賃金体系維持分に加え1万3,500円(格差是正分含む)を要求額に/UAゼンセンの中央委員会

2026年1月28日 調査部

流通、サービス、繊維、化学、医薬など幅広い産業をカバーし、パートタイム労働者も多く組合員とするUAゼンセン(永島智子会長、196万1,000人)は1月22日、大阪府大阪市で中央委員会を開き、2026労働条件闘争方針を決定した。賃金引き上げの取り組みについて方針は、1%程度の実質賃金の上昇を定着させる必要性を強調。正社員組合員の賃上げ要求基準について、「賃金体系が維持されている場合は賃金体系維持分に加え4%、賃金体系が維持されていない場合は6%に、格差是正分として1%程度を加えて賃金を引き上げる」とし、要求額としては、賃金体系が維持されている場合は賃金体系維持分に加え1万3,500円(格差是正分含む)、賃金体系が維持されていない場合は1万8,000円(同)と設定した。短時間組合員の要求基準については、制度昇給分に加え、時間額を65円、5%基準で引き上げるとした。

物価上昇率を1%程度上回る賃金水準上昇の定着が必要

2026労働条件闘争方針は、今次闘争の基本姿勢として、 ① 日本経済の持続的成長へ向けて、1%程度の実質賃金の上昇を定着させる ② 最低賃金を持続的に引き上げ、働く者すべての賃金底上げをはかる ③ 労働時間短縮とキャリア形成支援に労使で取り組み生産性向上をはかる ④ 3月内に闘争を集中し、共闘を強化して交渉力を高めていく――の4点を掲げた。

UAゼンセンは2025方針でも「日本全体として物価上昇率を1%程度上回る賃金水準の上昇を定着させることが必要との認識を社会全体で共有する」と掲げ、2025年は4.75%の賃上げを実現した。ただ、依然として「中小組合の4割超は実質賃金維持が困難」(UAゼンセン)な状況にあることをふまえ、今回の方針も、物価上昇率を1%程度上回る賃上げの実現に向けて、「引き続き、社会を動かす力とともに責任があることを自覚し、賃上げの社会的流れをけん引する役割を果たしていく」と明記した。

労働条件闘争と法定最低賃金の引き上げの連携を強化

最低賃金の引き上げと賃金の底上げについては、「労働条件闘争と法定最低賃金の引き上げの連携を強化し、働く者すべての賃金底上げ、産業間・規模間・雇用形態間格差の是正につなげていく」とし、企業内最低賃金の計画的な引き上げを目指す。中小企業の底上げのほか、「公的価格設定の影響を受ける医療、介護、保育分野の労働者等の賃上げへ向けて政策制度要求との両輪で取り組む」ことも盛り込んだ。

また方針は、2025闘争の結果をみると平均の賃上げ率は妥結時期が早いほど高い水準にあることから、「すべての組合が3月中の解決を目ざし、闘争スケジュールの前倒しに取り組む」ことも強調した。

格差是正を効果的に進めるため、要求基準では額も明示

賃金闘争に関する方針の内容をみていくと、要求の考え方としては、 ① 実質賃金1%程度の上昇を定着させる ② 企業内最低賃金の引き上げを土台として組合員全体の賃金底上げをはかる ③ 短時間組合員の賃上げを加速する ④ 全組合員への物価上昇分以上の配分を基本とする――の4点を掲げた。

要求基準(平均賃金引き上げ)を正社員(フルタイム)組合員からみていくと、定期昇給制度が確立されているなど賃金体系が維持されている組合については、「賃金体系維持分に加え4%、賃金体系が維持されていない組合については6%に、格差是正分として1%程度を加えて賃金を引き上げる」とした。率の設定だけでは現在の賃金水準で格差がある大手と中小との間での額差が縮まらないため、額での要求基準も示した。要求額は「賃金体系が維持されている組合は体系維持分に加え1万3,500円、賃金体系が維持されていない組合は1万8,000円に達するよう積極的に取り組む」とした。要求額はそれぞれ2025方針から1,000円引き上げている。

現行の賃金水準が、UAゼンセンが定める「ミニマム水準」(高卒35歳・勤続17年:26万円、大卒30歳・勤続8年:26万円)をすでに超えている組合の場合は、賃金体系が維持されている組合については賃金体系維持分に加え4%基準とし、賃金体系が維持されていない組合は6%基準に賃金を引き上げることを基本に、部門ごとに実質賃金の向上と格差是正の必要性をふまえ要求基準を設定するとした。

