「対話と学びあい」で組織を拡大して要求実現をはかる/全労連評議員会

2025年8月1日 調査部

全労連(秋山正臣議長、66万8,000人)は7月26、27の両日、都内でオンライン併用の評議員会を開き、2025年度の運動方針を確認した。方針は、「組合員が主体的・自覚的につくる組合活動を構築することが喫緊の課題」だとして、組合員との「対話と学びあい」で組織拡大を図り、要求実現の取り組みを編み出していく考え方を提起。実質賃金の低下を取り戻す賃上げの実現や、要求運動と組織拡大を結合させることで組織再生をはかる運動の展開などを方向性として示し、今後1年間の取り組みの具体化と充実を呼び掛けている。秋山議長はあいさつで、「職場に労働組合の風を吹かせ、誰もが安心して働き続けることができる社会を目指そう」と訴えた。

組合員が主体的・自覚的につくる組合活動を構築する

方針は、運動の方向性として昨年の定期大会で確認した、① 大幅・賃上げ底上げの実現、最低賃金全国一律実現や最低規制強化、労働基準法の骨抜きを許さない ② 「公共の再生」「税・社会保障闘争」で実現が守られる社会への転換をせまる ③ 改憲を阻止し、戦争する国づくりにストップをかける――の3つの要求の柱を、「具体化し貫徹させる」ことを提起。そのために、「組合員の自覚的・主体的な参加による強い組織の構築を具体化する」とした。

そのうえで、「組合員の主体性や能動的に活動をつくる力が余りにも奪われて」いたり、「自己責任や成果・評価を背景に競争に依存させられている」なかで、「組合員が主体的・自覚的につくる組合活動を構築することが喫緊の課題」だと指摘。「組合員の関心事、身近な要求を労働組合で解決する成功体験を積み重ねる」ことや、「組合員1人ひとりが考え、発議でき、行動できる組合組織の環境をつくる」ことなど、「組合員との『対話と学びあい』がいまほど大切なときはない」と訴えている。

実質賃金の低下をとり戻す賃上げを実現して『賃金が上がる国への転換』を

一つ目の「賃上げ・労働時間短縮、最低賃金、労働基準法解体阻止」の取り組みでは、「25春闘でも、24春闘の『30年ぶりとなる賃上げ』水準となったが、実質賃金引き上げを実現するまでに至っていない」として、「実質賃金の低下をとり戻す賃上げを実現し、『賃金が上がる国への転換』をめざす」姿勢を強調。物価高騰下の生活にもとづく要求を組み立て、「ストライキを背景にした団体交渉を産別統一行動に結集して行う、労働組合の原則的なたたかいをつくりあげる」ことを主張している。

高水準の賃上げは維持したがケア労働者では厳しい結果に

方針説明で黒澤幸一事務局長は、25春闘の賃上げ最終集計(7月3日時点)で、有額回答を引き出した組合の単純平均(一組合あたりの平均)が9,280円(3.31%)で、前年同期比777円増(0.08ポイント増)となった一方で、組合員一人あたりの加重平均は8,468円(2.85%)と、前年同期より1,695円減(0.64ポイント減)となったことや、時給制の非正規労働者の賃上げが46.1円(4.63%)となったことなどを報告。「単純平均は昨年を上回る水準だが、大きな病院などでの賃金の引き上げが大変厳しかったことによって、加重平均でこれだけ下回った」と説明したうえで、「(25春闘の)評価としては昨年の高い水準を維持したと考えているが、医療・介護・福祉といったケア労働者の賃金引き上げが厳しい結果になったこともみておかねばならない」と総括した。非正規の回答状況についても、「時給制非正規労働者の引き上げ率は正規労働者より高くなっているので、格差の是正としては大きな前進」だとしながらも、「昨年の最低賃金が51円引き上がっていることからすると、それにかなり届かない実態」だと述べ、職場での交渉状況の難しさを訴えた。

ストなど交渉力強化に踏み出した職場で変化が

一方、方針は、25春闘での「スト実施組合数は340組織(12.2%)と、前年最終の196組織(6.9%)から大きく前進しており、『ストライキなど交渉力を高めてたたかえる組織の構築』に踏み出した職場で変化が生まれている」などと評価。その一方で、要求提出率が57.2%と6割弱にとどまっていることに着目して、「労働界最大の闘争である春闘で要求提出できない組織は、職場で労働組合運動をすすめるうえでの様々な困難さが存在していることが想定される」とした。そして、「そうした状況の組織こそ、あらためて職場で一人ひとりの労働者の要求にむきあい、ていねいな要求論議と団結をつくり、行動することが求められている」として、要求を出発点とする「対話と学びあい」を進めて「仲間を増やし、力をつけて要求実現をはかるたたかい方も自ら編み出していくような議論を促していく」考えを打ち出している。

