定昇相当分含め6%以上の賃上げを/JEC連合闘争方針

2026年1月23日 調査部

化学・エネルギー関連産業の労組でつくるJEC連合(堀谷俊志会長、12万9,000人)は15日、都内で中央委員会を開き、2026春季生活闘争方針を決めた。闘争方針は、26春闘も引き続き賃上げに取り組む必要性を明記したうえで、前年同様、定期昇給相当分(JEC連合では約2%)の確保を大前提に、平均所定内賃金4%以上のベア要求を提示した。全体では6%以上の引き上げ要求になる。さらに格差是正への対応として、ミニマム水準に到達していない組合はその分をプラスした要求にするとともに、賃金水準がわからない組合は1%を上乗せして賃金全体で7%以上を求める。堀谷会長は、物価上昇分を上回るベアの必要性や産別組織の役割・社会的責任の重要性などを訴えたうえで、「中小労組も積極的な賃上げに取り組む環境を構築し、中小を含めた全体の底上げに取り組んでいく」姿勢を強調した。

中小組合の格差是正に向けた取り組みを推進

方針は、2026春季生活闘争の考え方を、「動き始めた賃金、経済、物価を安定した巡航軌道に確実に乗せる年とすべく、引き続き賃上げに全力で取り組み、すべての加盟組合がその実現に強くこだわる」などとしたうえで、「物価上昇分はもちろんのこと、生活向上分も踏まえ、『底上げ』に重点をおいた交渉を行う」考えを示した。企業規模間の格差が生じていることから「JEC連合全体として、加盟する中小組合の格差是正に向けた取り組みを行う」姿勢を強調している。

具体的な賃上げ要求については、「すべての加盟組合の賃金水準の底上げ、および社会的な責任の観点から、定期昇給相当分(約2%)の確保を大前提に、平均所定内賃金の4%以上のベースアップ要求とする」ことを掲げた。全体では「6%以上」の引き上げ要求になる。

ベア4%以上は「働く側の立場として堂々と主張すべき要求水準」(堀谷会長)

堀谷会長は冒頭のあいさつでベア要求を前年と同じ「4%以上」とした理由を、① 名目賃金は伸びたものの、物価上昇に追いついておらず実質賃金が低下している ② 賃上げを起点とする経済の好循環を実現するには物価上昇分を上回るベアが必要 ③ 労働市場における人材確保競争続くなか優位性を持てる賃金の確保が必要 ④ 産業別組織の役割・社会的責任として、26春闘相場の形成・牽引、経済の好循環に向けて対応する ⑤ 中小労組の引き上げのために大手および業績の良い労組が率先して世間相場を引き上げる――などと説明。とりわけ中小の引き上げの重要性について、「中小労組も積極的な賃上げに取り組む環境を構築し、中小を含めた全体の底上げに取り組んでいく」考えを述べたうえで、「働く側の立場として堂々と主張すべき要求水準だ」と強調した。

賃金実態がわからない組合の要求は格差是正分含め「7%以上」に

また、方針は「底上げ」の取り組みとして、JEC連合の要求水準に照らして「ミニマム水準(第1四分位)」に達していない組合について、「賃金カーブ維持相当分を確保した上で、その水準の到達に必要な額を加えた総額で賃金引き上げを求める」とした。これは賃金全体で「6%+格差是正分」の要求。なお、賃金実態がわからない組合は、「格差是正分として1%を上乗せして要求する」。こちらは、全体では「7%以上」の引き上げ要求になる。

「高卒35歳ポイント」水準を検証して格差縮小に取り組む

賃金要求の検討にあたっては、「目指すべき要求水準」として、① すべての組合がクリアしていくミニマム水準:33万円 ② ミニマム水準をクリアしている組合がめざす到達水準:36万8,000円 ③ 到達水準をクリアしている組合がめざす目標水準:40万7,000円 ――の3ステップに加え、 ④ ミニマム水準から大きく乖離している組合がめざす参考水準:29万8,000円を提示。加盟組合は自組織の「高卒35歳ポイント」水準を検証したうえで、「格差是正分を確認し、次のステップをめざして」取り組む。

また、「高卒35歳ポイント」以外の水準で検証する組合は、「自組織の年齢および学歴等の労務構成を参考に年齢ポイントを設定し、次のステップをめざす」ことで格差を縮めていく。

定昇制度のない組合は1万8,000円以上を要求

定期昇給制度を持たない加盟組合は、「5,000円を定期昇給相当分とし、賃上げ要求額は平均所定内賃金の4%相当にあたる1万3,000円の合計1万8,000円以上を要求し取り組む」考え。定昇制度を持たず、賃金実態も不明の組合は、「格差是正分として1%相当にあたる3,500円を上乗せして、合計2万1,500円以上を要求する」。

方針は、職務主義型の賃金制度を導入している加盟組合への対応にも言及。「賃金カーブがない等の制度の性質を理解」したうえで、「職務定義書、職務記述書、実際の職務内容に違いがないか」や、「生計費としての必要水準を意識した職務給設定になっているか、制度運用上の課題がないか」を点検するほか、「上位水準の職務に就くための教育を労使で行う」ことを求める。

