33年ぶりに中小組合の賃上げ率が5%以上に/連合・2025春季生活闘争の先行回答集計結果

2025年3月26日 調査

連合(芳野友子会長)は14日、2025春季生活闘争における先行組合の回答引き出しのヤマ場(11日~13日)を終え、14日午前10時時点の第1回回答集計結果を発表するとともに、記者会見を開いた。平均賃金方式での定昇相当込みの賃上げ額(加重平均)は1万7,828円で、昨年同時期より1,359円高い水準。率は5.46%で、昨年同時期を0.18ポイント上回った。300人未満の組合の賃上げ率が5.09%となり、1992年以来33年ぶりの5%台を記録。芳野会長は「新たなステージの定着に向けて良いスタートが切れた」と話した。

「300人以上」の賃上げ率も昨年比増で5.47%

14日午前10時時点の第1回回答集計結果によると、平均賃金方式では、集計組合数は760組合で、集計組合員数は153万1,258人となっている。

平均賃金方式での定昇相当込みの賃上げ額の加重平均は1万7,828円で、率にして5.46%。規模別にみると、「300人未満」は、額が昨年同時期を2,408円上回る1万4,320円で、率は0.67ポイント上回る5.09%。「300人以上」は、額が昨年同時期を1,316円上回る1万7,925円で、率は0.17ポイント上回る5.47%となっている。

ベアなどの「賃上げ分」は3.84%で過去最高の水準

ベアや賃金改善などの「賃上げ分」がわかる649組合(137万1,064人)で、「賃上げ分」の加重平均をみると、昨年同時期を1,064円(0.14ポイント)上回る1万2,571円(3.84%)となり、「賃上げ分」が明確にわかる組合の集計を開始した2015年闘争以降で最も高い水準となっている。

これについても規模別にみると、「300人未満」は同1,898円増(0.64ポイント増)の1万286円(3.62%)、「300人以上」が同1,041円増(0.13ポイント増)の1万2,627円(3.85%)となり、「300人未満」でも3%を大きく上回る引き上げ率となっている。

時給引き上げは75.39円で昨年比4.29円増

有期・短時間・契約等労働者の賃上げの回答状況をみると、時給では、98組合(50万5,768人)の集計で、賃上げ額(加重平均)が、昨年同時期を4.29円(0.03ポイント)上回る75.39円(6.50%)。引き上げ率は6%を大きく超えるとともに、一般組合員の引き上げ率(5.46%)を1ポイント以上、上回った。

月給の賃上げ額(加重平均)は、15組合(7,460人)の集計で、昨年同時期を2,752円下回る1万2,670円(5.30%)となっている。

「労使で人への投資の拡充が不可欠との認識を深めた」(芳野会長)

同日の記者会見で芳野会長は、集計結果をうけて「新たなステージの定着に向けて良いスタートが切れた」とし、「交渉において、労使双方が企業の持続的成長、さらには日本全体の生産性向上には人への投資の拡充が不可欠との認識を深め、真摯かつ有意義な交渉が行われたことは、来年以降の持続的な賃上げにつながる重要な意味がある」と話した。

金属の今年の中央値は1万5,000円程度

会見には、「金属」「化学・食品・製造等」「流通・サービス・金融」「インフラ・公益」「交通・運輸」の各共闘連絡会議の代表者も出席して、それぞれの業界の妥結状況を説明した。

金属共闘連絡会議の金子晃浩代表(自動車総連会長)は、12日の金属労協の集中回答日から傾向は変わっていないとし、ここまでの賃上げ獲得水準について、「過去最高の水準となった昨年と同等のレベルだ」と説明。先行組合のベアなどの賃上げ額を中央値でみれば、今年は1万5,000円程度で、昨年の1万3,000円程度を上回っていると述べた。

ゴム連合は3組合、セラミックス連合は2組合で満額回答

化学・食品・製造等共闘連絡会議の細谷俊志代表(JEC連合会長)は、UAゼンセン製造産業部門、フード連合、ゴム連合、紙パ連合、印刷労連、セラミックス連合、JEC連合のそれぞれの状況を報告した。

それによると、UAゼンセン製造産業部門では23組合で妥結し、定昇相当分込みの賃上げ額の加重平均は1万9,398円で、率にして5.65%。フード連合は、同加重平均の昨年比で2,300円程度、中小では1,700円程度のプラスとなっている。ゴム連合は3組合が満額回答を受けた。

紙パ連合では、集計可能な10組合の同加重平均は1万7,632円(5.61%)。印刷労連は、1つの組合が5.80%の賃上げ回答を受けた。セラミックス連合は2組合が妥結し、ともに満額回答となっている。JEC連合は、24組合で妥結し、同加重平均は2万6,137円、率にして6.93%。大手の先行組合では満額か満額に近い回答となっており、石油大手4社では大幅な賃上げを獲得した。

生保労連の営業職と内勤職ですでに妥結の組合も

流通・サービス・金融共闘連絡会議の永島智子代表(UAゼンセン会長)は、いずれの産別でも交渉中だとし、生保労連では営業職に関して10組合のうち6組合、内勤職で15組合のうち3組合で妥結したと報告した。UAゼンセンでは、正社員組合員の賃上げで300人以下が300人以上を上回る妥結水準となっており、また、10年連続で、パート組合員の引き上げ率が正社員組合員を上回っている状況となっていることなどを説明した。

インフラ・公益共闘連絡会議の安藤京一代表(情報労連委員長)は、インフラ産業では、産別が掲げた統一目標を上回る水準や、過去最大額となる満額回答や要求を上回る回答が見られ、「ここまでのところ、多くの組合で昨年を上回る回答を引き出している」と説明した。同時に、インフラ業界での人手不足の課題を強く訴えた。

鉄道、私鉄は物価上昇分を超える賃上げを獲得

交通・運輸共闘連絡会議の成田幸隆代表(運輸労連委員長)は、人流の業界では、国内旅行需要の回復やインバウンドの増加などによって好調に推移しており、鉄道旅客3社で大幅な賃上げや昨年実績・物価上昇を上回る水準を獲得したと説明。民間私鉄も、大手組合はすべてで、物価上昇を加味したベースアップと昨年実績を上回る賃金改善を勝ち取ったとした。航空部門については、特にグランドハンドリング関係で、人材確保対策として高い数字の回答を得ているという。

運輸労連の傘下組合では、大手組合で、要求方針である1万5,500円には届かないものの、多くの組合で前年を上回る賃金改善を獲得できているとし、現在回答が出ている大手組合の加重平均は1万3,846円で、昨年を大幅に上回っていると説明した。

第2回回答集計も賃上げ率は5%台を維持

連合は21日に「第2回回答集計結果」(19日17時時点)を公表した。それによると、平均賃金方式で回答を引き出した1,388組合の定昇相当込みの賃上げ額(加重平均)は1万7,486円、率で5.40%と5%台を維持した。第1回集計から額で342円、率も0.06ポイント低下したが、前年同時期に比べると額で1,107円、率で0.15ポイント高い。組合員数300人未満の中小724組合をみると、定昇相当込みの賃上げ額(同)は初回集計より1,032円低い1万3,288円、率も0.17ポイント下がって4.92%となった。5%を割り込んだものの、昨年同時期と比べると1,372円、0.42ポイント高い。

<連合 2025春季生活闘争 第2回回答集計結果>