さらに「到達水準」(高卒35歳・勤続17年:27万5,000円、大卒30歳・勤続8年:28万円)以上の組合の場合は、「部門の決定にもとづき、要求基準のうち、一定部分については総合的な労働条件の改善として要求できるものとする。具体的な対応については本部と部門で確認を行う」としている。

パート組合員では制度昇給がある場合は5%、ない場合は7%基準で引き上げ

短時間(パートタイム)組合員の要求基準については、2025年の地域別最低賃金(全国加重平均)が66円、6.3%引き上げられたことをふまえ、「制度昇給分に加え、時間額を65円、5%基準で引き上げる」とし、制度昇給分が明確でない場合は「制度昇給分を含めて時間額を85円、7%基準で引き上げる」とした。また、経験年数5年程度で時間額が1,450円程度となるよう昇給昇格制度の整備と人材育成を行うことも盛り込んでいる。

企業内最低賃金(18歳以上)の要求基準については、「法定の地域別最低賃金を1割以上上回ることを原則とし、時間額1,500円を2029年までに達成するよう部門、部会ごとに計画的に取り組む」としている。要求基準については「月額21万3,000円、時間額1,300円以上」とし、「地域別には地域別最低賃金、消費者物価の地域差を勘案して算出した金額以上とする。法定最低賃金遵守とともに社会的な引き上げを促進するために月額設定の場合も時間額表示を行い、必ず協定書を締結する」ことも書き加えた。必要な場合は、地域別最低賃金の引き上げにあわせて秋にも交渉を行う。

また、正社員組合員の初任賃金要求基準を、「高卒21万3,000円基準(都道府県別に定める企業内最低賃金要求基準以上)、大卒25万円基準」と設定し、この基準を上回る場合は「平均賃金引き上げと均衡ある引き上げを行う」とした。基準額は2025方針に比べ、高卒では1万8,000円、大卒では1万6,000円高い水準となっている。

総実労働時間1,900時間の中間目標を2032年度まで取り組む

2026年期末一時金闘争の要求基準は、2025方針と同様に「年間5カ月を基準に各部門で決定する」とし、短時間組合員については「少なくとも年間2カ月以上とし各部門で決定する。正社員組合員と同視すべき短時間組合員は、正社員組合員と同じ要求とする」とした。

労働時間の短縮・改善では、総実労働時間について、年間1,800時間の目標を据え置きながら1,900時間の中間目標について2032年度を期限として取り組むことにしている。年次有給休暇については完全取得を目指し、まずは中間目標の新規付与日数の80%以上を目指す。

キャリア形成支援に向けた労使協議も

方針は今次闘争で、「キャリア形成支援とデジタル技術革新の労使協議の推進」を求めていくことも提示した。「職業人生の長期化と生成AIをはじめとする技術革新が進むなか、組合員の雇用と労働条件の維持にはキャリア形成支援の強化が欠かせない」として、労働組合から企業に対し、キャリア形成支援方針と具体的施策について労使協議を行うことを働き掛ける。

また、「生成AIをはじめとするDXは今後の企業経営に必須となることから、労働組合から積極的に活用を促す」考え。その際、「生産性の向上と雇用労働条件の維持・向上を両立させるよう、導入・活用にあたって労使協議の徹底・充実を図る」としている。

闘争の進め方では、要求書の提出を原則2月20日(金)と設定した。

なお、中央委員会では、2026労働条件闘争方針のほかに、介護労働者の処遇改善の対策と促進なども盛り込んだ「介護産業政策」を確認した。

製造産業部門の要求は、賃金体系維持分が明確な場合は1万3,500円基準

UAゼンセン本部の労働条件闘争方針をふまえ、「製造産業部門」「流通部門」「総合サービス部門」の3部門も1月23日にそれぞれ部門の闘争方針を決定した。

各部門の方針の内容をみていくと、化学、繊維、化繊、医薬などの業界の組合が集う「製造産業部門」の要求基準では、賃金体系維持分が明確でベアなどの賃金引き上げ分だけを要求する組合の場合は「賃金体系維持分+4%+格差是正分1%程度。ただし要求額としては、賃金体系維持分+1万3,500円基準」とし、賃金体系維持分が明確でない組合の場合は「賃金体系維持相当分を含めて6%+格差是正分1%程度。ただし要求額としては、総額1万8,000円基準」を要求基準とした。

