単純平均5.21%の賃金改善/サービス連合の春闘中間報告
2025年4月16日 調査部
ホテルやレジャー施設、旅行会社・国際航空貨物取扱会社などの労働組合でつくるサービス連合(櫻田あすか会長、4万人)は8日、都内でオンライン併用の記者懇談会を開き、2025年の春季生活闘争(春闘)の中間報告(3月末現在)を発表した。これまでに36の組合が経営側と合意。このうち賃金改善については21組合が合意した。賃金カーブ維持分といわゆるベースアップに相当する「実質的な賃金改善分」をあわせて5.21%(単純平均)の改善を獲得。なかには、6%を超える水準で合意した組合も7組合みられている。櫻田会長は「会社と人手不足に対する課題感や人への投資の重要性について共通認識を持てていることが、結果につながっている」などと述べ、現時点での取り組み内容を評価した。
7組合が6.0%超の水準で合意
今春闘でサービス連合は、好調な国内旅行やインバウンドの観光需要や24春闘の実績などを背景に「中期的な賃金目標『35歳年収550万円』の実現に向けて6.0%(1万9,910円)の賃金改善に取り組む」として、過去最高水準の賃上げ要求を掲げている。
3月31日現在、これまでに要求書を提出した加盟組合は137組合中84組合(63.5%)。そのうち、36組合が何らかの項目で合意している。
賃金改善については83組合が要求し、産別方針の(賃金カーブ維持分をあわせて)6%水準を要求したのは51組合に達している。うち8組合は、10%を超える賃金改善を要求したという。賃金改善で合意したのは21組合(内訳:ホテルレジャー9組合、ツーリズム・国際航空貨物12組合)で、改定率は算出可能な加盟組合の単純平均で5.21%。このなかには、6%を超える水準で合意した組合も7組合(ホテルレジャー3組合、ツーリズム・国際航空貨物4組合)ある。
年間一時金は3.4カ月
「4.0カ月を意識して水準向上に取り組む」ことを掲げた一時金は、57組合が要求し19組合で合意に至っている。算出可能な加盟組合の単純平均(速報値)は全体で3.4カ月(ホテルレジャー3.2カ月、ツーリズム・国際航空貨物3.7カ月)。前年(最終結果3.1カ月)を上回る水準で推移している格好だ。
また、産業全体の労働条件の底上げや処遇改善につながる「産業別最低保障賃金」は37組合が要求。(産業別最低保障賃金の水準までは至らない)企業内最低賃金の合意も含めると、12組合が合意している。
年間総実労働時間1,800時間の実現に向けた取り組みも
一方、労働条件の改善では、69組合がそれぞれの状況に応じた要求を掲げている。特に、年間総実労働時間1,800時間の実現に向けて、休日増や所定労働時間短縮、年次有給休暇の拡大・取得促進などの取り組みが多い。また、60歳以降の高齢層の労働条件改善も目立つほか、今春闘で新たに方針に加えたカスタマーハラスメント対策や従業員の健康管理としての勤務間インターバル時間の導入・インターバル時間の延長など、サービス連合の方針に沿った多様な要求・交渉を展開している。
その結果、労働時間関連では、休日数の増加や年次有給休暇制度の拡充、半日年休制度の新設など。勤務間インターバルに関しては、インターバル時間の11時間への拡大で合意している組合がみられる。また、「年間総実労働時間の短縮については、今春闘で合意に至らなくても、必要性について労使で認識合わせをして、今後、労使で取り組みを進めていくことで一致した加盟組合もある」(宇髙誠会長代理)。カスハラ対策に関しても、「社内でのカスハラ対策研修の実施とマニュアルの作成・周知で合意している組合がいくつかある」(同)という。
「人手不足に対する課題感や人への投資の重要性の共通認識が結果に」(櫻田会長)
こうした状況について櫻田会長は、「人への投資が絶対的に求められているとの視点で過去最高となる6%の賃上げ水準を掲げ、要求貫徹に向けて協議を重ねてきた結果、昨年並み、もしくはそれ以上の水準を見込んでいる加盟組合も多く見受けられる」などと説明。「会社と人手不足に対する課題感や人への投資の重要性について共通の認識を持てていることが、結果につながっている。賃金はそういった傾向がみられるし、一時金も昨年以上の水準で合意しているところも多い」と述べた。そのうえで、「選ばれる産業になっていくためには、労働環境全体の整備も欠かせない」として、総実労働時間短縮などの賃金改善以外の要求項目の取り組みの重要性も指摘。「そこへの取り組みも大きく進んでいる」として、中間まとめの内容が交渉中の組合への後押しや未組織労働者に波及していくことに期待感を示した。
サービス連合は今後、中間まとめの組織確認を経て、7月の定期大会で最終とりまとめを確認する予定。