の処遇改善も含め、賃金全体の課題を当局に認識させることも春闘の時期に非常に重要な課題だ」として、全単組の積極的で粘り強い取り組みを呼び掛けた。

災害対応時の労働条件や治療と仕事の両立支援も求める

働き続けられる職場の実現に向けては、方針は基本的な考え方として、自治体現場で人員不足による長時間労働やメンタル不調による休職者の増加、パワーハラスメント、カスタマーハラスメントへの対応など課題が山積していることから「職場環境整備の必要性を認識させるとともに、改善を求める」と強調。

具体的には、長時間労働の是正や不払い残業の撲滅などのほか、自治体職員の災害対応について、「被災時・応援時の労働条件について労使協議を行う」ことを求める。治療と仕事の両立支援については、労働施策総合推進法の改正により2026年4月1日から、事業主に対して治療と仕事の両立支援対策の努力義務が課されることをふまえ、「治療と仕事の両立支援、障害のある職員に対する配慮の視点から休暇制度・勤務時間制度の改善を求める」などとしている。

また、ハラスメント対策として、セクシュアルハラスメントといった各種ハラスメント対策の防止のための必要な措置が講じられているかの点検や、メンタルヘルス対策ではストレスチェックが義務化されている単組について、高ストレス職員への面接指導が行われているかを確認することなどを盛り込んだ。

指定管理料・委託料の上乗せを交渉し中小企業の賃上げの底上げにつなげる

労務費の適切な価格転嫁の推進については、公共サービスに携わる民間労働者の賃上げ原資の確保、物価高による行政運営に係る経費の増大への対応として、内閣官房と公正取引委員会が連名で策定した「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」をふまえた適切な対応を推し進めるとしている。具体的には、指定管理料や委託料の上乗せをあげ、その財源の確保を求めていくことを提示している。

石上委員長は、価格転嫁について「中小企業の賃上げにつながる重要な課題」だと指摘。「自治体は発注者としての責務があり、公共サービスを担う自治労として委託・発注などにおいて、労務費を始めとする適正かつ必要な予算が十分確保されているかチェックをし、不足している場合はしっかりと増額を求めていく。自治体単組と公共民間単組が連携して、取り組みを進め、中小地場の賃金水準の底上げへと繋げていかなければならない」と述べ、官民が一体となって取り組む必要性を訴えた。

公共民間単組は平均6%もしくは1万8,000円以上の要求を目安に

自治労は地方自治体で働く職員のほか、福祉・医療に関わる民間労働者なども組織している。このため、方針は民間単組の春闘期の要求も掲示。公共民間単組は、連合の春闘方針をふまえた賃上げ要求として、「平均賃上げ要求1万8,000円以上もしくは6%以上の要求を目安」とした。

自治労の統合組織であり、中小企業労働者を中心に、職種、企業、雇用形態を問わず、誰もが加盟できる組合である全国一般や地場中小民間単組については、全国一般2026春闘調査をもとに連合春闘方針における中小組合の方針をふまえ、「平均賃上げ要求2万500円以上(賃金カーブ維持分4,500円+生活維持・向上分1万3,000円以上+格差是正・歪み是正分3,000円)」を設定した。競馬、競艇、オートレース場で働く労働者が組織する公営競技単組については、「予算・決算を入手・分析し説明を求め、要求を確立する」とし、「基本賃金は2026連合春闘方針をふまえた要求基準とする」方針。交通事業従事者が組織する民間交通単組については、「2026連合および交通労協春闘方針をふまえ、5%以上(定期昇給分2%プラス賃上げ分3%以上)の引き上げを要求する」とした。

要求書の提出ゾーンの前段に単組オルグを実施

要求書の提出ゾーンについては2月16日~20日と設定。2026春闘の特徴として、要求書の提出ゾーンの前段に、県本部が単組オルグを実施するとしている。県本部は要求書の内容を確認するとともに、必要に応じて単組に助言をおこない、全単組で要求書の提出ができるようサポートしていく。