芳野会長が再選、3期目へ、事務局長に電機連合の神保氏/連合の第19回定期大会

2025年10月15日 調査部

労働組合の全国中央組織(ナショナルセンター)である連合(芳野友子会長、681万3,000人)は7、8の両日、都内で第19回定期大会を開催した。これまで2期、会長を務めてきたJAM出身で連合初の女性会長である芳野氏の続投を正式に決めた。事務局長には、電機連合会長の神保政史氏が新たに就任した。向こう2年間の新運動方針では、組織拡大・強化を最重点の取り組みに位置づけた。春季生活闘争については「経済・賃金・物価が安定的に上昇する新たなステージをしっかりと社会に定着させるべく、物価を上回る賃上げの流れを中長期的に継続することに加え、格差是正の大きなうねりを創り出していく」としている。

連合運動の価値を広く発信する

「2026~2027年度運動方針」のスローガンは「安心社会へ 果敢にアクション!~広げよう『理解・共感・参加』の輪」。方針は、「19期においては、これまで3期にわたり取り組んできた『連合運動の持続可能性と発展性を支え得る方策』の具体化を基盤に、政策・運動の両面から、取り組みを前進・加速させ、さらなる発展につなげる2年としていく」とし、あわせて、「労働組合の存在意義や連合運動の価値を広く発信していく」としている。

「私たちがステージを変えるとの強い決意のもと、組織拡大やジェンダー平等・多様性推進、政策制度の実現をはじめとする連合運動の根幹となる様々な取り組みを確かなものにしていくことが必要」だとし、「この間の取り組みを土台に、果敢なアクションで、安心社会の実現に向けて、前進させていく」と表明。

また、「すべての働く者をまもり、つなぐ」として、組織拡大・強化を最重点の取り組みに位置づけるとし、政策・制度の取り組みでは、「少子高齢化・人口減少、所得格差の拡大などわが国の構造的な課題解決に向けた取り組みを進める」としている。

「積極的な『人への投資』」も盛り込み、「すべての働く仲間の賃金が継続的に上昇し経済・賃金・物価が安定的に上昇する新たなステージをしっかりと社会に定着させるべく、物価を上回る賃上げの流れを中長期的に継続することに加え、格差是正の大きなうねりを創り出していく」と記述した。

芳野会長が力を入れるジェンダー平等に向けた政策では、「ジェンダー主流化」の推進とともに、「固定的性別役割分担意識の払拭、働く現場のみならず、家族間や社会における慣習や慣行の見直しに向けて取り組む」などとした。

組織拡大・強化の取り組みが最重点

具体的な活動内容をみていくと、「重点分野」を、① すべての働く仲間をまもり、つなぐために、組織拡大・強化を最重点取り組みと位置づけ、集団的労使関係の追求と、社会に広がりのある運動の推進 ② 安心社会とディーセント・ワークをまもり、創り出す運動の推進 ③ ジェンダー平等をはじめとして、一人ひとりが尊重された「真の多様性」が根付く職場・社会の実現――の3項目に設定。

1つめの重点分野である組織拡大・強化では、「連合本部・構成組織・地方連合会は、組織拡大・強化に資源を集中させ、自ら掲げた組織拡大目標の必達にこだわる」とし、「構成組織はパート・契約・再雇用労働者や子会社・関連会社の組織化に、地方連合会は中小・地場の未組織企業の組織化に取り組む」としている。また、「連合本部は各組織が組織拡大に取り組めるよう体制強化・基盤強化を進めるとともに、『組織拡大プラン2030』の実現に向けて総力を挙げて組織拡大運動を展開する」などとした。

「組織拡大プラン2030」とは、2020年10月~2030年9月を期間とする組織化計画で、2030年に連合を800万人組織にすることを中期目標に掲げ、その延長線として1,000万人組織を目指すもの。2025年9月までを「フェーズⅠ」、2025年10月~2030年9月を「フェーズⅡ」と設定。フェーズⅠでの2024年9月までの4年間でみた組織拡大実績は、合計52万7,473人で、2025年9月までの拡大目標である97万912人の達成は難しい状況となっている。

フェーズⅡにおける取り組み内容は、11月の中央委員会で最終決定するが、①「拡大実績の上積み」~組織拡大に徹底的にこだわる ②「組合員の減少に歯止めをかける」~過半数の維持・拡大にこだわる ③「人財を含む体制の強化」~みんなが関与・経験することにこだわる――を三本柱に据える。「組織拡大目標」の設定と進捗状況の把握、労働相談をきっかけにした組織化や、過半数労働組合の維持・拡大の取り組み、「連合オルガナイザー」と「組織拡大・強化担当者」配置の取り組みなどを具体的な活動として盛り込んでいる。

労働基準法制については堅持の姿勢

2つめの重点分野であるディーセント・ワークを守る取り組みでは、労働政策について「働く者の最低基準である労働基準法制を堅持したうえで、集団的労使関係の強化や長時間労働の是正に向け、労働者保護の観点に立った法改正と実効性確保を求める」とし、「また、労働者概念を拡充し、より多くの働く者が労働関係諸法の保護を受けることができるようにする」と掲げた。

賃金引き上げなどについては、「『人への投資』と物価を上回る持続的な賃上げなど総合生活改善闘争に取り組む」とし、中小企業の経営基盤の強化と地域社会の活性化をはかるため、「価格転嫁が進んでいない中小企業等の実態を踏まえ、働き方も含めた『サプライチェーン全体で生み出した付加価値の適正分配』の実現に向けて適切な価格転嫁・適正取引や『パートナーシップ構築宣言』の拡大・実効性強化などに取り組む」としている。