「ミニマム水準」には達しているが、「到達水準」には未達の組合については、賃金引き上げ分だけを要求する組合の場合は「賃金体系維持分+4%基準+格差是正に向けた積極的な上積み」とし、賃金体系維持分が明確でない組合の場合は「賃金体系維持相当分を含めて6%基準+格差是正に向けた積極的な上積み」とした。

所属組合の状況をみると、化学・スポーツの一部などでは業績が好調の企業がある一方、暖冬によるアパレルの不振や、官公需で価格転嫁が浸透していない状況を背景に、繊維関連や印刷関連の企業、地場・中小を中心に業況が厳しい企業が多い。製造産業部門によると、3年間賃上げが続いたものの、賃上げできている組合とできていない組合の固定化が表れており、中小のなかでもそうした状況がみられるという。

流通部門では額で1万8,500円以上、率で7%以上

スーパーマーケットや百貨店、ドラッグストアなどの組合が集う「流通部門」では、賃金体系維持分とベースアップを含む賃金引き上げ1人平均で「額:1万8,500円以上、参考率:7.0%以上」とした。現行賃金水準が「ミニマム水準」に達しているが、「到達水準」に達していない組合については、賃金体系維持分が明確な場合、ベースアップを含む賃金引き上げ1人平均で「額:1万4,000円以上、参考率:5.0%以上」とし、賃金体系維持分が明確でない組合の場合は「額:1万8,500円以上、参考率:7.0%以上」とした。

2025方針では、ベースアップを含む賃金引き上げ額について、部門内格差を是正するために「ミニマム水準」未達の組合と「到達水準」未達などの組合とでは異なる要求水準設定とし、「ミニマム水準」未達の組合を最も高く設定したが、今年は現行水準にかかわらず1万8,500円以上、7%以上と統一した。流通部門ではその理由について、「今回は部門内だけでなく、他産業との格差是正にも目を向けた」と説明している。

流通部門の短時間組合員の時給引き上げは本部方針よりも1%高い水準に

短時間組合員の要求基準は、「正社員と職務の内容が異なる・職務の内容が同じ」である組合員について、昇給制度がある場合は「制度に基づく昇給・昇格分に加え6%(70円)以上の賃金引上げ」、昇給制度がない場合は「8%(90円)以上の賃金引上げ」とし、「正社員と同視すべき短時間組合員」については「正社員の賃金水準と均等になるよう、賃金引上げを要求する」とした。6%と8%はそれぞれ、UAゼンセン本部方針よりも1%高い水準となっている。

賃金以外の労働条件では、年間休日増を中心とした総実労働時間の短縮にも力を入れるとしている。

要求基準に「以上」を付けて積極的な上積み要求を促す

食品製造、飲食サービス、レジャー、医療・介護などの組合が集う「総合サービス部門」では、正社員組合員の要求基準について、「実質賃金の維持・向上を目指し、格差是正分1%以上を加えた上で、 ① 金額要求:1万8,000円以上を要求する ② 率要求:金額要求を下回らないことを前提に、4,500円(賃金体系維持相当分)に加え、賃金引き上げ5.0%以上、または総合計7.0%以上を要求する」とした。

賃金水準が「ミニマム水準」に達するものの、「目標水準」などに達しない組合については、「実質賃金の維持・向上を目指し、賃金体系維持相当分に加え、賃金引き上げ4.0%以上、かつ総合計1万7,000円以上を要求する」とした。

同部門の方針は、「昨年を上回るよう、積極的に上積み要求に取り組む」としており、要求基準の額・率それぞれにあえて「以上」の文言を加えたのが特徴となっている。

短時間組合員の要求基準については、UAゼンセン本部の方針と同様とした。

総合サービス部門では全部会が年間総実労働時間の短縮に統一して取り組む

企業内最低賃金の取り組みでは、法定の地域別最低賃金を1割以上上回ることを原則とし、時間額1,500円以上を2029年までに達成するよう計画的に取り組むとしている。締結額は月額設定の場合も時間額表示を行い、必ず協定書を締結する。

部会別の取り組み項目では、2032年の年間総実労働時間1,800時間の実現に向けて、すべての部会で統一して年間総労働時間の短縮に取り組む。