初任給や企業内最賃も目指すべき水準を提示

一方、「底上げ」の取り組みでは、関連・グループ会社も含めた初任給の点検も行う。各社の初任給が、① 高校(18歳):21万5,000円 ② 大学(22歳):26万5,000円 ③ 修士(24歳):28万円――の水準を下回る場合は、その到達を目指し、要求として取り組む。なお、初任給の引き上げに伴い、既存の在籍者との賃金の逆転現象が生じる場合は、「要求とは『別枠原資』による是正」も求める。

「底支え」についても、「企業内のすべての労働者を対象とした企業内最低賃金協定の締結を行う」こととし、締結水準は生活を賄う観点と初職に就く際の観点を重視し「時給1,300円以上」を目指す。なお、時給1,300円以上が難しい場合は、「生活保障を軸とした考えに基づき『2025年連合都道府県別リビングウェイジ』の時間額を下回らないように努める」ことも明記している。

一時金は年間4カ月をミニマム基準に設定

一時金は、「生活に必要な年収確保の観点」から、ミニマム基準を年間4カ月に設定。業績連動型一時金制度が導入されている組合は、算定式の下限月数を4カ月以上へ引き上げることを目指す。また、「企業業績や付加価値が適正に分配されている制度設計になっているか点検・検証し必要に応じて改善を求める」としている。

全組合員の年間総実労働時間を2000時間未満に

一方、26春闘では、仕事と生活の調和の実現に向けて「年間所定内労働時間・年間総実労働時間1800時間」を目指す取り組みも継続。全加盟組合が自組織の労働時間の実態を把握したうえで、「各事業所の労使で十分な話し合いの出来る場を設置」する。現時点では「1800時間の水準と乖離する単組が多い」ことから、「まずは段階的に労働時間の短縮を目指し、全組合員が2026年度年間総実労働時間を2000時間未満となるように労使で取り組む」方針を掲げた。

年次有給休暇は初年度付与日数が15日以上となるよう取り組むとともに、「完全取得を目指し、1人当たりの取得日数が10日未満とならないよう」にする。あわせて、取得日数5日未満の従業員がいないことも確認する。

時間外労働割増率の引き上げでは、企業規模にかかわらず、全ての加盟組合で、① 1カ月45時間未満の時間外労働割増率35% ② 特別条項付き協定の締結を前提に45時間超の時間外労働割増率50% ③ 60時間超えの時間外労働割増率60% ④ 深夜および休日労働の割増率50%――の実現を「中長期目標」に据え、段階的な水準到達を図る構え。

このほか、長時間労働の是正に関しては、長時間の時間外労働が常態化しないよう求めるとともに、36協定の運用徹底も要求。11時間の勤務間インターバルの導入や、勤務時間外や休日に仕事上のメールや電話への対応を拒否できる「つながらない権利」を意識した就業時間外の連絡ルールの整備などにも取り組むとしている。

交替勤務者の働き方と処遇見直しも

26春闘では、石油や化学のプラントなどで働く交替勤務者の働き方と処遇の見直しにも力点を置く。交替勤務者が「その業務特性上、働き方改革の成果が享受しづらい状況にあり、常昼勤務者と比べて相対的に低い労働条件になっている」として、① リザーブ要員の確保やシフト見直しなどの体制維持や、深夜勤務による健康リスクへの配慮などの安全確保 ② 深夜・交替勤務手当、班長手当などの賃金・手当水準見直し ③ キャリア形成・評価制度の整備 ④ 柔軟な休暇取得制度の導入や年間休日増などワーク・ライフ・バランス向上への見直し――に取り組むことを列記している。

労務費転嫁を含めた適正価格に関する交渉を

「取引の適正化」に向けた取り組みも重視。大手を中心とする加盟組合が、関連子会社や業務委託等で関係する企業の労働組合などと連携し、サプライチェーン全体で生み出した付加価値の適正配分に向けて、① 労使において「パートナーシップ構築宣言」の意義の共有化および取り組みを推進 ② 「パートナーシップ構築宣言」の定期的な見直し ③ 社内担当者・取引先への浸透の確認 ④ 「価格交渉促進月間(例年9月・3月)」における価格協議の実施の確認 ⑤ 下請事業者からの価格交渉の申出があった場合の真摯な協議の実施⑥中小受託事業者における賃金の引上げが可能となる労務費を含む適切な価格転嫁・適正取引価格の十分な協議の場の設定――などの取り組みを要求に掲げて取り組む。

堀谷会長はあいさつのなかで、価格転嫁の取り組みについて「会社側としては賃上げする原資が必要。全加盟組合は、会社に対して原材料を買うとき、商品を売るときに労務費転嫁を含めた適正価格に関する交渉を相手側ときちんとしているかを必ず確認し、もしできていないならやるよう求めて欲しい」と要請。「これは政労使を上げて取り組んでいくことだし、日本の商慣行にこれを根付かせることが経済の好循環実現の鍵を握るといっても過言ではない」と訴えた。

このほか、方針はジェンダー平等・多様性の推進やテレワーク制度の点検、60歳以降の雇用などに向けた取り組みも提示している。

加盟組合間の情報共有のために「共闘会議」を開催

闘争の進め方については、連合の共闘連絡会議に参加・連携するとともに、JEC連合として加盟組合間の情報共有のための「共闘会議」を開催。1~2月には、地連地区単位で情報交換会議も実施する。

要求書は原則、2月27日までに提出。連合方針に基づき、3月16日~19日を「先行組合回答ゾーン」とし、3月17日~19日を「回答ゾーンの山場」とする。そのうえで、交渉が難航する場合でも、4月内での決着を目指す。