絶対額を重視した方針は継続しつつも要求目安として賃金改善分「1万2,000円以上」の水準を提示/自動車総連の中央委員会
2026年1月28日 調査部
自動車総連(金子晃浩会長、78万3,000人)は15日、大阪府大阪市で中央委員会を開催し、今春の賃上げ交渉に向けた取り組み方針(「2026年総合生活改善の取り組み」)を決定した。月例賃金における平均賃金の取り組みでは、絶対額を重視した方針は継続しつつも、とりわけ中小組合における要求目安として賃金改善分「1万2,000円以上」の水準を提示。また、企業内最低賃金については目標とする締結額を昨年より増額し、「18歳の最低賃金要求は『21万4,000円以上』」などと掲げている。
自社の賃金課題の解決や目指すべき賃金水準の実現に向けて取り組むことを強調
自動車総連がホームページで公表した内容によると、方針でははじめに、自動車産業における現状として、米国の関税政策の影響もあり製造系企業を中心に経営環境が深刻であることや、求職者数が依然として減少傾向にあることなどを課題として指摘。
そのうえで、取り組みの考え方と方向性として、「厳しい経営環境を乗り越えるためには、労使で健全な危機感を共有し、生産性向上の取り組みや、それを支える人への投資をいかに実現させていくべきか、真摯な議論を重ねていくことが求められる」としている。
また、産業の永続的な発展に向けた魅力向上や中小組合の底上げ・底支え、基幹産業としての社会的責任・役割といった観点も重視して、「各組合が自社の賃金課題の解決や自らが目指すべき賃金水準、さらには魅力ある労働諸条件の実現に向け、力強く取り組みを推進する」とも強調した。
「グッドサイクル運動」方針に基づき企業間取引の適正化を進める
取り組みの内容をみていくと、方針ではまず基盤整備に向けた取り組みとして、価格転嫁を含む企業間取引の適正化に言及。産業全体の発展に向け、労務費などの「適正な価格転嫁の実現と賃金の引き上げは確実に進めていく必要がある」として、具体的には、受発注双方が本音で困りごとを話し合える環境の整備や取引課題の解決に向け、「グッドサイクル運動」と名付けた方針に基づき、総連・労連・各組合がそれぞれの立場で取り組みを推進することを示した。
主な取り組みとしては、(A)企業向け依頼書を労使協議(あるいは準ずる場)にて提出(B)労使協議(あるいは準ずる場)にて、取り組み主旨を踏まえた意見交換を実施(C)労使協議に限らず、取り組み主旨を踏まえた意見交換を実施――の3つを例示。(A)~(C)の取り組む順序は問わないとしている。
取り組み主旨・企業向け依頼書の具体的な内容については、 ① 労務費指針に基づいた行動の徹底 ② 自工会・部工会の自主行動計画(含む徹底プラン)や中小企業庁の下請適正取引等推進のためのガイドラインの内容確認・履行 ③ パートナーシップ構築宣言の実施、および宣言に基づいた活動の履行――の3つを挙げた。
なお、方針では「グッドサイクル運動」を総合生活改善の取り組みにとどまらず、「通年で取り組みを進めていく」ことも付言している。
個別ポイント賃金の目標基準額はほぼすべてで昨年から改定し増額
次に、各項目の要求基準をみていくと、月例賃金では、各組合の自ら取り組むべき賃金水準の実現に向け、2019年から続けている「個別ポイント賃金の取り組み」と「平均賃金の取り組み」を併せ持った「絶対額を重視した取り組み」を引き続き進めるとの考え方を提示。
そのうえで、個別ポイント賃金の取り組みでは、「賃金センサスプレミア」「自動車産業プレミア」「自動車産業アドバンス」「自動車産業目標」「自動車産業スタンダード」「自動車産業ミニマム」のという6つの基準額を、それぞれ技能職若手労働者と技能職中堅労働者の2銘柄で設定しているが、今回、「賃金センサスプレミア」の技能職若手労働者以外のすべての基準額を改定し、昨年より増額させた。
具体額は、「賃金センサスプレミア」が若手:34万1,400円、中堅:42万5,000円、「自動車産業プレミア」が同順(以降同じ)で31万5,000円、36万円、「自動車産業アドバンス」が29万3,000円、33万5,000円、「自動車産業目標」が27万4,000円、30万9,000円、「自動車産業スタンダード」が25万6,000円、28万7,000円、「自動車産業ミニマム」が24万6,000円、27万円となっている。
自動車総連内の実質賃金の実態などを考慮して目指すべき賃金水準を構築
平均賃金の取り組みでは、「自社の魅力向上に向け、自ら目指すべき賃金水準や賃金課題の解決を目指す」としたうえで「すべての組合員の労働の価値および生活水準の低下を防ぐことを前提とした主体的な要求構築を行う」としている。
また、とりわけ中小組合については、「全年代での実質賃金の向上を見据えた地域別最低賃金の上昇や物価上昇を上回る賃金引き上げ、規模間格差の拡大防止に向けた底上げ・底支え」などの観点を総合的に勘案し、「賃金カーブ維持分を確保した上で賃金改善分1万2,000円以上の実現にこだわる」ことも明記している。なお、この目安の金額は昨年と同水準だが、「以上」の文言が加えられている。
総合的に勘案した観点の具体的な内容については、2025年度の消費者物価指数(4月~10月平均でプラス3.2%)や、同年の実質賃金(きまって支給する給与。4月~9月平均でマイナス1.6%)、自動車総連内の実質賃金の実態、地域別最低賃金の引き上げ状況、規模間格差拡大の防止に向けた中小底上げ分などが含まれている。
