月例賃金改善3%以上(定昇相当分含め5%以上)とする春闘方針を決定/情報労連中央委員会
2025年2月14日 調査部
NTT労組やKDDI労組、通建連合などが加盟し、情報関連組織を中心に構成する情報労連(安藤京一委員長、18万9,000人)は1月31日、都内で中央委員会を開き、2025春季生活闘争方針を決めた。月例賃金改善は24春闘同様、「定期昇給相当分の確保を前提に、3%以上(定昇相当分含め5%以上)」をめざす。安藤委員長は、「各加盟組合が産別水準を上回る要求水準を積極的に掲げて春闘を牽引ほしい」などと述べ、要求できない組合をなくすとともに、要求水準を上積みする加盟組合が春闘をリードすることに期待感を示した。
「各加盟組合が産別水準を上回る要求水準を掲げることを期待」(安藤委員長)
安藤委員長はあいさつで、昨秋に組合員を対象に実施した生活実感調査結果から、 ① 6割が家計収支において何らかの費目で支出を切り詰めている ② 2割が貯金を取り崩すなどをしないとやりくりができない ③ 仕事関連の質問では5割以上に賃金への不満がある--との実態がわかったことを紹介。こうした状況を踏まえ、2025春闘の要求水準を「昨年同様、『3%以上、定期昇給相当分を含め5%以上』に方針化した」と述べた。
さらに、要求水準の考え方について、「24春闘では、月例賃金改善の要求・妥結水準は23春闘を大きく上回ったが、把握できた平均推計値では春闘方針で掲げた定昇込み5%、ベア分3%を下回る結果となった」と振り返ったうえで、「各加盟組合が産別水準を上回る要求水準を積極的に掲げて春闘を牽引してくれることを期待するとともに、すべての組織が底上げを図り、物価高騰を上回る賃上げを実現し、産別統一水準を達成することが要諦となる」と説明。「加盟組合の状況を踏まえ、すべての加盟組合で実効ある春闘の取り組みができる結節点となる水準にした」ことを指摘し、要求できない組合をなくすことに重きを置く姿勢を強調した。
中小加盟組織の取り組みの重要性にも触れ、「労務費を含めて価格転嫁が図れる環境整備が必要になることから、各加盟組合が公正取引委員会の示す指針などを労使で共有し、連合のチェックリストを用いて取引適正化や価格転嫁の課題などを把握して適正な取り引きを促す」対応を強化することを訴えた。
一時金は年間収入の向上を図る観点で水準引き上げを
方針は、 ① 全体的な底上げ ② 格差改善 ③ 底支え ④働き方の改善 ⑤ ビジネスと人権 ⑥ 春闘のすそ野を広げる ⑦ 運動の両輪としての「政策・制度実現」――の7本を柱とする。
このうち、全体的な底上げに向けた取り組みでは、すべての加盟組合が中期的な視点から「人への投資」を継続的に促すとともに、「月例賃金改善については、定期昇給相当分(賃金カーブ維持相当分)の確保を前提に、3%以上(定期昇給相当分を含め5%以上)」としたうえで、「各単組の置かれた状況等を踏まえつつ、積極的な要求によるさらなる賃上げをめざす」とした。
一時金は、「年間収入の向上を図る観点から、水準の引き上げをめざす」としている。
「パートナーシップ構築宣言」への参画や「取引適正化」の働きかけを強化
格差是正については、まずサプライチェーン全体の成長と発展に向けて、すべての加盟組合が、「対置する企業の『パートナーシップ構築宣言』への参画や『労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針』の周知・浸透」を実施。あわせて、「労使協議会等を通じて対置する企業の現状や課題を把握し、『取引の適正化』についての職場第一線までの働きかけを強化する」ことをあげた。情報労連によると、「パートナーシップ構築宣言」については、現状で約140社から賛同を得ているという。
企業規模間の格差是正では、「中小企業に対置する加盟組合は、連合が示す『企業規模間格差是正にむけた目標水準』および情報労連『2025春闘・賃金水準指標』等を踏まえ、賃金の引き上げをめざす」構え。さらに、中小企業を取り巻く厳しい経営環境を考慮に入れて、「人手不足への対処および公的助成措置等の活用などについても、労使で積極的に論議し、労働条件を含めたよりよい職場づくりに取り組む」としている。
個別賃金方式で「最低到達目標水準」と「めざすべき水準」の6銘柄を提示
情報労連の「2025春闘・賃金水準指標」は、2024年度に実施した「総合労働条件調査」の「ポイント別賃金水準(モデル賃金)」や「情報労連賃金実態調査」の結果等を踏まえ、個別賃金方式で標準労働者の6つの個別銘柄(年齢ポイント)で「最低到達目標水準」と「めざすべき水準」を提示している。前者は、加盟組合のなかで賃金水準の低位にある組合が、最低でもこの水準を超えるとの考え方で設定したもの。後者は、既に中位にある組合が、より高い水準をめざすための指標になっている。
