正社員のベアなどの賃金引き上げは物価上昇を大きく上回る3.75%/UAゼンセンの第1のヤマ場の回答状況

2025年3月26日 調査部

UAゼンセン(永島智子会長)は13日、2025労働条件闘争の第1のヤマ場(12日~13日)を終えた13日午前10時時点の妥結集約を発表した。正社員組合員の制度昇給とベアなどを合わせた「総合計」での引き上げ率は5.37%で、ベアなどの賃金引き上げ分でみると3.75%となっている。また、300人未満が300人以上を、額でも率でも上回っている。短時間組合員の時給引き上げは75.7円(6.53%)で、昨年同時期の水準を上回っている。

正社員組合員の引き上げ額は「総合計」では1万7,046円

妥結集計によると、13日午前10時時点で、正社員(フルタイム)組合員については139組合、短時間(パートタイム)組合員については95組合、契約社員組合員については15組合が妥結している(合計76万人強の組合員)。

正社員(フルタイム)組合員の妥結状況からみると、制度昇給とベアなどを合わせた「総合計」での引き上げ額の加重平均(26万1,647人)は1万7,046円、率では5.37%で、賃金体系維持が明確な組合の賃金引き上げ分(ベアなど)の加重平均(19万2,234人)は1万2,064円、率で3.75%となっている。

「総合計」は、昨年同時期(1万8,198円、5.91%)と比べると、昨年を下回る結果となっているが、満額回答が相次いだ昨年と同様、今年もこれまでに60組合と多くの組合が満額か満額を超える水準を獲得しており、UAゼンセンでは「方針どおり物価上昇を大きく上回り生活向上分を確保する賃上げを実現している」と評価している。

300人未満のベアなどの賃金引き上げ分は4%台

規模別にみると、「300人以上」は、「総合計」での引き上げ額が1万7,027円、率で5.36%で、賃金体系維持が明確な組合の賃金引き上げ分(ベアなど)は1万2,050円、率で3.74%。「300人未満」は、「総合計」での引き上げ額が1万8,092円、率で5.94%で、賃金体系維持が明確な組合の賃金引き上げ分(ベアなど)は1万2,869円、率で4.17%となっており、「300人未満」が「300人以上」よりも高い水準となるとともに、4%台の賃金引き上げ分(ベアなど)を記録している。

製造産業部門は要求基準を引き上げた効果が出る

部門別にみると、「製造産業部門」は、「総合計」での引き上げ額が1万9,398円、率で5.65%で、賃金体系維持が明確な組合の賃金引き上げ分(ベアなど)は1万3,171円、率で3.84%。「流通部門」は、「総合計」での引き上げ額が1万5,795円、率で5.06%で、賃金体系維持が明確な組合の賃金引き上げ分(ベアなど)は1万1,441円、率で3.64%。

「総合サービス部門」は、「総合計」での引き上げ額が1万9,090円、率で6.09%で、賃金体系維持が明確な組合の賃金引き上げ分(ベアなど)は1万3,817円、率で4.24%となっている。「総合計」では、「総合サービス部門」が6%を超える引き上げ率で、最も高い水準となっており、賃金引き上げ分(ベアなど)でみても同部門の引き上げ率が最も高い。

同組合で前年と比べると、「製造産業部門」は、「総合計」では額で1,315円増、率で0.23ポイント増、賃金引き上げ分(ベアなど)は額で1,529円増、率で0.35ポイント増となっている。「製造産業部門」の今年の要求基準は、賃金体系維持が明確な組合は「賃金引き上げ4%基準+格差是正」であり、昨年の「4%を基準に3%以上の賃金引き上げ」から要求水準を引き上げており、UAゼンセンでは「要求水準を上げた成果が出ている」としている。

「流通部門」は、「総合計」では額で65円増、率で0.14ポイント減、賃金引き上げ分(ベアなど)は額で233円減、率で0.19ポイント減。「総合サービス部門」は、「総合計」は額で390円減、率で0.42ポイント減、賃金引き上げ分(ベアなど)は額で723円減、率で0.44ポイント減となっている。

短時間組合員引き上げ率は正社員を1ポイント以上、上回る

短時間組合員の妥結状況をみると、「総合計」(時給)での引き上げは、加重平均(49万5,994人)で75.7円(6.53%)と、昨年同時期の70.8円(6.45%)を上回っている。

