月3万2,000円・時給200円を要求額論議のスタート台に/国民春闘共闘委の25春闘構想

2024年10月30日 調査部

全労連などでつくる国民春闘共闘委員会(代表幹事:秋山正臣全労連議長)は10月18日、都内で年次総会を開き、2025年の国民春闘方針構想を確認した。賃上げ要求基準は、前年の要求より月額で2,000円、時給も10円高い「月3万2,000円(10%以上)、時給200円」を掲げている。構想は来月下旬の国民春闘討論集会で議論され、年明けに正式決定する。

ジェンダー平等推進の視点で組合員や労働者との「対話と学びあい」を広げる

構想は25春闘に向けて、① すべての労働者の大幅賃上げ・底上げの実現 ② 労働時間短縮の実現、長時間労働や人手不足の解消 ③ 公共と社会保障の再生・拡充――などの要求に重点を置く方針を明記。これらの要求を実現させる「最大の力は、『組合員の主体的な参加による春闘』、『たたかう労働組合の仲間が増えること』にこそある」として、「すべてのたたかいにジェンダー平等推進の視点を位置づけ、組合員や労働者との『対話と学びあい』を徹底的に広げる」姿勢を強調している。

冒頭、秋山議長はあいさつで、27年ぶりに1万円超(1万163円、加重平均)の賃上げとなった24春闘について、「たたかってこその労働組合、労働組合のバージョンアップを図ってきたことによる大きな成果だ」と評価。その一方で、「生活改善につながるほどの賃上げではなかったことも事実だ」と述べ、25春闘では、「ジェンダー平等を基礎として、大幅賃金引上げ、労働時間短縮、人員増の実現などを目指していく」考えを示した。

最低賃金はいますぐ全国一律1,500円に

柱となる賃上げの要求基準は、「月3万2,000円(10%以上)・時給200円」を提起した。春闘共闘によると、月3万2,000円の賃上げ要求は、2023年の賃金構造基本統計調査の平均賃金(31万8,300円)の約10%(10.05%)。時間給で働く労働者の時間額200円の引き上げ要求は、同調査の短時間労働者の1時間あたりの女性労働者の時間給(1,312円)を1,500円以上にするために必要な額を設定しているという。

企業内最低賃金は「時給1,500円以上、月22万5,000円以上」を求めることとし、法定最低賃金要求は「いますぐ全国一律1,500円、めざせ1,700円」を掲げている。

1日7時間の労働時間制をめざす

さらに、労働時間・働き方については、① 所定労働時間を1日7時間、週35時間をめざす ② 時間外労働の上限は、週15時間、月45時間、年360時間までとするために、36協定の特別条項を廃止する ③ 勤務時間インターバルを24時間について連続する11時間以上とする ④ 深夜勤務や変則勤務、対人勤務の場合は、労働時間を短縮する――といった要求基準を列記している。

労組の交渉力を高めて統一行動で力合わせを

要求の実現に向けて、25国民春闘では、仲間を増やしストライキを背景にたたかうことで「労働組合の交渉力を圧倒的に高める」とともに、「産別や地域での統一した行動で力を合わせる」考え。最低賃金や公契約、公務員、ケア労働者の賃上げなど「制度や公定価格で規定される社会的な賃金の引き上げを社会的な世論を高めて実現させる」ことや、「中小企業における賃金分の価格転嫁をさせる交渉を強める」こと、国や自治体に対して「公正取引の規制を強化させる」ことなども求めていく。

職場の人手不足の課題にも取り組む。「解消には、複合的な対策が必要」だとして、① 非正規労働者に依存する低賃金構造や男女の賃金格差の解消など、賃金を抜本的に引き上げる ② 長時間労働を是正し、労働時間を短縮する ③ ハラスメントの禁止を実現させてジェンダー平等を推進する職場にしていく――などの要求を強めるという。

労組主導で賃金が上がる国への転換を

総会後の22日に開いた記者会見で黒澤幸一事務局長は、「24春闘での賃上げをふまえても、30年余りの賃上げ抑制とこの間の物価高騰のなかで実質賃金は低下し続けており、厳しい状況から脱することができていないのが今の労働者の実態だ」と指摘。25春闘では、「労働組合主導による、すべての労働者の大幅賃上げ・底上げを実現し、日本を賃金が上がる国に転換させる」などと訴えた。

今後、11月24日、25日に開かれる国民春闘討論集会で議論を深め、意見集約の上、来年1月16日の単産・地方代表者会議で2025国民春闘方針を正式決定する予定。