「集団的労使関係の重要性を再認識して、組織拡大推進体制」を強化/情報労連定期大会
2025年8月8日 調査部
NTTやKDDIなどの労働組合でつくる情報労連(安藤京一委員長、18万9,000人)は7月31日、都内でオンライン併用の定期大会を開き、向こう2年間の中期運動方針を決めた。新運動方針は、組織拡大の中期目標としてきた「2025年20万労連」の実現が「厳しい状況にある」ことから、今年9月末までの個別の取り組みに対して「成功・失敗の要因分析等による徹底的な総括を行う」ことを提起。あわせて、「集団的労使関係の重要性を再認識して、組織拡大推進体制」を強化する姿勢を強調している。大会では役員選挙が実施され、委員長に北野眞一氏(NTT労働組合)、書記長に春川徹氏(KDDI労働組合)をそれぞれ選んだ。
2025~26年度の中期運動方針は、運動の重点として、① 25万労連の実現に向けた取り組みの追求 ② 加盟組合活動の充実に向けた取り組みの強化 ③ 産別政策の深化と実現に向けた取り組みの強化 ④ 「暮らしやすい社会」の実現に向けた政治活動の推進 ⑤ 社会的価値ある産別運動の展開――の5つの柱を掲げている。
個別の組織化の取り組みの「要因分析等による徹底的な総括を行う」
「25万労連の実現」に向けた取り組みでは、「組織拡大は労働組合における『組織の生命線』」だとして中期目標に掲げた「2025年20万労連」の実現が「厳しい状況にある」ことを指摘。今年9月末までの個別の取り組みに対して「成功・失敗の要因分析等による徹底的な総括を行う」考えを示した。
そのうえで、「集団的労使関係の重要性を再認識して、組織拡大推進体制の強化」を図る。本部加盟組織が安定的な集団的労使関係を活かして組織拡大の中心的な役割と責任を担い、未組織グループ会社や60歳超再雇用者、有期契約等労働者を含む未組織労働者への働きかけを徹底する。ブロック支部は、当該エリアの組織拡大の責任主体として、加盟組合の「過半数確保」と「完全組織化」を支援して安定的な集団的労使関係の確立につなげ、全国オルグはターゲット業種(情報通信業、情報サービス業、通信建設業)を基軸に新規結成・加盟に取り組む。
「働く人の組織化は労働組合の社会的使命で最重要の取り組み」(安藤委員長)
「2025年20万人」を掲げた組織拡大の取り組みについて、安藤委員長はあいさつのなかで「残り4カ月での目標達成は難しく、9月末までの実績数を見て、次の取り組み目標を具体化していく」ことを説明。「日本全体が16.1%という過去最低の推定組織率に置かれた働く人の不安定な立場や労働者代表制の強化を盛り込んだ労働法制の動向などを鑑みれば、働く人の組織化は労働組合の社会的使命であり、最重要の取り組みだ」と述べ、次期運動でも最重点課題となることを改めて強調した。
8つの業種別グループで産業・業種固有の課題共有や情報交換を
加盟組合活動の充実に向けた取り組みでは、中央本部はブロック支部・県協と連携し、「加盟組合の状況や要望に応じて支援・指導を行う『伴走型支援』を継続」するとともに、「産別加盟の意義・必要性の理解浸透や相互の関係強化」を図る。
業種別グループの活動も強化。産業・業種固有の課題の共有や、連合の産業別・業種別部門連絡会等を意識した情報交換を行うため、① 情報サービス ② 運輸 ③ 医療・福祉 ④ 通信建設 ⑤ 製造 ⑥ ビルメンテナンス⑦携帯電話販売店⑧印刷――の8業種で取り組みを展開。加盟組合が連帯して春闘に取り組めるよう、参加組織による相互の情報交換や学習会なども行う。
加盟組合への「伴走型支援」で必要なスキル獲得と能力向上を
人材育成を重視した取り組みについては、ブロック支部加盟組合に対する「伴走型支援」に必要となるスキル・能力向上ならびに組織運営に役立つビジネススキルの獲得等を目的とする「ブロック支部・県協役員研修」や、労働組合役員として必要な基礎知識と組合活動の活性化に必要となる専門的な知識、スキルの獲得を目的にした「加盟組合研修」を開催。運動の継承・活性化に不可欠な若年層役員の活躍促進や、情報労連の活動を広く社会に訴える情宣・広報活動の充実・強化も試みる。
産業政策の深化と実現の取り組みをみると、「情報労連 政策提言集(2025~2026年度)」および個別政策の浸透・実現に向けて、① 連合や他産別組織等との政策交流 ② 組織内議員等との連携 ③ 政党や関連省庁への対応 ④ ブロック支部との連携による「情報労連・NTT労組自治体議員団」への対応――などの取り組みを強めるとしている。
「情報労連最低賃金」のあり方を検討
また、総合労働政策の取り組みでは、働き方の改善に向けて、多様な働き方や均衡均等待遇などの加盟組合での実態と課題の把握や、労働時間適正化などを推進。法定最低賃金の引き上げが加速するなか、今後の「情報労連最低賃金」のあり方についても検討する。
月例賃金改善は「組合員の期待に応え得る内容」
25春闘に関しては、月例賃金改善の妥結水準が5月27日時点で、「妥結額が把握可能な組織において平均9,483円(前年比+1,938円)となり、24春闘を大きく上回る」改善を引き出している。また、有期契約等労働者の賃金改善を引き出した組織数と、情報労連最賃協定もしくは企業内最賃協定を要求した組織数は、それぞれ24春闘と同程度。デジタル化の進展に伴う働き方の多様化等を踏まえて24春闘から統一的に取り組んでいる「つながらない権利(勤務時間外の連絡ルール)」の確立については、「24春闘以降の継続論議の末、① 勤務状況をツール等で見える化し社内で共有する ② 連絡を行う場合は相手が勤務時間内であることを必ず確認する ③ やむを得ず勤務時間外に業務を行った場合は必ず時間外労働として取り扱う――等のルール化を図った組織もあり、25春闘においても、一部組織において職場実態を踏まえたルール整備を要求し継続して論議していく旨の見解を引き出している」という。
方針は、月例賃金改善等の結果について「当該組織組合員の賃上げに対する期待に応え得る内容」だと評価する一方で、100人未満の中小組合と大手組合との格差が拡大している状況にあることなども指摘して、今後、「サプライチェーン全体で労務費を含めた適切な価格転嫁・適正取引に向けた取り組みをより一層深化させ、実効性を高めていく必要がある」と総括している。また、「つながらない権利」についても、今後の具体的な論議の促進に向けて優良事例の展開やガイドラインの作成などの対応を強める考えを明記した。
新委員長に北野眞一氏、新書記長に春川徹氏を信任
大会では役員選挙が実施され、新委員長に連合副事務局長を務めていた北野眞一氏(NTT労働組合)、新書記長には前KDDI労働組合委員長の春川徹氏を信任した。