加重平均1万7,358円・5.42%に/連合の第3回回答集計
2025年4月11日 調査部
連合(芳野友子会長)は3日、2025春季生活闘争の第3回回答集計結果(1日10時時点)をまとめた。平均賃金方式で回答を引き出した2,485組合の定期昇給相当分込みの賃上げ額の加重平均は1万7,358円で前年同時期比1,321円増。賃上げ率は5.42%で、前年同時期を0.18ポイント上回った。300人未満の中小組合(1,441組合)の加重平均は、1万3,360円・5.00%で、昨年同時期(1万2,097円・4.69%)を上回るとともに前回集計の賃上げ率(4.92%)も上回った。業種別では、24春闘で伸び悩んでいたサービス・ホテルと交通運輸の賃上げ率の上昇が目立つ。
中小組合の賃上げ率も5%
第3回回答集計結果によると、集計組合7,512組合の7割を超える5,447組合がなんらかの要求を提出。そのうち、4,383組合が月例賃金改善(定昇維持含む)を要求しており、2,109組合が妥結済み。賃金改善分を獲得したのは1,378組合で、要求組合に対する獲得割合は65.3%となっている。
平均賃金方式で回答を引き出した2,485組合の定昇相当込みの賃上げ額は、加重平均で昨年同時期比1,321円増の1万7,358円。率は同比0.18ポイント増の5.42%。これを組合規模別でみると、「300人以上」は額が同比1,255円増の1万7,618円で、率は0.16ポイント増の5.44%。「300人未満」は、額が同比1,263円増の1万3.360円で、率が0.31ポイント増の5.00%となっている。
「300人未満」の賃上げ率は、第2回集計では4.92%だったが、第3回集計は上昇して5.00%。連合が公表している第3回集計結果の推移をみると、300人未満の賃上げ率は2014年闘争から22闘争まではおおむね2%前後で推移していた。それが23闘争で3%台(3.42%)、24闘争では4%台(4.69%)に上がり、今回は5%台に乗った格好だ。
中小組合の賃上げ分は1万118円、3.73%
ベアや賃金改善などの「賃上げ分」が明確に分かる1,986組合の賃上げ分の加重平均は1、万2,274円(3.82%)で、昨年同時期を1,196円(0.19ポイント)上回った。このうち、「300人未満」の中小1,028組合は、額が同1,609円増の1万118円で、率も0.52ポイント増の3.73%となっている。全体と中小組合のいずれも、額・率ともに賃上げ分の集計を始めた2015闘争以降の最終集計結果と比べて最も高い。
業種別ではサービス・ホテルが5.04%、交通運輸も4.68%に
業種別をみると、賃上げ率(加重平均)は、製造業(昨年同時期比0.12ポイント減の5.65%)と情報・出版(同比0.32ポイント減の5.41%)が昨年に続き5%台を維持。前年同時期に5.46%だった商業流通は、今回0.68ポイント下がって4.78%になった。他方、昨年は3.72%と伸び悩んでいたサービス・ホテルが5.04%に上昇。同じく3%台(3.26%)で苦しんでいた交通運輸も4.68%に跳ね上がっている。
パート・有期契約社員等の時給引き上げ率は6.10%
一方、パートタイマーや有期契約社員などの「有期・短時間労働者・契約等労働者」の賃上げについては、時給では加重平均(72万5,835人の集計)で70.51円となり、昨年同時期を3.84円上回っている。月給は加重平均(同1万6,898人)で1万1,414円となり、昨年同時期を2,456円下回った。時給の引き上げ率を概算すると6.10%となり、フルタイムの組合員の平均賃金方式での賃上げ率よりも高い水準となっている。
一時金については、フルタイム組合員の年間月数の加重平均は5.01カ月(168万1,429円)で、月数では昨年同時期を0.06カ月下回った(額は同3万9,807円増)。短時間労働者は前年同期比0.50カ月増の1.63カ月、額は同5万1,791円増の13万2,004円だった。
「新たなステージの定着に向けて着実に前進している」(芳野会長)
芳野会長は同日開いた記者会見で、大手・中小組合ともに賃上げ率が5%台に乗っていることなどを踏まえ、「規模別に関わらず引き続き高水準を維持しており、新たなステージの定着に向けて着実に前進をしている」と評価。パートタイマーや有期契約労働者などの賃上げ率がフルタイム組合員を上回る回答となっている点にも触れ、「雇用形態間格差是正の取り組みが進んでいる」とした。そのうえで、「中小組合の春闘は4月以降も続く。この勢いを、後続の組合や組合のない職場を含め社会全体へ波及をさせていきたい」と訴えた。
