ナースセンターの看護師の求人倍率が2.51倍で10年ぶりの高水準/日本看護協会集計

2025年12月12日 調査部

2024年度の「都道府県ナースセンター」における求人倍率は、前年度比0.29ポイント増の2.51倍で2015年度以来の高水準――。日本看護協会(秋山智弥会長)が11月21日に公表した2024年度の「ナースセンター登録データに基づく看護職の求職・求人・就職に関する分析」結果から、こんな状況が明らかになった。施設種類別では、訪問看護ステーションや中小規模の病院で求人倍率が高い。また、看護職として就業中の求職者が考える退職したい理由で最も多いのは「看護職の他の職場への興味」で、ほかには「子育て」、「転居」、「自分の健康(主に身体的理由)」、「結婚」「勤務時間が長い・超過勤務が多い」などがあがった。日本看護協会によると、退職したい理由は複数の影響が考えられるという。

日本看護協会は毎年、都道府県ナースセンターの登録データに基づき、求人倍率や求人、求職者の状況、応募・就職の状況などの集計・分析を行っている。

求職者は前年度比13.17%減の6万8,724人

それによると、2024年度の「都道府県ナースセンター」における求職者数(仕事を探す看護師数)は、6万8,724人。それに対し、求人数(医療機関からの募集数)は、17万2,522人で、求人倍率は前年度の2.22倍から0.29ポイント増えて2.51倍となった。求人倍率は2021年度(1.33倍)以降上昇を続けており、今回は2015年度(2.68倍)以来の高水準。求人数は前年度の17万5,964人から3,442人(1.96%)減少し、求職者数も2023年度の7万9,151人から1万427人(13.17%)減っている。

求職者・求人者の動きをみると、前者は2009年度以降、6~7万人台で推移し、2021年度に13万人を超えたが、2024年度は6万人台まで減少した。後者は2016年度から2020年度までは15万人台、2021年度以降は17万人台で推移している。

訪問介護ステーションの求人倍率4.54倍に

施設種類別では、「訪問看護ステーション」の4.54倍が最も高く、次いで「病院(20~199床)」(3.00倍)、「病院(200~499床)」(2.49倍)、「病院(500床以上)」(1.93倍)、「ケアハウス・グループホーム・有料老人ホーム」(1.78倍)、「その他社会福祉施設」(1.52倍)の順に高かった。訪問看護ステーションや中小規模の病院で、看護師不足の深刻度合いがうかがえる。

逆に、「個人(自宅などで看護職を必要としている方)」(0.01倍)や「助産所」(0.03倍)、「都道府県・保健所」(0.08倍)、「小学校・中学校・高等学校(養護教諭)」(0.09倍)などは求人倍率が低く、これらの施設では看護師が充足しているといえそうだ。

なお、雇用形態別では「常勤」(3.00倍)、「非常勤」(2.21倍)、「臨時雇用」(0.85倍)で、前年度に比べ、すべての雇用形態で求人倍率が上昇していた。

全年齢層で2021年をピークに求職者数が減少

次に、求職者数を年齢別にみると、すべての年齢階層で2021年度をピークに求職者が減少している。そこで、年齢階層別に2021年度と2024年度の求職者数を比べてみると、25歳~54歳までの層は8,000~1万人台の大幅減だが、55~59歳は3,000人台のマイナス、60歳以上の求職者は約2,000人の減少にとどまっている。50歳代後半以降の有資格者の求職意欲の強さが垣間見える。

退職したい理由は複数要因の影響

求職者の求職時の就業状況は、求職者全体の51.0%が「未就業または看護職以外で就業中」で、「就業中(看護職)」は45.3%。「未就業または看護職以外で就業中」の割合を年齢別にみると、「60歳以上」が57.7%で最も高く、次いで「35~39歳」(52.6%)、「30~34歳」(51.5%)、「40~44歳」(50.2%)などだった。

