正社員の制度昇給とベアなどを合わせた引き上げ率は5.14%に/UAゼンセンの第3のヤマ場(3月末)の回答状況
2025年4月11日 調査部
UAゼンセン(永島智子会長)は4日、2025労働条件闘争の第3のヤマ場(3月末)を終えた4月1日午前10時時点の妥結集約を発表した。正社員の制度昇給とベアなどを合わせた「総合計」での引き上げ率は5.14%で、規模別にみると、「300人以上」「300人未満」ともに「総合計」での引き上げ率は5%を超えている。また、短時間組合員の時給の引き上げ率(6.08%)は、正社員組合員の引き上げ率(前述の5.14%)より高くなっており、この時期で正社員を上回るのは10年連続となった。
正社員組合員の「総合計」での引き上げ額は1万6,125円
妥結集計によると、4月1日午前10時時点で、正社員(フルタイム)組合員については453組合、短時間(パートタイム)組合員については214組合、契約社員組合員については67組合が妥結している(合計118万強の組合員)。
正社員(フルタイム)組合員の妥結状況からみると、制度昇給とベアなどを合わせた「総合計」での引き上げ額の加重平均(42万4,607人)は1万6,125円、率は5.14%。賃金体系維持が明確な組合の賃金引き上げ分(ベアなど)の加重平均(28万5,607人)は1万1,394円、率は3.57%となっている。
「総合計」は前年同時期(1万6,446円、5.49%)と比べると321円下回る結果となっているが、UAゼンセンの説明では、「総合計」での妥結率が前年を上回った組合が262組合と、全体の6割近くにのぼるほか、135組合で満額回答(うち45組合が満額超えの回答)を獲得しており、「高水準の賃金の引き上げが定着フェーズに入った」と述べている。
前年同組合と比べた増減額・率は「300人未満」規模でより高い水準に
規模別にみると、「300人以上」では、「総合計」での引き上げ額が1万6,225円、率は5.14%で、賃金体系維持が明確な組合の賃金引き上げ分(ベアなど)が1万1,441円、率は3.57%。「300人未満」では、「総合計」での引き上げ額が1万4,586円、率は5.07%で、賃金体系維持が明確な組合の賃金引き上げ分(ベアなど)が1万475円、率は3.56%となっている。
正社員組合員について妥結した453組合中、前年と比較できる444組合(42万2,721人)について、前年と比べた増減額・率の状況を規模別にみると、「300人以上」では「総合計」での引き上げ額が343円増、率が0.09ポイント減、賃金体系維持が明確な組合の賃金引き上げ分(ベアなど)が382円増、率は前年同率。一方、「300人未満」では「総合計」での引き上げ額が1,336円増、率は0.31ポイント増、賃金体系維持が明確な組合の賃金引き上げ分(ベアなど)が1,364円増、率は0.34ポイント増となっており、前年同組合と比べた増減額・率は「300人未満」のほうが「300人以上」よりも高い水準となっている。こうした結果からUAゼンセンは「中小企業においても高い賃上げが広がってきており、格差是正に一定の歯止めをかける結果となっている」と評価している。
「総合サービス部門」の「総合計」での引き上げ額は1万8,101円にのぼる
部門別にみると、「製造産業部門」では、「総合計」での引き上げ額が1万7,420円、率は5.40%で、賃金体系維持が明確な組合の賃金引き上げ分(ベアなど)が1万2,579円、率は3.89%。「流通部門」では、「総合計」での引き上げ額が1万4,928円、率は4.80%で、賃金体系維持が明確な組合の賃金引き上げ分(ベアなど)が1万653円、率は3.36%となっている。「総合サービス部門」では、「総合計」での引き上げ額が1万8,101円、率は5.79%で、賃金体系維持が明確な組合の賃金引き上げ分(ベアなど)が1万2,251円、率は3.87%となった。
