賃上げ要求5%以上、中小は1万8,000円(6%)以上を目安とする2025春季生活闘争方針を決定/連合の中央委員会

2024年12月4日 調査部

連合(芳野友子会長、681万7000人)は11月28日、千葉県浦安市で中央委員会を開き、2025春季生活闘争方針を決定した。賃上げ要求指標について、ベアなどの賃上げ分 3%以上、定昇相当分を含め5%以上を目安に掲げ、中小組合の指標では、格差是正分1%を加えて1万8,000円・6%以上とした。芳野会長はあいさつで、「2025春季生活闘争の肝は、賃金も経済も物価も安定した巡航軌道に乗せることだ」と述べて、賃上げの流れを継続させることが豊かさを実感できる社会につながるとの考えを強調した。

すべての働く人の持続的な生活向上をはかる

方針は冒頭で、前回の2024闘争について「“ステージ転換”に向けた大きな一歩を踏み出した」と振り返ったうえで、「2025闘争では、四半世紀に及ぶ慢性デフレに終止符を打ち、動き始めた賃金、経済、物価を安定した巡航軌道に乗せる年としなければならない」とし、「連合は、すべての働く人の持続的な生活向上をはかり、新たなステージをわが国に定着させることをめざす」と強調している。

2024闘争では、賃上げの最終集計結果(加重平均)が5.10%となり、33年ぶりの5%台を達成したが、方針は「生活が向上したと実感している人は少数にとどまり、個人消費は低迷している」とし、「それは、物価高が勤労者家計を圧迫してきたことに加えて、中小企業や適切な価格転嫁・適正取引が進んでいない産業などで働く多くの仲間にこの流れが十分に波及していないことも要因の1つ」だと分析。

賃上げの広がりと格差是正、適切な価格転嫁が好循環実現のカギ

「賃上げと適切な価格転嫁・適正取引のすそ野が広がらなければ、デフレに後戻りする懸念すらある」と危機感をにじませながら、「『賃金も物価も上がらない』という社会的規範(ノルム)を変えるのは今」だと強調し、「ノルムを変えることで日本経済の体温を欧米並みに温め、実質賃金が継続的に上昇することで個人消費を拡大し、賃金と物価の好循環を実現する必要がある。そのカギの1つが、賃上げの広がりと格差是正」だと指摘した。

また、もう1つのカギとして、「適切な価格転嫁・適正取引の徹底、製品・サービスと労働の価値を高め認め合う取引慣行の醸成」をあげて、「『人への投資』をより一層積極的に行うとともに、国内投資の促進とサプライチェーン全体を見据えた産業基盤の強化により、日本全体の生産性を引き上げ、国際収支を改善し、持続的な生活向上の実現をめざす」などと強調した。

中小労組は格差是正分を積極的に要求

具体的な要求目標をみると、10月18日の中央執行委員会で提起した方針のたたき台である「基本構想」で示した引き上げ率・額から、変更はなかった。産業相場や地域相場を引き上げていく「底上げ」のための要求指標では、「経済社会の新たなステージを定着させるべく、全力で賃上げに取り組み、社会全体への波及をめざす」としたうえで、「全体の賃上げの目安は、賃上げ分 3%以上、定昇相当分(賃金カーブ維持相当分)を含め5%以上」と掲げるとともに、「中小労組などは格差是正分を積極的に要求する」とした。定昇相当分を含めて5%以上とする内容は2024方針と同じだ。

企業規模間、雇用形態間、男女間の格差を是正する「格差是正」の要求指標をみていくと、まず、規模間格差是正に向けての「到達目標水準」は、35歳を30万3,000円、30歳を27万9,000円とし、「最低到達水準」を35歳25万2,000円、30歳23万8,000円と設定した。次に「雇用形態間格差是正」の要求指標をみると、有期・短時間・契約等で働く者の賃金について、「賃上げ・昇給等により、経験5年相当で時給1,400円以上をめざす」とした。

産業相場を下支えするための「底支え」の要求指標は、「企業内のすべての労働者を対象に協定を締結する」とし、締結水準は「時給1,250円以上をめざす」とした。

基本構想で率・額の順だった表記を額・率に修正

中小組合の取り組みでは、すべての中小組合が賃金カーブ維持分を確保したうえで、自組合の賃金と、連合が示した指標などの参考データを比較しながら、「その水準の到達に必要な額を加えた総額で賃金引き上げを求める。また、獲得した賃金改善原資の各賃金項目への配分等にも積極的に関与する」と明記した。

