賃金改善分として1万7,000円以上を要求する2026年春季生活闘争方針を決定/JAMの中央委員会

2026年1月28日 調査部

機械・金属関連の中小労組を多く抱える産別労組のJAM(安河内賢弘会長、36万9,000人)は1月16日、都内で第47回中央委員会を開催し、2026年春季生活闘争方針を決定した。方針は、賃金要求の考え方について、「2023年以降にさらに拡大した格差の是正や低下した実質賃金の回復などを含め、単組の課題を積み上げて要求を組み立てる」とし、具体的には「賃金構造維持分を確保した上で、所定内賃金の引き上げを中心に1万7,000円以上の『人への投資』を要求する」とした。安河内会長は、物価上昇や不安定な世界情勢によって春闘を取り巻く環境に不透明感が増している昨今の状況を指摘しながら、「唯一明らかなのは力強い賃上げを続けていかなければ、この国はだめになってしまうということだ」などと話し、物価上昇を超える賃上げの継続の必要性を強調した。

生活向上を実感でき、格差拡大を許さない賃上げを定着させる

方針は、2026年春季生活闘争の役割について、「すべての単組が今次闘争の課題を共有した上で、JAM方針に基づいた要求を提出し、物価上昇に負けず生活向上を実感でき、格差拡大を許さない賃上げを定着させることである。この取り組みにより『底上げ』『企業規模間及び企業内の格差是正』『底支え』を進め分配構造の転換を図る」と強調。

さらに、「今次闘争は、物価上昇による実質賃金の低下と格差の拡大という直近の課題と、生産年齢人口の減少による人材不足、デフレ期に起こった賃金水準の低下と国際的に見劣りする賃金、格差拡大、分配構造のひずみなど中長期的な課題を解決しなければならない」と指摘したうえで、「加盟組織はこれらの課題に加え、労働組合・春季生活闘争の意義、労務費を含めた価格転嫁の必要性、企業のおかれている状況を職場討議において共有した上で、あるべき賃金水準にこだわり、物価上昇に負けず生活向上を実感でき『格差拡大に歯止めをかける賃上げ』に粘り強く取り組む」と記述した。

格差拡大に歯止めをかける取り組みも強調している。方針は特に規模間格差について、「2023年以降、物価上昇局面に入り、急速に拡大している」とし、「JAMの組合員賃金全数調査によると、規模1,000人以上と300人未満の所定内賃金の格差は、全体平均で4万6,000円台から6万4,000円台となり1.7万円程度拡大し、35歳の年齢階層の格差は7万円以上となった」と説明。さらに、「若年層などへの賃上げ原資を多く配分し、全体平均では生活向上分を獲得しているものの、中堅以降は実質賃金割れを起こし実質賃下げとなっているケースも少なくない」とし、「今後はすそ野を広げ、誰一人取り残すことのない取り組みが必要」と指摘した。

賃金の絶対額を重視した要求は今次闘争も同様

賃金要求の考え方については、JAMでは大企業と中小企業との間の賃金水準の格差是正を効果的に進めるために、個別賃金で目指すべき水準を要求する取り組みに重点を置いており、例年どおり、「すべての単組は、賃金の絶対額を重視し賃金水準にこだわった要求を追求する」と掲げた。

各単組は、自らの賃金水準のポジションを確認したうえで、方針が示す「JAM一人前ミニマム基準」「標準労働者の要求基準」(それぞれ内容を後述)に基づき、あるべき水準を設定し要求することになる。平均賃上げ要求に取り組まざるを得ない単組については、「30歳または35歳の賃金実態把握を進め、あるべき水準を議論し、配分交渉や賃金水準の参考値の検討など個別賃金要求に向け段階的な取り組みを進める」とした。