3つめの重点分野であるジェンダー関連では、「多様な家族のあり方やライフスタイルを認め合う社会と、それに相応しい制度の構築に向けて、選択的夫婦別氏制度の導入や同性パートナーの権利の確保など、民法をはじめとする法整備を推進する」と書き込んだ。

なお、政治活動は「推進分野」の位置づけとしている。「働く者・生活者を優先する政治・政策の実現を求める」「与野党が互いに政策で切磋琢磨する政治体制の確立に向け、政権交代可能な二大政党的体制をめざす」といった「連合の政治方針」の「連合の求める政治」を基本にしたうえで、「『連合出身議員政治懇談会』を軸としたうえで、連合が掲げる目的と政策を共有できることを前提に、引き続き幅広い政治家との連携も模索しながら、真に働く者・生活者の立場に立つ政治勢力の結集・拡大をめざす」などとしている。

労働者に代わって経営者と対峙し代弁してくれているのかが試されている

あいさつした芳野会長は、組織拡大について、連合の組合員数が結成時の約800万人から、30年以上が経過して約100万人減少したことを紹介したうえで、「労働者が組合に加入する理由は明快で、組合が自分を守ってくれる組合が環境を改善してくれると期待するからだ。組合が自分に代わって経営者と対峙し、言いたいことを代弁してくれる、そんな姿を頼もしく感じるからだ。その期待に応えられているのか、いないのか。組織率や組織人員数の低下という状況に、私たちは労働者から試されているのだと思う」と指摘。

「労働組合に職場のことを相談しようとしても相手にしてくれるのだろうか、上司ともう一度話してみてと言われてしまうのではないか、組合も会社と通じていて、相談したことが筒抜けになっているのではないか、そもそもそんなことを相談してもいいのだろうか、などという不安や猜疑心が先に立ち、話しにくい組織、話しにくい組合役員になってはいないか」と呼びかけた。

そのうえで芳野会長は、「自戒を込めて言うと、その一因は職場での活動量が落ち、現場の労働者が組合の姿を目にする機会が減ってしまっているからではないかと推測する」とし、「組織拡大を進めていくためのアプローチはいくつかあると思うが、職場の仲間から信頼され、安心して声をかけてもらえるような組織を追求していくことも重要なアプローチの1つだ」と強調した。

薬粧連合が友好参加組織として加盟

大会では、9月2日に連合への友好参加組織としての加盟を申請した「医薬化粧品産業労働組合連合会」(薬粧連合、松尾仁雄会長)の加盟を承認した。連合の資料によると、薬粧連合は2018年10月に、「医薬品化粧品関連産業を健全に発展させていくこと」を目的に、12組織、約2万7,000人で結成。第一三共グループ労連、中外製薬労働組合、アステラス労働組合などが加盟している。結成時の12組織のうち9組織はもともと、連合加盟産別であるUAゼンセンに加盟していた。

薬粧連合は、この先、2年間を正式加盟に向けた準備期間とし、その間に組織と活動を見直し、「持続的に正式加盟が可能な財政状況へ立て直しを進める」構え。今後、連合運動に参画し、「社会保障の一翼を担う産業として、その責任をしっかりと果たし、他産別との連携を通じて産業政策を着実に前進させることで、安心して暮らせる社会の実現に貢献していく」などとするリリースを発出している。

会長の3期目突入はこれで3人連続

役員改選では、会長・会長代行・事務局長を指す「上3役」について、芳野会長(JAM)と石上千博・会長代行(自治労)が留任。松浦昭彦・会長代行(UAゼンセン)が退任して、同じくUAゼンセンから新たに会長の永島智子氏が会長代行に就任した。事務局長は、2期4年務めた清水秀行氏(日教組)が退任し、電機連合会長の神保政史氏が就任した。なお、会長代行については、前期同様、今期も2人とも非常勤となる。

役員の選出については、定数内の立候補者数だったため、一人ひとりの投票は行われず、役員一括で代議員の挙手による方法で承認した。

芳野氏にとってはこれで3期目の会長職となる。連合では、前々会長の古賀伸明氏(電機連合出身)、前会長の神津里季生氏(基幹労連出身)も会長職を3期務めており、これにより3人連続での3期目就任となる。

選出が決まった後のあいさつで芳野会長は、3期目に向けて「労働組合というのは変革や改革という言葉が非常に好きだが、やはり前例踏襲で同じことをやっていては、世界から、また、社会から取り残されていくと思う。新しい運動を、スピード感を持って取り組んでいきたい」と抱負を語った。

石破首相も来賓出席し、あいさつ

大会には、石破茂首相、福岡資麿厚労相、立憲民主党の野田佳彦代表、国民民主党の玉木雄一郎代表らが来賓として招かれ、それぞれあいさつした。

大会後の記者会見で芳野会長は、自民党も含めた各政党との関係について「やはり政策実現に向けて、対話重視で取り組みを強化していきたい」とし、組織内議員のいる立憲民主党と国民民主党に対しては「よくコミュニケーションをとって、連携をとってほしい」と話した。国民民主党が連立政権に加わるかどうかが取り沙汰されていることについて聞かれると、「容認できないというスタンスは変わらない」と話した。