なお、中央委員会開催前の12月12日に行われた記者会見で自動車総連は、2025年の賃金引き上げに向けた取り組みの結果、自動車総連内における実質賃金増減率は、2024年と比べてプラス0.92%となるなど「大幅に改善した」と報告。一方、年齢別の実質賃金増減率でみると、最も低い59歳(マイナス1.46%)を含め、41歳以降で断続的にマイナスとなっていることを課題とした。
企業内最低賃金は18歳で21万4,000円以上を目指す
企業内最低賃金は、「自社の魅力向上・人材確保」や「物価上昇から生活を守る」観点を踏まえ、引き続き企業内最低賃金協定の締結と水準の引き上げ、対象者拡大に取り組むことを提示。地域別最低賃金が急激に引き上がり続けるなか、「各地域における特定最低賃金との優位性の有無を念頭に、特に企業内最低賃金協定の新規締結、および地域別最低賃金との優位性の確保にこだわる」としている。
取り組み基準では「協定未締結のすべての組合は、必ず新規締結に向けて要求を行う」「既に締結している組合は、それぞれの状況を踏まえ着実に取り組みの前進を図る」ことを示す。
すでに締結している組合については、「 ① 締結額を、18歳の最低賃金要求は『21万4,000円以上』、21万4,000円以上の要求が困難な場合は、『20万円以上』を目指して取り組む。 ② 締結対象の拡大に向けては、非正規雇用で働く仲間への対象拡大を目指して取り組む」としている。なお、締結額の基準は昨年より増額となっており、昨年の締結額の基準における現在の達成状況は、20万円の組合が11.6%、19万円の組合が37.6%となっている。
また、特定最低賃金の金額改正へ波及することも踏まえ、「各組合・各地域の実態に応じて ① ② の優先順位を決定する」ことや、特定最低賃金の審議が時給換算で行われることから、「月額のみに限らず時給換算も念頭に検討を行う」ことも明記した。
年間一時金は年間5カ月を基準に設定
年齢別最低保障賃金の協定化については、20歳から55歳まで5歳刻みで設定している取り組み基準の金額を全年代で増額。具体額は、20歳:20万5,000円、25歳:22万8,000円、30歳:24万6,000円、35歳:27万円、40歳:28万4,500円、45歳:29万円、50歳:29万7,000円、55歳:30万1,500円とした。
年間一時金は、昨年同様、「年間5カ月を基準」とし、「基準を下回る場合は最低でも昨年獲得実績以上」としている。
年間休日数は引き続き2027年までの5日増を目指す
方針では、昨年から重点的に実施している年間休日増の取り組みにも言及。取り組み基準は、「 ① 2024年時点で休日数121日の組合は2027年までに5日増の126日を目指す ② 2024年時点で休日数121日未満の組合はその時点の休日数から5日増を目指す。なお、5日増を達成した組合は、休日数の格差是正のために引き続き休日数126日を目指して取り組む」などと掲げた。
12月12日の記者会見で自動車総連が公表した、2025年の年間休日増に関する要求・回答状況では、要求を行った704組合のうち285組合で増加回答を獲得。内訳は「1日増」が104組合、「2日~4日増」が43組合、「5日増以上」が52組合となり、平均年間休日数は前年比プラス0.3日の116.1日となった。この結果について自動車総連は「30年大きな進展のなかった年間休日数の見直しに向けた契機となった」と評価する一方、サプライチェーンが複雑に関係している背景から「大幅な休日増に向けては個社独自で取り組むことに一定の限界がある」として、産業一体となった推進の必要性を示している。
全世代で物価上昇を上回る実質賃金引き上げを目指すことが極めて重要(金子会長)
自動車総連がホームページで公表した会長挨拶によると、金子会長ははじめに、絶対額を重視した取り組みについて「毎年、着実に継続した賃上げが図られてきており、全体として一定の定着を図ることができていると認識している」として、基本的なスタンスを踏襲する考えを提示している。
そのうえで、2026年の取り組みに向けた課題では、「直近3年間で改善分を獲得できなかった中労組がのべ約90組合にのぼる」ことや、「賃上げ自体は実現したとしても、実質賃金を上回る水準に届いていない組合や個人も存在している」ことから、すべての世代で十分な賃上げが達成されていないことや、大手と中小との規模間格差が解消されていないことを指摘。
「生活不安の払拭と日本経済の持続的成長を実現させるためには、過去3年間で積み上げてきた『賃金引き上げと物価上昇のサイクル』を持続可能な形で前進させ、全年代で物価上昇を上回る実質賃金の引き上げを目指すことが極めて重要」と訴えた。
また、中小組合における平均賃金引き上げの目安として示した「1万2,000円『以上』」についても、「自らの目指すべき賃金水準の実現に向け、各組織が主体的に取り組んでほしいという強い思いが込められている」と強調している。
方針は、要求提出日を2月末日まで、大手メーカーなどの主要組合の統一要求提出日を2月18日(水)までと設定した。主要組合の統一交渉日は、2月25日(水)、3月4日(水)、3月11日(水)の3回設ける。