方針はまた、「格差拡大に歯止めをかける実質生活の維持・向上と、あるべき水準との乖離の是正をめざす。世界に見劣りする日本の賃金の回復や2023年以降さらに拡大した格差の是正や低下した実質賃金の回復などを含め単組の課題を積み上げて要求を組み立てる」とし、「具体的には、賃金構造維持分を確保した上で、所定内賃金の引き上げを中心に1万7,000円以上の『人への投資』を要求する」と打ち出した。

2025方針では、引き上げ幅は「1万5,000円以上」とし、今回の方針はこれに比べ2,000円高い。ただ、率に換算するとともに5%で、JAMでは今回の1万7,000円について、2025年賃金全数調査での所定内賃金平均額33万9,831円のほぼ5%に相当する額と説明している。

18歳から35歳までの一人前ミニマム基準の指標を昨年から概ね1万円増

具体的な賃上げの要求基準を個別賃金要求からみていくと、単組が各年齢のポイントでの賃金の是正の目安とする指標で、組合員の賃金全数調査の結果をもとに設定している「JAM一人前ミニマム基準」は、所定内賃金で18歳:19万6,000円、20歳:20万8,500円、25歳23万9,500円、30歳:27万円、35歳:29万5,000円、40歳:31万1,000円、45歳:32万3,000円、50歳:33万5,000円とした。

各単組は、部下を指導できる一人前の労働者がこの水準に達しているか確認し、達していなければその是正を求める。なお、昨年方針と比べると、18歳~30歳までが1万1,000円増、35歳が1万円増、40歳が8,000円増、45歳が4,000円増となっており、50歳は同額となっている。

30歳と35歳の標準労働者の要求基準(高卒直入者の所定内賃金)も設定している。「JAM一人前ミニマム基準」をクリアしている労働者は、この水準への到達をめざす。指標は全単組が到達すべき水準である「到達基準」と、到達基準に達している単組が目標とすべき水準である「目標基準」とがあり、「到達基準」については、30歳で31万6,000円(昨年比1万7,000円増)、35歳で35万5,000円(同1万6,000円増)と設定。「目標基準」は、30歳を33万2,000円(同1万9,000円増)、35歳を37万9,000円(同1万6,000円増)と設定した。

有期雇用労働者が無期転換した場合や中途採用者の採用賃金の最低規制としても位置づける年齢別最低賃金基準については、昨年方針と同様、「35歳まで、各単組の年齢ポイントの1人前労働者賃金水準の80%を原則とし、高卒初任給を勘案して決定する」とし、最低水準を18歳:19万6,000円(昨年比1万1,000円増)、25歳:20万8,000円(同1万円増)、30歳:21万6,000円(同9,000円増)、35歳:23万6,000円(同6,000円増)とした。

平均方式では4,500円+1万7,000円以上で計2万1,500円以上が基準

平均賃上げ要求に取り組まざるを得ない単組のための平均賃上げ要求基準は、「賃金構造維持分4,500円に1万7,000円以上を加え『人への投資』として2万1,500円以上とする」とした。

このほか、高齢者雇用の取り組みについては、引き続き地方JAMは賃金・労働条件調査、賃金全数調査を通じて取り組みの基礎となる60歳超えの賃金データの集約を行うとしている。

「力強い賃上げを続けていかなければ、この国はだめになる」(安河内会長)

あいさつした安河内会長は、「我々を取り巻く状況は変わっていない。生活はますます苦しくなっていると思っている」と指摘。物価上昇や不安定な世界情勢などに触れながら、「不透明感が増している中で唯一明らかなのは、力強い賃上げを続けていかなければ、この国はだめになってしまうということ。我々が目指すのは2%の物価上昇と3%の賃上げがずっと続く社会だ」と強調した。

また、安河内会長は、若い人材の採用難と今後の人手不足倒産に危機感を示しながら、その解決方法として「賃金を上げるしかない」と強調。これからのものづくり産業を担う高校生が地元の中小・中堅企業で働きたいと思えるような労働条件の確立の必要性を訴えた。