中小は賃金実態が把握できないなどの事情がある場合も多いが、その場合は「賃金要求指標パッケージの目標値に格差是正分 1%以上を加え、1万8,000 円以上・6%以上を目安とする」とした。なお、「基本構想」では、率、金額の順の記載だったが、「しっかりとした額を先に出すべきだ」という中央討論集会(11月1日)での要望もあり、金額表示を前にしている。

雇用形態間の取り組みでは、地域別最低賃金の引き上げ率を上回る賃金引き上げに取り組むとともに、前述の「雇用形態間格差是正」の要求指標で取り組むなどとした。

年次有給休暇100%取得や「つながらない権利」を意識したルール整備に取り組む

働き方の改善では、労働時間や均等・均衡待遇、人材育成、高齢者雇用などについて掲げており、このうち労働時間については「年次有給休暇の100%取得」や「勤務間インターバル制度の導入」、「『つながらない権利』を意識した就業時間外の連絡ルール整備」などに取り組むとしている。高齢者雇用では、60歳~65歳までについては「定年引上げを基軸に取り組む」とし、65歳以降については「原則として、希望者全員が『雇用されて就労』できるように取り組む」などとした。なお、高齢期の処遇のあり方として、「年齢にかかわりなく高いモチベーションを持って働くことができるよう、働きの価値にふさわしい処遇を確立する」ことも掲げている。

ジェンダー平等・多様性の推進では、女性活躍推進法・男女雇用機会均等法の違反がないかどうかの確認とともに、女性の昇進・昇格の遅れ、仕事の配置での男女格差がないかなどの実態について点検を行い、改善をはかるとしている。

闘争を通じて集団的労使関係の強化を

このほか、方針は、連合登録人員の減少や組合が過半数を維持できない事業場の増加を考慮し、春季生活闘争を通じての集団的労使関係の強化・構築も打ち出している。

2023年以降、登録人員が 700万人を割り込んでいる状況を指摘したうえで、「事業場においては過半数維持に対する危機感と加盟組合における交渉力維持・強化が危惧される」として、「春季生活闘争の機会を捉まえ、職場討議や労使交渉を活用し、組合員の減少に歯止めをかけ、組織拡大に転じる取り組みを強化」する考えを提示。構成組織は、「加盟組合、事業場単位での過半数要件を満たしているか、徹底した確認を行う」とともに、過半数に満たない組織での「過半数代表制の適切な運用確認」と「組織拡大につなげる対策を講じる」としている。

「25春闘の肝は賃金も経済も物価も安定した巡航軌道に乗せること」(芳野会長)

中央委員会であいさつした芳野会長は「この数年、確実に賃上げが続いてきたことは、低空飛行から抜け出すチャンス」とする一方で、賃上げの動きが「一部の層、一部の人たちだけのものであってはならない」ことに言及。「全員揃って豊かにならないと、国は決して繁栄しないことを胸に刻んで取り組みを進める必要がある」と訴えた。

そのうえで、「2025春季生活闘争の肝は、賃金も経済も物価も安定した巡航軌道に乗せることだ」と話し、一丸となって賃上げに取り組む決意を表明した。

先行組合回答ゾーンは3月10日~14日に設定

闘争の進め方では、「原則として2月末までに要求を行う」とし、3月にヤマ場を設定する日程を提示。例年どおり、「金属」「化学・食品・製造等」「流通・サービス・金融」「インフラ・公益」「交通・運輸」の5つの部門別共闘連絡会議を設置し、会合を適宜開いて有期・短時間・契約等の雇用形態で働く労働者も含めた賃上げや働き方の改善、中小組合への支援状況などについて情報交換と連携をはかるとしている。

中央委員会後には、「共闘連絡会議」の「第1回全体代表者会議」を開催。回答ゾーンについて、先行組合回答ゾーンを3月10日(月)~14日(金)とし、ヤマ場を同11日(火)~13日(木)とすることを確認した。3月月内決着回答ゾーンは同15日(土)~31日(月)としている。