全体平均の賃上げ獲得額はほぼ前年並み/金属労協の集中回答日の賃上げ獲得状況

2025年3月26日 調査部

自動車総連、電機機合、JAM、基幹労連、全電線の5つの産業別労組でつくる金属労協(JCM、金子晃浩議長)が今春闘における賃上げの集中回答日に設定した3月12日、大手企業労組に対する経営側からの回答が一斉に示された。同日の午後1時から開催した第6回戦術委員会は、同時点で回答を引き出した50組合すべてがベアなどの賃上げを獲得し、賃上げ額の平均は1万4,566円とほぼ昨年と同水準となったことから、「回答は、生活不安を払しょくし、金属産業の現場力・競争力を高め、経済の好循環を実現する原動力となり得るなど、労使の社会的な役割を果たすものであると受け止める」と評価した。

最終的な集計対象組合の平均賃上げ獲得額は1万4,598円

金属労協が公表している13日午前10時時点での回答集計をみると、集中回答日に設定した12日までに回答を引き出す「集計対象組合」53組合のすべてがベアなどの賃上げ(賃金改善分)を獲得している。53組合の賃上げ獲得額の単純平均は1万4,598円で、集中回答日の昼の時点(1万4,566円)からその水準はあまり変わっていない。

企業内最低賃金についてみると、今次闘争では集計対象組合のうち30組合が要求を行い、33組合で水準引き上げを行うことになった。平均引き上げ額は1万6,402円で、昨年の最終結果である1万5,546円を上回るとともに、2014年以降で最も高い引き上げ額となっている。

第6回戦術委員会の確認事項は、12日午後1時時点の企業内最低賃金の結果については、「企業内最低賃金は、特定最低賃金の取り組みを通じて、未組織労働者・非正規雇用で働く労働者の賃金の底上げにつながっている。今後の交渉・協議で決定する組合においても、労働組合の社会的責任を果たし、金属産業の魅力を高めるため、初任給水準準拠を基本に最大限の引き上げを図る」とした。

経営側は「最終盤まで厳しい姿勢を崩さず」と金子議長

集中回答日の午後に開催された記者会見で、金子議長(自動車総連会長)は、今次交渉での経営側の姿勢について「足元の情勢や国際情勢、産業が大変革期にあることなどの先行き不透明感を背景に、最終盤まで厳しい姿勢を崩すことはなかった」と述べる一方、「我々が実感している生活負担や、産業や企業の魅力を高めていかなければならないといった考えには非常に理解を示した」と振り返った。

獲得した賃上げの水準については、「物価上昇分を上回る高い水準」だと評価し、「組合員の生活不安の払拭、金属産業の現場で現場力・競争力を高めている組合員の頑張りや、経済の好循環の原動力になるものであり、それを通じて日本経済をけん引する労使の社会的責任も果たしている」と話した。

「昨年との差ではなく、今年の絶対額の高さをみてほしい」(金子議長)

質疑応答で、昨年の回答水準を超えなかった点を問われた金子議長は、「今年は絶対水準でまず実質賃金を確保したうえで、さらにそれに上積みしていくと(方針策定時は)議論したが、(今日の回答水準は)実質賃金を十分に超えている。昨年との額の差をみるのではなく、絶対額の高さを見てほしい」と強調。単年度の結果だけに着目するのではなく、「毎年、賃金を引き上げていくことが大事だ」などと語った。

また、金子議長は、回答額を中央値でみれば昨年を上回っていると話した。昨年は、鉄鋼大手が、その前年の2023年度賃金改善実績額の水準も考慮して、3万円~3万5,000円の高額ベアを獲得したため、それが昨年の平均額を押し上げた面はある。

記者会見は、連合の金属部門共闘連絡会としての発表も兼ねていることから、連合の仁平章・総合政策推進局長も同席した。仁平総合局長は「いいスタートが切れた」とし、後続の中小組合に対して「高い水準での波及を期待したい」と語った。