「しっかりした成果を最後まで成し遂げて日本全体への貢献を」(金子代表)
また、会見では各共闘連絡会議の代表も出席し、各共闘での回答状況を報告した。金属共闘連絡会議の金子晃浩代表(自動車総連会長)は、3月末までに構成組織の半数が解決に至っているなかで、全体の賃上げ額が単純平均で1万981円と集計可能な2014闘争以降で過去最高水準になっていることや、規模別にみても全規模で過去最高水準を維持し続けていることを指摘して、「先行組合で獲得した成果が現時点でも全体に波及している」などと評価。価格転嫁・適正取引についても、「決して十分とは言い切れないが、昨年、一昨年と比べたら着実に浸透している」と述べた。そのうえで、「日本全体で組合のない企業・団体にも波及させていくことが連合の狙い」だとして、「我々の構成組織でしっかりした成果を最後まで成し遂げることで、日本全体への貢献をしていきたい」と強調した。
「中小が先行牽引組に少しでもついていけるよう後押しする」(堀谷代表)
化学・食品・製造等共闘連絡会議の堀谷俊志代表(JEC連合会長)は、「いろいろな産業があるので、全体をまとめて表現するのが難しい」としつつも、全体感として「全ての構成組織が昨年を上回っているし、過去最高の数字になっている」と評価する一方、「大手の勢いが非常にあるので、結果として中小との格差が少し広がっている」とも述べて、規模間格差の問題を指摘した。ただし、「前年度比でみれば、中小の方が上回った形で伸びがある」という。そのうえで、「どこの構成組織も中小が多く、交渉はまだこれから。各構成組織が先行牽引組に少しでもついていけるように後押ししていく」考えを示した。
流通・サービス・金融共闘連絡会議の永島智子代表(UAゼンセン会長)は、生保労連で「モチベーション・働き方向上に資する回答が多数出ている」ことや、損保労連とサービス連合で「要求水準に近い回答が続いている」状況を報告。さらに、「全ての単組で改善の回答が出ていて、集計可能な年度で過去最高額の回答が続いている」全労金で非正規労働者にも高水準の回答が示されており、労済労連でも「9単組すべて妥結済みで、昨年を上回る改善回答がでている」ことを紹介した。なお、UAゼンセンについては、「特筆すべき動き」として、300人未満の中小組合に高水準の賃上げ回答が出ていることや、短時間組合員のフルタイム組合員を上回る回答が続いている点をあげている。
「春闘の流れを人事院・人事院勧告を通じて公務で働く者へ波及させる」(安藤代表)
インフラ・公益共闘連絡会議の安藤京一代表(情報労連委員長)は、賃上げについて、「暮らしを支えるインフラ事業の持続性・継続性の確保に向けて、人への投資を意識させた回答を会社側から引き出した組合が一定数あった」ことを指摘した。具体的には、若年層を中心とした人材確保に向けて昨年以上の賃金改善を引き出した組合や、月例賃金引き上げを要求したすべての組合が前進的回答を引き出した構成組織、連合の掲げる5%目標を達成しなければ社会全体に乗り遅れると会社に決断を迫り、過去最高の回答を引き出した構成組織があったという。今後は、「先行組合が引き出した回答を現時点で精力的に交渉を続ける仲間へ、この春季生活闘争の流れを人事院・人事院勧告を通じて公務で働く者への波及もできるよう、取り組みを進めていきたい」と訴えた。
交通・運輸共闘連絡会議の成田幸隆代表(運輸労連委員長)は、国内旅行需要の回復やインバウンドの増加等で概ね好調に推移しているなか、人流については ① 鉄道の旅客3社は大幅な賃上げ、昨年実績や物価上昇率を上回る内容を引き出している ② 民間の私鉄も会社業績は好調で、大手組合すべてで昨年実績を上回る賃金改善を勝ち取っており、中小にも波及している ③ 航空部門では、ベア1万~1万5,000円で解決している組合も多く、特にグランドハンドリング関係では人材確保対策として高水準の回答を得ている ④ タクシーは8%以上、月額2万8,000円以上の要求を掲げて交渉を行っている――などと報告。物流運輸では、「適正運賃料金の収受がようやく進み始めた一方で、労働時間規制による物流の2024年問題への対応、燃油費の高止まり、物価高による取扱物量の減少、人手不足による外部委託費の増加などもあり、企業収益を圧迫する厳しい状況」にあっても、「人への投資に重点を置き、労働条件の改善から人材を確保することをベースに全力で交渉を行っている」と話した。