前年と比較できる444組合(42万2,721人)について、前年と比べた増減額・率の状況を部門別にみると、「製造産業部門」では「総合計」での引き上げ額が1,842円増、率は0.43ポイント増、賃金引き上げ分(ベアなど)が1,853円増、率は0.46ポイント増となっている。「流通部門」では、「総合計」での引き上げ額が182円減、率は0.24ポイント減、賃金引き上げ分(ベアなど)が288円減、率は0.20ポイント減。「総合サービス部門」では、「総合計」での引き上げ額が494円増、率は0.08ポイント減、賃金引き上げ分(ベアなど)が578円増、率は0.03ポイント増となった。
短時間組合員の引き上げ率は正社員を約1ポイント上回る
短時間(パートタイム)組合員の妥結状況をみると、「総合計」(時給)での引き上げは、加重平均(74万2,329人)で70.1円(6.08%)と、前年同時期の66.7円(6.11%)と、額では3円以上伸びているが、時給ベースが昨年に比べて上昇していることもあり、引き上げ率でみるとほぼ同水準となっている。
正社員組合員の引き上げ率と比べると、正社員の5.14%を約1ポイント上回る結果となっており、この時期で正社員を上回るのは10年連続。なお、短時間組合員について妥結した214組合のうち、前年と比較できる207組合(73万8,003人)における前年比増減額・率は、4.6円増(0.05%増)となっている。
契約社員組合員の「総合計」の加重平均は1万1,180円(4.75%)。妥結した67組合のうち、前年と比較できる63組合で増減をみると、額は825円上回り、率では0.19ポイント下回っている。
「物価上昇を上回り生活向上分を確保する賃上げが定着」(永島会長)
4日の会見で永島会長は、正社員組合員の妥結結果について「物価上昇を上回り生活向上分を確保する賃上げが定着している」とした上で、規模別にみた結果で「300人未満」の「総合計」における妥結率が「300人以上」と同様に5%を超えることについて、「中小企業においても高い賃上げが広がっている」と指摘。集中回答日の前から高水準での満額妥結となった組合や、集中回答日における各組合の取り組みにより、「高い賃上げの定着と、いわゆる非正規労働者の格差是正の加速に向けた流れを作り、その流れが企業規模間格差の歯止めにもつながった」と評価している。
労務費の価格交渉を行うための対策が
会見では、各部門からも報告があった。製造産業部門からは吉山秀樹・部門事務局長が、妥結した170組合のうち「300人未満」(107組合)の妥結額・率は前年より、「総合計」が1,966円(0.58ポイント)増、賃金引き上げ分(ベアなど)が2,149円(0.66ポイント)増となり、「300人以上」よりも上げ幅が大きくなっていることを報告。「要求をしっかり高めて各組合が果敢に交渉にあたり健闘した」とここまでの結果を評価した。
また、会見では製造産業部門の組合を対象に実施した「価格転嫁の状況等に関する調査」の第5回調査結果も発表されている。調査結果では労務費の価格交渉を行った企業割合が受注者としての立場では64%、発注者としての立場では81%と、特に発注者としての立場で申し入れた際には比較的高い割合で応じていることなどが明らかとなった。吉山事務局長は「改めて交渉をしっかり行うための対策が必要」との認識を示している(同調査は2023年1月から年2回実施し、今回が5回目。調査期間は2024年12月16日~2025年2月21日で、回答組合数は220組合)。
流通部門では49組合が満額回答を獲得
流通部門からは桂義樹・部門事務局長が、妥結した181組合のうち約6割が前年を超える妥結額となり、満額回答も49組合にのぼったことを説明し、高水準の賃上げが「定着フェーズに入ってきた」と評価。短時間組合員については、「総合計」で33組合が80円を超える額、10組合が90円を超える額で妥結したと報告した。賃金以外でも、40組合で休日増に関して妥結し、「平均1.8日増を獲得した」と述べている。
総合サービス部門からは髙井哲郎・部門事務局長が、正社員組合員について、同部門における前年からの差は「300人未満」のほうが「300人以上」よりも小さくなっていることを説明し、「規模間格差の広がりを抑えることができた」と報告。また、フードサービス、生活サービス、ホテル・レジャーなどで高い妥結結果となっていることを説明した。短時間組合員については妥結数が前年と比べて5組増加し、妥結額も4.2円上回った」と述べている。