仲間に寄り添い組合を身近に感じる組織拡大の取り組みを/日教組定期大会
2025年10月1日 調査部
日教組(梶原貴委員長、19万6,000人)は20、21の両日、都内で定期大会を開き、① 教育政策 ② 教育行財政政策 ③ 労働政策 ④ ジェンダー平等、福祉、社会保障政策 ⑤ 組織政策――からなる新しい運動方針を確認した。そのうち、労働政策については、学校の働き方改革推進と確実な勤務時間の縮減などを要求。減少傾向が続く組織の拡大・強化に向け、「すべての教職員を対象にすべての職場で50%以上の組織化をめざす」などの目標を示している。梶原委員長はあいさつで、「仲間に寄り添い、組合が身近になったところで、組織拡大に取り組んでほしい」と訴えた。
公共サービスを支える賃金・労働条件と人員確保を
新方針は、労働政策について、① 公務員制度改革 ② 長時間労働是正 ③ 権利擁立、雇用・労働条件改善――の取り組みをそれぞれ記述している。
公務員制度改革については、「ILO勧告に則り、国際労働基準を満たした公務員の労働基本権の回復や自律的労使関係制度の確立、民主的な公務員制度改革の実現」や、「住民が安心して暮らすことのできる社会を創造する『公共サービスキャンペーン』」を推進するとともに、それを支える「適正な賃金・労働条件と人員の確保にむけとりくむ」。
学校の働き方改革推進と確実な勤務時間の縮減を
長時間労働の是正では、「勤務時間を意識した働き方をすすめるとともに、大胆な業務削減・教職員定数改善、給特法の廃止・抜本的見直し」を要求。国会対策や現場の声を届けるアピール集会、街宣行動などで関わってきた「給特法等の一部改正」を受けた学校の働き方改革の実効性ある推進と確実な勤務時間の縮減を求めて「府省要請、国会対策、首長・人事委員会・教育委員会要請、議会対策にとりくむ」。また、教職員の勤務時間の実態把握を目的とする「教員勤務実態調査」の精確な実施を文部科学省に求めるほか、教育委員会とも「業務量管理・健康確保措置実施計画の策定及び実施状況について交渉・協議」を実施。人事委員会(人事委員会をおかない自治体は首長)には、「労働基準監督機関の役割を果たす」ことを求める。
労働安全衛生体制の確立に向けた取り組みも明記。「持ち帰り業務、週休日・休日勤務、休憩時間も含めた精確な勤務時間の記録」や「衛生委員会、衛生管理者、衛生推進者の設置と活性化、産業医の配置と必要な措置」、「ストレスチェックの実施とその分析による必要な措置」などを求めるとしている。
人事評価は学校全体の活性化に結びつく制度・運用を求める
雇用・労働条件改善では、「政治の公務員給与に対する介入を排除しながら、社会的に公正な賃金・労働条件の実現をめざす」考え方を提示。そのうえで、教職員賃金については「公教育の社会的重要性に応える人員確保と、教職員が意欲をもって働くことができるよう、教職員の職務・職責や勤務実態をふまえた賃金改善をめざし、関係当局との交渉・協議」に臨む姿勢を示している。
人事評価制度については、制度の設計・運用にあたり日教組が必要不可欠な条件としている「5原則(合目的性、公正・公平性、客観性、透明性、納得性)2要件(苦情処理制度、労使協議制)が確保され、人材育成や活力の向上、学校全体の活性化に結びつくような制度や運用となるよう、不断の検証と改善」を要求。制度・運用を見直す際には、「評価結果を拙速・安易に処遇に反映することには反対」するとしている。
なお、定年引き上げの実施にあたっては、「十分な交渉・協議、合意にもとづく学校現場等への円滑な運用にむけとりくむ」とし、再任用についても「希望通りの確実な実施と高齢期の適切な労働条件の確保」を求める。
このほか、会計年度任用教職員および臨時的任用教職員の正規職員との均衡を踏まえた勤務・労働条件等の改善や、大学教職員賃金の全国水準維持、職場のハラスメント防止に向けた事業主の措置義務の徹底なども明示している。
全職場で教職員50%以上の組織化をめざす
一方、組織政策については、「依然として退職組合員等の減少分を上回る新規加入数とならず、厳しい状況」が続くなか、組織の拡大・強化をはかる取り組みとして、① 職場のすべての教職員を対象にすべての職場で50%以上の組織化をめざす ② 単組・支部は、市区町村・都道府県・中央における交渉・協議の成果を分会に環流する ③ 新規採用者全員の加入をめざし、年間1人以上の未加入者に対して声かけを行う ④ 再任用教職員や教育を支える多様なスタッフの組織化をすすめる ⑤ 会計年度任用教職員・臨時的任用教職員等の処遇改善をすすめ、単組においては、さらなる組織化を推進する――などの対応策を列記。さらに、「運動の継承と発展をめざし、次世代リーダー育成をすすめる」ことや、「あらゆる機会をとおして女性参画推進にとりくむ」ことなども掲げている。
「仲間に寄り添い組合が身近になったところで組織拡大に取り組む」(梶原委員長)
梶原委員長はあいさつで、「全単組でとりくんでいるが、新規加入者が退職者を超えるまでには至っていない」組織拡大について、① 企業の営業担当のように、カタログを広げて売り込む ② 授業や子どもとの接し方で同僚から一目置かれて、組合で学ぶことの有益さをアピールし、自身が広告塔になる――2つの方法があるとしたうえで、「ただ、最初から堅苦しい話をしても聞き入れてくれないかもしれない」などと述べ、「仲間に寄り添い、組合が身近になったところで、先ほどの手法で組織拡大に取り組んでほしい」と強く訴えた。
運動の歴史や教研集会などの取り組み内容を発信して理解を深める
組織拡大に関して梶原委員長は、大会終了後に開いた会見でも「組合に入っていてもいなくても権利などを享受できるが、それなら皆でやろう。例えば、今は当たり前になっている産休・育休制度や学校5日制、教員免許更新制の廃止など、社会がまだそこまで追いついていない時期に取り組み、勝ち取ってきた歴史がある」などと説明。「そういったことも丁寧に伝えながら、直近では働き方改革や学習指導要領のカリキュラムオーバーロードの改善などについて声を届けようということだ」と話した。日教組が開いている「教育研究全国集会」についても触れ、「授業を教える技術は書籍も含め、ネット上にもたくさんあるが、集会は子どもの捉え方であったり平和・人権・環境・共生をベースにした教育という営み全体を扱っている。それを学べるところはネット上にはないし、集会は対面を大事にしている」などと指摘。今後は「そういう発信をしっかりしていく」ことで組合活動への理解を深める考えを示した。
なお、中央委員会では、「山積する課題解決に立ちむかう強固な組織となるため、一人でも多くの仲間との結集が急務だ」などとする「すべての日教組運動を組織拡大・強化へとつなげる特別決議」を採択した。


