賃上げは単純平均で8,739円、3.26%に/国民春闘共闘の25春闘中間総括

2025年6月20日 調査部

全労連や純中立労組懇などで構成する国民春闘共闘委員会(代表幹事:秋山正臣・全労連議長)は6月18日、都内でオンラインを併用して第2回単産・地方代表者会議を開き、2025年春闘の中間総括を確認した。6月5日時点の賃上げ集計では、回答引き出し組合の単純平均が8,739円、3.26%。中間総括は、「労働者の高まる要求を背景に、昨年30年ぶりにつくり出した高い賃上げ水準を維持する結果」と評価する一方で、「実際の生活の改善にはつながっていない」などと指摘。とりわけ、ケア労働者の賃上げ回答が伸び悩んでいることを課題にあげている。秋山代表幹事は、医療・介護などの分野で働く人の労働条件の引き上げを強く訴えた。

加重平均は前年同期比544円減の8,337円(2.79%)に

国民春闘共闘の第7回賃上げ集計によると、6月5日までに1,115組合が何らかの回答を引き出している。このうち、金額もしくは率が明らかになっている有額回答を得た組合は739組合(66.3%)で、「定昇確保」などの言葉による回答を得た組合が376組合(33.7%)だった。

有額回答を引き出した組合の単純平均(一組合あたりの平均)は8,739円(3.26%)で、前年同期比421円増(0.09ポイント増)。組合員一人あたりの加重平均では8,337円(2.79%)となり、前年同期より額で544円ダウン、率も0.25ポイント低下した。中間総括は、加重平均が昨年を下回っている理由を「1,000人を超えるような大きな単組が多い医療職場での極端な低額回答が、結果を押し下げている」と分析している。

さらに、前年実績との比較が可能な563組合の単純平均額をみると、金額は8,875円で前年を418円上回る。率で対比可能な348組合の賃上げ率も単純平均では3.37%と、こちらも前年より0.24ポイント上昇している。なお、前年実績を超える回答を引き出した組合は、額で314組合、率では188組合となっている。

非正規労働者の時間額の引き上げは44.9円・4.31%

非正規労働者の賃上げ状況については、14単産217組合から462件の実績が報告されている。時給制では273件の報告があり、そのうち引き上げ額がわかっている221件の単純平均は44.9円、率では57件の平均で4.31%。前年同期の実績を額で2.1円、率では1.46ポイント下回っている。月給制では92件の報告が寄せられ、引き上げ額は80件の単純平均で5,711円、率では31件の平均で2.73%となった。額では前年同期を505円上回ったが、率は0.5ポイント下回っている。

なお、企業内最低賃金協定の改定状況は、8単産82組合から時間額68件、日額20件、月額36件の報告があがっている。時間額の改定では、新協定額の報告があった60件の単純平均が1,137円、日額では同15件の平均9,772円、月額は同28件の平均が18万6,064円となっている。

高水準の賃上げを維持しているが生活改善にはつながっていない

こうした集計結果について中間総括は、「大幅賃上げ・底上げを求める労働者の高まる要求を背景に、昨年30年ぶりにつくり出した高い賃上げ水準を維持する結果をつくり出している」と評価する一方で、「物価高騰が続くもとで、物価を考慮した実質賃金はマイナスのままで、実際の生活の改善にはつながっていない」などと指摘。25春闘の特徴として、① 医療や介護職場で働く労働者の賃上げが低く抑えられている ② 非正規労働者の賃金が伸び悩んでいる ③ 初任給が引き上げられる一方で中高年の賃上げが抑制されている――ことをあげ、「終盤の粘り強いたたかいで生活改善が実感できる回答を引き出せるようにあきらめずに取り組むことが必要」だと訴えている。

低調なケア労働者の賃上げ回答を問題視

さらに、中間総括は「要求を強めてきた医療や介護、障害・福祉などの産業で働くケア労働者の低額回答が続いている」ことを問題視。「一人あたり(加重)の賃上げ平均は、全体で8,337円(2.79%)となっているが、医療・福祉・保育・介護を除く平均は1万1,837円(3.89%)なのに対して、医療職場の平均は6,271 円(2.11%)、福祉・保育・介護職場の平均は8,545円(3.55%)と極めて低い。医療職場は他産業より5,566円(1.78ポイント)も低い賃上げ回答の状況で、福祉・保育・介護職場は、3,292円(0.34ポイント)低くなっている」などと現状を詳述したうえで、「こうしたケア労働者の職場での賃上げ回答は、ほぼベースアップ回答はなく定期昇給のみ。この物価高騰下では実質の賃下げとなっている」と強調した。

「医療・介護などで働く人の労働条件の引き上げを」(秋山代表幹事)

秋山代表幹事はあいさつで、「医療や介護に典型的にみられるように、第三次産業は日本社会に欠かせないが、ここで働いている人の労働条件は低いのが現実」などと指摘。「こういう仕事はやりがいを持ちやすいが、今はやりがい搾取が続いている」などと述べ、これらの分野に従事している労働者の労働条件の引き上げを求めていく決意を表明した。