3%(1万2,000円相当)の月例賃金改善を要求/NTT労組の春闘方針
2025年2月21日 調査部
NTT東西やドコモ、データなど、NTTグループ企業の労働組合でつくるNTT労働組合(鈴木克彦委員長、約14万人)は2月13日に都内で中央委員会を開き、3%(1万2,000円相当)の賃金改善を求める「2025春季生活闘争方針」を決めた。冒頭、鈴木委員長はあいさつで、「会社側と真摯な議論を尽くし、情報通信・情報サービス分野のリーディング企業としての英断を求めていく」などと述べ、要求を勝ち取る姿勢を強調した。
月例賃金・特別手当等の改善による年間収入の引き上げを
方針は、基本的考え方として「これまでの春闘総括等を勘案した上で、経済も賃金も物価も安定的に上昇する経済社会の新たなステージを定着させるための社会的役割・責任を果たすとともに、NTT労組に結集するすべての働く仲間の『底上げ』『底支え』に向けて取り組む」ことを主張。そのうえで、要求の確立にあたっては、① 分配と成長の好循環につながる持続的な賃上げ ② 組合員への適正な分配と「中期経営戦略」の着実な実行によるNTTグループ事業の持続的な成長・発展 ③ 人財の確保・定着④すべての組合員の生活向上――等を総合的に勘案し、月例賃金・特別手当等の改善による年間収入の引き上げに取り組むとした。
物価に負けない持続的な賃上げが必要
具体的には、NTT労組中央本部は、主要会社に対して「制度による昇給(査定昇給)分を除き、グレード賃金および成果手当の3%(1万2,000円相当)改善」を要求。それを受けて、各企業本部・特別支部は「対置するグループ会社等に対し、すべての雇用形態に具体的要求を確立する」こととした。
要求方針について十川雅之事務局長は、「過去2年間の厳しい労使交渉と春闘総括を踏まえた上で、① 連合・情報労連方針を勘案しつつ、特に組合員の生活向上を図るためには、物価上昇に負けない賃上げが必要 ② 経済社会の新たなステージを定着させるためには、分配と成長の好循環につながる持続的な賃上げが必要――であることを強く意識した」などと説明している。
「3%をしっかりと勝ち取りにいく『決意』の要求として提起」(十川事務局長)
NTT労組は、23春闘で「月例賃金で2%の引き上げと、生活防衛への措置として年間10万円」を要求し、正社員の月例賃金を一人平均3,300円(資格賃金700円、成果手当2,600円)引き出して決着する一方、生活防衛のための「年間10万円」の特別一時金はゼロ回答。24春闘では、月例賃金5%の引き上げを要求して、「3%以上(同1万円相当:グレード賃金700円、成果手当9,300円)の改善」で会社側と妥結した。
今回の要求は、前年の妥結額とほぼ同程度の水準となった格好。その理由について十川事務局長は、「2025春闘は、要求を実現し、すべての組合員の生活向上を図るとともに、NTT労組への信頼を取り戻し、組織強化につなげる極めて重要な闘い」と位置づけたうえで、「3%要求をしっかりと勝ち取りにいく『決意』の要求として提起した」などと強調した。
「情報通信・情報サービス分野のリーディング企業としての英断を求めていく」(鈴木委員長)
鈴木委員長はあいさつで、「過去2年間の春闘では、連合・情報労連方針を上回る方針を掲げて取り組んだものの、要求と決着内容に乖離が生じたことや情報共有のあり方等について、厳しい総括をしてきた」などと述べて、過去の経過を踏まえて今回の方針を提起したことを説明。そのうえで、「会社側と真摯な議論を尽くし、情報通信・情報サービス分野のリーディング企業としての英断を求めていく」と決意を語った。
なお、特別手当(一時金)は、昨年水準を基本に業績堅調な会社は上積みをめざす構え。そのほか、地域別法定最低賃金に上積額を加算した「情報労連最低賃金」の協定締結の維持・拡大に取り組むとともに、サプライチェーン全体で生み出した付加価値の適正配分に向けて、社会全体での公正な取引環境の実現に取り組む。
相次ぐ「満額回答」と「組合員のモチベーションの向上」を望む声
質疑では、各企業本部から、今回の月例賃金の3%要求について、前述した過去2年の春闘結果を踏まえたうえで「満額回答」と「組合員のモチベーションの向上」に強く意識して取り組むことを望む声が相次いだ。
持株グループ本部は、「組合員からは、『3%要求では、満額決着しかあり得ないのでは』『結果がでなければ組合員の組織離れにつながる』などの多くの意見と期待が出された」などと発言。ドコモグループ本部も「物価高騰による生活への影響や職場の高い期待を踏まえれば、今次春闘の妥結決着はこれ以上下げられるものではない。組合員に納得される結果を示さなければ、組織活動への危機的な影響が避けられない」として、3%改善が必達水準との認識を強調した。
満額獲得とともに基本賃金への配分も
また、東日本本部は決着後の配分交渉も見据えて、「満額獲得に合わせて、評価に偏重した配分から脱し、グレード賃金等の基本的な賃金への配分が必要」などと指摘。西日本本部からも、「『今度こそ満額を勝ち取って欲しい』『賃上げのほとんどが(評価によって差が付く)成果手当に反映されている現状で、底上げといえるのか』などの意見がある」との発言があった。
月例賃金と特別手当のトータルで人材確保に取り組む
一方、データグループ本部は、「競合他社の産別労組は人材獲得競争を踏まえ、賃上げ要求目標を高めに設定している」としたうえで、「当該労組が満額で決着した場合、NTT労組が満額決着したとしても、ここ数年で積み上げてきた賃金改善も含め、競合他社に劣後する」との現状を踏まえて、情報サービス産業での人材確保の観点から賃上げの必要性を強調した。そして、「春闘を通じて組合員・社員に賃金・特別手当でどう報いるかが重要なメッセージになる」と述べ、月例賃金と特別手当のトータルで人材確保と組合員のモチベーション向上に取り組む考えを示した。