ベア・賃金改善の平均回答額は1万981円で、2014年以降で最高の水準に/金属労協2025闘争の3月末現在の回答状況
2025年4月11日 調査部
金属労協(JCM、金子晃浩議長)は2日、2025闘争における3月31日現在の賃金引き上げなどの回答集計結果を発表した。ベア・賃金改善などの賃上げの回答額の全体平均(単純平均)は1万981円で、この時期の水準としては、賃上げが復活した2014年以降で最高となった。同日、本部で開かれた記者会見で金子議長は、「中小を含めた後続組合の健闘ぶりが非常にいい流れになっている」と話した。
賃上げ要求額の単純平均は1万3,980円
集計結果によると、賃金については、3,050ある構成組合のうち、3月末現在で2,526組合が要求を提出しており、そのうちの2,270組合がベア・賃金改善などの賃上げを要求している。
賃上げ要求額の単純平均は1万3,980円で、規模別にみると、「1,000人以上」が1万4,773円、「300~999人」が1万4,587円、「299人以下」が1万3,636円となっている。なお、金属労協の2025闘争方針における賃上げの要求基準は、すべての組合での1万2,000円以上の賃上げ(賃金構造維持分除く)。
回答を受けた組合の87.3%が賃上げを獲得
回答・集約の状況をみると、回答・集約組合は1,268組合で、そのうち1,107組合が賃上げを獲得した。回答・集約組合に対する賃上げ獲得組合の割合は87.3%。
回答額の単純平均は1万981円で、昨年同時期の9,593円を1,388円上回った。規模別にみると、「1,000人以上」が1万3,156円で昨年同時期比767円増、「300~999人」が1万1,912円で同912円増、「299人以下」が9,738円で同1,719円増となっており、回答額は規模が大きい組合ほど高くなっているものの、昨年同時期と比べた増加幅では、「299人以下」が最も高かった。回答額は、すべての規模で2014年以降で最高の水準となった。
一時金の平均月数は前年並み
一時金については、要求組合が1,881組合、業績連動方式を採用している組合が244組合で、回答・集約・確定組合の数は868組合となっている。昨年を上回る水準となったのが316組合、同水準が228組合、下回った組合が245組合で、昨年を上回った組合数は昨年同時期の386組合から減少した一方、下回った組合が同177組合から70組合程度増えた(昨年同時期の回答・集約・確定組合数は832組合)。
平均月数は4.75カ月で前年並み(昨年同時期は4.74カ月)。金属労協が最低獲得水準とする4カ月に届かなかった組合は139組合で、昨年同時期の129組合から10組合増加した。
賃金改善額は規模ごとにみても過去最高の水準
JCM議長として、金属労協全体の集計結果についてコメントした自動車総連会長の金子議長は、「2014年以降での過去最高の水準を(3月末現在でも)維持しており、規模ごとにみても、過去最高の水準を獲得することができている」「賃上げ率では、規模によっても同等の水準を維持できている」と説明。「中小を含めた後続組合の健闘ぶりが非常にいい流れになっている」と評価した。
自動車総連での賃金改善分の賃上げ率は3.9%
記者会見には、金子議長のほか、電機連合、JAM、基幹労連、全電線のそれぞれのトップと、連合の仁平章・総合政策推進局長も出席し、各産別トップは加盟組合の最新の回答状況を説明した。
自動車総連会長の立場で金子氏は、4月1日現在の自動車総連全体の賃金改善分の平均は1万901円で、「JC平均と同等の水準となっている」と説明。改善分を率に換算すると3.9%で、「物価上昇を十分上回る水準となっている」と述べた。
また、金子会長は、300人未満の組合の改善分の率は3.8%であることも紹介し、「全体とほぼ同等の賃金獲得がなされている」とコメント。さらに、前年との比較では300人未満最も増加額が大きいと説明し、「規模間格差としては多少のグラデーションは付くものの、中小の格差拡大に歯止めをかけるという目標に対しては一定程度の成果が出ている」とした。価格転嫁の取り組みについては「少しずつではあるが、効果が見えてきている」と話した。
拡大中闘組合もほぼ全てが1万円以上の最終基準をクリア/電機連合
電機連合の神保政史会長は、3月中旬の集中回答日に回答を引き出す中闘12組合に続く拡大中闘16組合について、1組合を除くすべてが、電機連合が最終の回答引き出し基準(歯止め基準)に設定した1万円以上をクリアしたと説明。この流れが中堅・中小組合にも波及しており、直近では、全体で1万3,000円か4,000円程度の平均額となっていると紹介した。
中小のなかでも100人未満が厳しい結果に/JAM
JAMの安河内賢弘会長は直近の妥結状況について、賃金改善額の単純平均は全体で9,615円、300人未満で8,753円となっているが、300人未満を分解すると、100人~299人の9,498円に対し、100人未満が8,162円となっており、「100人未満が厳しい結果となったと感じている」と話した。
価格転嫁の取り組みについては「一定の効果があったと評価したい」としたが、トランプ関税も含めたさまざまな不透明感から、設備投資を控える動きがマイナスに作用した加盟単組もあったとした。また、安河内会長は、300人未満の中小でも1万5,000円を超える満額回答を獲得した組合が42単組あった一方で、25単組がベアゼロだったとし、「同じ中小企業間でも格差が大きく出てきている」と話した。
なお、JAMがその後の4月4日に発表した1日現在での第13回集計によれば、賃金改善額の単純平均は9,636円で、300人未満では8,746円。ともに1999年の結成以来の最高額となっている。
基幹労連で格差改善の前進回答を獲得したのは34組合
基幹労連の津村正男委員長は、4月1日現在での賃金改善額の平均は1万4,021円で、規模別にみると、1,000人以上が1万4,923円、300人~999人が1万567円、300人未満が1万3,013円となっていると説明した。
基幹労連は今回の方針で、1万5,000円の賃上げ要求基準とともに、格差改善に取り組む場合の改善要求額の目安を初めて設定。目安を平均賃金の1%とした。津村委員長は、賃上げ要求に加えて、格差改善を要求したのは187組合で、格差改善分の要求額の平均は3,744円となっていると報告した。
格差改善を要求した組合のうち、回答を受けているのは117組合で、そのうち34組合が前進回答を得たとした。回答額の平均は3,152円で、規模別にみると1,000人以上が2,250円、300人~999人が2,533円、300人未満が3,850円と、規模が小さい組合ほど額が高い。津村委員長は「やはり中小で格差改善の認識が労使ともにあり、それなりの回答を受けている」と話した。
賃金改善の回答額は定昇込みで6%超に/全電線
全電線の石橋進一委員長は、賃金改善の回答額の単純平均は1万4,320円で、率では4.98%、定昇相当分込みで6.08%となっているなどと説明し、大手だけでなく中小でも2014年以降での最高となった昨年を上回る水準となっていると話した。