現在看護職として働きながら求職している者に、「今の職場を退職したいと考えている理由」(複数回答)を聞いたところ、「看護職の他の職場への興味」が14.3%で最も多く、次いで「子育て」(10.4%)、「転居」(8.1%)、「自分の健康(主に身体的理由)」(7.3%)、「結婚」「勤務時間が長い・超過勤務が多い」(ともに7.2%)の順。日本看護協会によると、「就業中の看護職が回答した退職したい理由の個数は平均1.9個であり、複数の要因の影響が考えられる」という。年齢階級では、「看護職の他の職場への興味」をあげた割合は、「25~29歳」(21.2%)や「30~34歳」(20.0%)、「40~44歳」(18.3%)で高い。

転職時に重視する条件は勤務時間がトップ

求職者が求職時に「就職の際に重視する条件」(上位3つまでの複数回答)は、「勤務時間」22.6%が最も高く、次いで「給与」(18.1%)、「通勤時間」「看護内容」(ともに16.5%)、「休暇」(10.6%)など。他方、実際に就職した者が「就職の際に重視していた条件」もトップは「勤務時間」(19.9%)で同じだが、2番目に高いのは「通勤時間」(14.9%)で、以下、「給与」(14.7%)、「看護内容」(14.3%)、「休暇」(8.1%)となっている。

年齢別では、「勤務時間」をあげた求職者の割合は「35~39歳」以上で2割超。実際の就職者では「35~39歳」「40~44歳」「50~54歳」で2割を超えている。

応募就職率は49.2%

このほか、調査では以下のような「応募・就職の状況」も明らかとなっている。まず、求職者数(6万8,724人)に対する応募者数(1万8,514人)の割合は26.9%(求職応募率)で、就職者数(9,100人)の割合は13.2%(求職就職率)。一方、求人施設側からみると、17万2,522人の求人に対し10.7%の応募があり(求人応募率)、5.3%が採用(求人採用率)された。この結果、応募者数(1万8,514人)に対する就職者数(9,100人)の割合は49.2%(応募就職率)だった。

応募形態別では、求職者が都道府県ナースセンター就業相談員から求人施設の紹介を受けたうえで応募する「紹介応募」による応募者数は1万3,546人で、このうち就職者数は7,912人だった。一方、求職者が無料職業紹介システム(eナースセンター)を活用して直接、求人施設に応募を行う「システム応募」による応募者数は4,968人で、うち就職者数は1,188人。紹介応募による応募就職率は58.4%で、システム応募による応募就職率(23.9%)のおよそ2.4倍となっている。

求職就職率は臨時雇用が56.4%

求職就職率(求職者数に対する就職者数の割合)を年齢別にみると、「60歳以上」(18.2%)、「50~54歳」(13.9%)、「55~59歳」(13.4%)、「40~44歳」「45~49歳」(ともに12.1%)などの順。雇用形態別では、「臨時雇用」が56.4%(求職者数7,665人、就職者数4,326人)、「非常勤」が10.4%(同2万1,855人、2,275人)などだった。求人採用率 は「臨時雇用」が66.5%(求人数6,510人、採用者数4,326人)、「非常勤」が4.7%(同4万8,373人、2,275人)などとなっている。

施設種類別に求職就職率をみると、「救護(イベント等)」が39.3%(求職者数7,997人、就職者数3,140人)、「病院(20~199床)」が7.4%(同1万2,177人、905人)、「訪問看護ステーション」が6.5%(同4,586人、299人)、「その他社会福祉施設」が6.4%(同3,168人、202人)などの順。求人採用率は「救護(イベント等)」が82.3%(求人数3,813人、採用者数3,140人)、「健診センター・労働衛生機関」が25.0%(同2,899人、726人)、「個人(自宅などで看護職を必要としている方)」が23.5%(同17人、4人)、「小学校・中学校・高等学校(養護教諭)」21.1%(同355人、75人)の順に高かった。

年齢が上がるにつれて「臨時雇用」の割合が高くなる傾向に

就職者の雇用形態は「常勤」(27.5%)、「非常勤」(25.0%)、「臨時雇用」(47.5%)。2023年度と比べると、「常勤」(0.4ポイント減)と「非常勤」(2.9ポイント減)は減ったが、「臨時雇用」は3.4ポイント増えた。年齢階層が上がるにつれて「常勤」の割合が低くなり、「臨時雇用」の割合が高くなる傾向がみられる。