2025年度に引き続き価格転嫁の取り組みに注力する

方針は、春季生活闘争と並行して展開する政策・制度要求の取り組みでは、中小企業が賃上げできる環境を整備するための価格転嫁の取り組みを、2025方針と同様に柱に設定している。

方針は「JAMは2026年春季生活闘争において、すべての労使が適切な価格転嫁・適正な取引に向けて全力で取り組むとともに、拡大する格差、相対的に低位な賃金水準、サプライチェーンの分配構造のひずみを改善し、持続可能なものづくりに向けて、『格差拡大に歯止めをかける』ための活動を継続する」と明記。

具体的には、JAM本部は2026年1月1日から施行されている「中小受託取引適正化法(取適法)」についての周知徹底を図るとともに、政府の適正な取引実現に向けた取り組みの浸透と推進を図り、経営者に対する価格転嫁に向けた要請書(適切な価格転嫁と適正な取引慣行による賃上げの実現に向けた要請)を配布する。単組は、企業に対して要請書の手交と説明・協議を行うとし、地方JAMが単組の要請書提出・労使協議をサポートする。

あわせて、JAM本部は適切な価格転嫁に向けた2026年度春闘における「対応マニュアル」を中央委員会で配布し、地方JAMがその活用促進に向けた研修会や説明を実施。単組は、企業の取引環境を点検し、労使で共有するために活用する。なお、正式な「対応マニュアル」は5月に開催する中央委員会で配布すると説明した。

価格転嫁に対する政策の認知度は横ばいとの調査結果

価格転嫁については、一般活動報告の中で「2025年度『価値を認めあう社会へ』取り組み調査報告」を紹介した。

調査は、昨年の3月(1,287単組回答)と9月(1,265単組回答)に実施。それによると、エネルギー価格や原材料費、労務費の上昇に対処するため、政府が毎年3月と9月に設定している「価格交渉促進月間」の認知度について、「知っている」と回答した単組は2025年3月で61.6%、2025年9月では62.8%となり、認知度の横ばいが続いている。

内閣官房と公正取引委員会の連盟により発出された発注者・受注者双方の立場からの行動指針である「労務費転嫁指針」の認知度については、「知っている」と回答した単組が2025年9月では57.0%と半数程度で、「知らない」と回答した単組が43.0%だった。

規模の大小に関わらず、自社の取引方針を宣言し、ポータルサイトへ掲載することなどにより、サプライチェーン全体の付加価値向上、大企業と中小企業の共存共栄を目指す取り組みである「パートナーシップ構築宣言」については、「行っている」と回答した単組が2025年3月で28.9%、2025年9月では33.5%となり、わずかに上昇した。

受注者としての価格転嫁の交渉については、「行った」と回答した単組が2025年3月では53.9%、2025年9月では49.8%でそれぞれ半数程度となった。項目別の価格転嫁交渉と転嫁結果については、労務費・固定費で交渉を「行った」と回答した単組は、2025年3月で77.0%、2025年9月では80.1%となり上昇した。「行った」(80.1%)と回答した単組の交渉結果をみると、「割合未把握」が35.8%、「ほぼ全額」が29.5%、「半分程度」が15.5%、「3分の1未満」が14.6%などと続いている。

こうした結果について一般活動報告書は、「労務費を含む価格交渉は徐々に進んでいるが、転嫁について二極化していること、政府施策の浸透は中小企業を中心に不十分である」としている。

統一要求日は2月24日の火曜日

闘争の日程については、統一要求日を2月24日(火)とし、統一回答指定日は、金属労協の集中回答日が3月18日(水)に設定される見通しであることから、3月17日(火)、3月18日(水)に設定した。

闘争方針に関する討議では、より多くの単組が統一要求日である2月24日に要求書を提出できるよう、本部から単組への呼びかけを強化することや、3月いっぱいで春闘の「終わった感」が出ないよう、4月以降も中小単組が積極的に交渉に臨んでいることの発信強化などを要望する発言があった。