具体的には、最低到達目標水準(所定内賃金)は、18歳(勤続年数0年):17万7,000円(前年比5,000円増)、25歳(同7年):20万8,000円(同6,000円増)、30歳(同12年):23万7,000円(同7,000円増)、35歳(同17年):26万6,000円(同8,000円増)、40歳(同22年):29万1,000円(同8,000円増)、45歳(同27年):31万9,000円(同9,000円増)。めざすべき水準(所定内賃金)は、18歳:18万5,000円(前年比5,000円増)、25歳:23万5,000円(同7,000円増)、30歳:28万6,000円(同8,000円増)、35歳:33万5,000円(同1万円増)、40歳:37万2,000円(同1万1,000円増)、45歳:39万6,000円(同1万2,000円増)をあげている。
なお、連合の「企業規模間格差是正にむけた目標水準」は、30歳が27万9,000円、35歳が30万3,000円。最低到達基準も定めており、30歳は23万8,000円、35歳は25万2,000円となっている。
有期契約等労働者の賃金は「経験5年相当で時給1,400円以上」をめざす
雇用形態間の是正是正では、有期契約等労働者の賃金が「フルタイム労働者と同等に能力の高まりに応じた処遇」になるよう取り組む。具体的には、「賃金カーブが描ける昇給ルールの導入や賃上げ・昇給等により、経験5年相当で時給1,400円以上」をめざす。また、男女間賃金格差の是正に向けては、すべての加盟組合が「男女別の賃金実態の把握を行うとともに、課題を分析し、必要な改善につなげる」などの考えを示している。
底支えについては、最低賃金協定を未組織労働者も含めたすべての働く仲間のセーフティネットと位置づけ、すべての加盟組合が最低保障賃金の引き上げに向けて「情報労連最低賃金協定」もしくは「企業内最低賃金協定」の締結に取り組む考え。前者の締結に向けては、「当該組織と連携し、法定最賃近傍で働く仲間の底上げに向けて取り組む」こととし、2025年10月に改定される法定最低賃金に加算する上積額(1円~9円)を要求する。後者の締結をめざす組織は、当該企業の実態および連合が掲げる水準 (時給1,250円以上)を踏まえて要求水準を検討する。
労使で職場実態を踏まえた「つながらない権利」ルール化の議論を
一方、方針は、「すべての働く仲間の立場にたった働き方」の実現に向けて、労働時間の適正化やつながらない権利、人材育成と教育訓練の充実、60歳以降の雇用などの取り組みも列記している。
労働時間については、加盟組合は自組織の実態を点検し、「年間所定労働時間2,000時間以下」を最低到達目標、「年間所定労働時間1,800時間以下」をめざすべき水準などとする「情報労連・時短目標」を踏まえた労働時間の適正化に取り組むとともに、年間休日の拡充を図るなどの取り組みを継続する。
さらに、デジタル化の進展に伴う働き方の多様化等が進むなか、心身の健康維持や長時間労働の抑制、生活時間の確保などの観点から、「つながらない権利(勤務時間外の連絡ルール)」の確立にも取り組む。具体的には、職場実態を踏まえつつ、 ① 使用者、従業員ともに勤務時間外のメール送付等の原則禁止 ② 原則外(緊急性の高いもの等)の場合の扱い ③ 従業員が勤務時間外におけるメールや電話等に、原則応対する必要がないこと、および対応しなかったことを理由に人事評価等において不利益扱いしないことの確保 ④ 勤務時間外における社内システムへのアクセス制限 ⑤ 時間外・休日・深夜労働に対する使用者による許可制の徹底 ⑥ 勤務間インターバルの確保 ⑦ 年次有給休暇の取得促進 ⑧ 長時間労働等を行う労働者への注意喚起――の事項を参考に労使間で論議を進める。
人材育成・教育訓練の充実や70歳まで雇用されて就労できる環境づくりも
人材育成と教育訓練については、「労働者の技術・技能の向上やキャリア形成に資することはもちろん、企業の持続的な発展にも資する重要な取り組み」として、環境整備に向けた労使協議を推進。60歳以降の雇用では、「高齢期の労働者がやりがいを持ち、健康で安心して安定的に働くことができる環境をめざすとともに、希望者全員が70歳まで『雇用されて就労』できるように取り組む」ことなどを明記している。
要求については、2月末までに全国単組が要求書を提出。連合が設定するヤマ場(3月11~13日)を踏まえ、3月12日を情報労連集中回答日に設定する。