物価高騰を踏まえ最賃は「全国一律1,700円、めざせ2,000円」に

また、全国一律最賃制の実現に向けては、「いますぐ1,500円、めざせ1,700円」としてきた水準を、全労連が各地で実施してきた最低生計費試算調査と物価高騰をふまえて「全国一律1,700円、めざせ2,000円」とすることを提案。この水準は春闘で要求する企業内最低賃金額にも連動することから、26春闘の方針・要求額を決定する次期評議員会で確認する考え。最低賃金近傍で働く労働者(正規、非正規、女性、若者、高齢者)のアクションとしての「チェンジ全国一律最低賃金」キャンペーンに引き続き、取り組むとともに、SNS等で全国一律制度を求める世論喚起を図る取り組みをすすめる。

労働時間短縮の必要性を職場・地域で広める

労働時間短縮は、「職場の問題点を明確にして長時間労働根絶・労働時間短縮を秋闘・春闘での要求」に据え、「時間外労働時間実態調査を職場で行い可視化するとともに36協定の改善も随時検討」する。「賃下げなしの法定労働時間1日7時間、週35時間の実現」を求めて、全労連が掲げる ① 人間らしい生活時間の確保 ② いのちと健康を守る ③ ジェンダー平等の実現 ④ よい仕事ができる――の「時短の4つのメリット」を打ち出して、時短の必要性を職場・地域で広める構え。労働基準法改正の動きについても、「労働時間の規制強化は労働組合にとって、重要な要求のひとつ」だとして、「いのち・健康にかかわる重要な時短への要求を実現する」取り組みの強化を訴えている。

誇りを持って働き続けられる公務職場づくりを進める

二つ目の「公共の再生」に関しては、公共職場の現状を「教員、医療・福祉従事者、行政職員など、多くの職場で長時間過密労働が常態化しており、性別や年代、地域、雇用形態などによる賃金格差の拡大、競争主義の強化、ハラスメントや人間関係の悪化は、職場を疲弊させ、病休・休職と離職を増加させる悪循環が続いている」などと説明。「公務の魅力を取り戻し、誇りを持って働き続けられる職場づくりをすすめるために、公務員の生活を守る大幅賃上げ、長時間過密労働の解消、非正規公務員の処遇改善と正規化、定員削減の中止を求める」として、公共職場で働く人の労働条件の抜本的な改善を求める運動を進めるスタンスを示している。

要求運動と組織拡大の結合で組織再生をはかる

方針は、上記の要求の柱の実現に向けて、「組織を強く大きく」する取り組みにも言及。具体的には、「要求運動と組織拡大の結合で組織の再生をはかる」として、① 準備を進めてきた「対話と学びあいスクール」のワークショップの推進 ② 26春闘勝利をめざす「対話と学びあい推進、仲間増やし集中期間」の設定 ③ 単産・地方組織強化拡大交流集会の開催 ④「レバカレ(労働運動交流集会)2025」の取り組みを通じた対話と学びあいの実践――を進めるほか、組合未加入の非正規雇用労働者や自治体で働く会計年度任用職員などとの対話を進め、組合加入を呼び掛ける。

秋山議長はあいさつで、組織拡大の必要性を強調。「職場に労働組合の風を吹かせ、誰もが安心して働き続けることができる社会を目指し、対話と学びで組織を強化・拡大していこう」などと呼び掛けた。

フリーランスの労災特別加入の受け皿づくりと組織化を推進

また、協議員会では、「フリーランスの労災特別加入の受け皿づくりと組織化を推進する『全労連フリーランス労災保険支援センター』」の設置も確認した。支援センターの目的は、フリーランス労働者の労災保険特別加入の条件を整備することを契機に、労働者・国民要求の実現に必要な「多数の力」を結集すること。① フリーランス労働者の労災特別加入窓口として各県労連に地方事務局を設置して事業の全国展開を行う ② 労災特別加入をきっかけにした労働組合への加入勧奨を強める ③ 労働相談の実施等を通じた会員と組合員の拡大、フリーランス労働者とのつながりづくり ④ ニュースの発行や各種セミナーの実施――などの支援活動にとりくむとしている。