正社員組合員の引き上げ率と比べると、正社員の5.37%を1ポイント以上、上回る結果となっており、この時期で正社員を上回るのは9年連続。なお、前年と比較できる91組合(49万5,994人)の加重平均額は、4.7円(0.09%)の増加となっている。

契約社員組合員の「総合計」の加重平均は1万2,525円(5.25%)となっている。

「早め、高め、満額の妥結で高い水準での賃上げの定着を図った」(永島会長)

同日の記者会見で永島会長は、引き上げ額について、正社員組合員については「過去最高となった昨年に引き続く3年連続で高い水準と言える結果だ」とし、短時間組合員については「昨年を大きく超えて過去最高の妥結結果」と説明。

「2025労働条件闘争は23、24と続いた賃上げの流れの定着に向けた正念場であり、また、正社員とパートタイムという雇用形態間の格差是正を加速する賃上げの実現に向けた正念場でもあることから、回答日の前から、早め、高め、満額での妥結により、高い水準での賃上げの定着を図った。いわゆる非正規労働者の格差是正の加速に向けた流れをつくることができたとともに、規模間格差の是正についても前進を図れた」と話した。

化学素材の4労組すべてで満額を獲得

各部門からも報告があった。製造産業部門では、東レ、旭化成などの化学素材の4労組が業種共闘を組んで交渉にあたり、すべてで満額(いずれも4%の引き上げ分)を獲得。ベア分だけでも前年を1,750円上回った。これに続く東洋紡、日東紡などの繊維素材の部会でも、妥結した9組合のうち4組合が満額(引き上げ分4%)を回答した。吉山秀樹・部門事務局長は全体の状況について「製造業の他産別と比べても遜色のない、いい数字での妥結となっている」とここまでの結果を評価した。

流通部門からは、正社員については、300人未満の妥結水準が300人以上を上回っており、短時間組合員については、昨年に比べ7.5円程度の増額となっているとの報告があった。同部門の傘下組合では、今年もイオングループ労働組合連合会に所属する組合で、先行の満額妥結が相次ぎ、多くの組合が6%を大きく超える時給引き上げ(制度昇給含め)を達成した。桂義樹・部門事務局長は、賃上げの定着や格差是正の取り組みなどについて、「我々の求めていたものが達成できている」と評価。賃金以外でも、11組合が平均で年間7日の休日増を獲得し、定年延長でも、サミットが65歳定年で合意したことなどを報告した。

総合サービス部門では、正社員の賃金について、ここまでで妥結した組合の約6割で満額以上の回答で妥結していると報告。髙井哲郎・部門事務局長は、賃金水準が低い業種が含まれていることで、高い率となっている面もあるものの、「業種間の格差是正につながる結果だ」と話した。また、同部門では、300人未満が300人以上を額、率ともに上回っており、フードサービス、インフラサービス、ホテル・レジャーでいいスタートが切れたとの報告があった。

短時間組合員の賃金引き上げ額が10年連続で正社員組合員を上回る

UAゼンセンは19日に2025労働条件闘争の「第二のヤマ場時点(同日午前10時時点)」での妥結状況を発表した。正社員組合員(183組合)と短時間組合員(115組合)、契約社員組合員(24組合)の妥結内容をまとめた(合計87万人強の組合員)。

それによると、正社員組合員の制度昇給やベアなどの「総合計」での引き上げ額の加重平均(29万7,123人)は1万7,149円、引き上げ率は5.38%。賃金体系維持が明確な組合の賃金引き上げ分の加重平均(21万2,397人)は1万2,237円、率で3.80%となっている。

短時間組合員の「総合計」(時給)は、引き上げ額が加重平均(57万2,726人)で73.8円、率は6.37%。「第二のヤマ場」時点での短時間組合員の「総合計」は、10年連続で正社員組合員の「総合計」を上回った。なお、契約社員組合員の「総合計」は、加重平均で 1万2,260 円(5.15%)の引き上げとなっている。

一方、規模別では、300人未満の組合の「総合計」が1万7,292円(5.73%)と、300人以上の組合の1万7,145円(5.37%)より高い。

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