被災地自治体職員の8割超が地震以降に業務量・労働時間が増えたと実感/自治労石川県本部の被災自治体メンタルヘルス実態調査

2024年9月11日 調査部

能登地震発生以降、被災自治体で業務量や労働時間が増えたと感じる割合が8割超に――自治労(石上千博委員長、71万7,000人)の石川県本部が実施した「2024年能登半島地震による被災自治体におけるメンタルヘルス等に関する実態調査」では、被災自治体職員の過酷な労働実態が明らかとなった。調査結果によると、退職を考えた人が約6割、精神的不調を訴える人も45.9%に及んでいる。カスタマーハラスメントについては、7割以上が被害を受けた・見聞きしたと回答。うち9割以上が復旧・復興の妨げになると感じており、自治労石川県本部は、人手不足の解消と法的対応も含めた対応の強化を訴えた。

地震以降に仕事を辞めたいと感じた割合は6割近くに

調査は、自治労石川県本部傘下組合5単組(珠洲市、輪島市、七尾市、穴水町、能都町の各職員組合)の組合員を対象に、WEBアンケートを活用して実施。調査期間は2024年7月31日~8月14日で667人中211人(31.6%)から回答を得ている。

はじめに、2024年能登半島地震以降の状況についてみていくと、地震以降、仕事を辞めたいと思ったかについて、「ある」と回答した割合は58.1%で6割近くにのぼっている。その理由について自由記述で尋ねたところ、「家を失ったため」「安全な地域に避難したいため」など、震災によって日常生活に影響が及んでいる回答や、「災害対応が激務(長時間労働、業務量の増加)」「普段の仕事と震災の仕事の両方をしなければならないから」など、災害対応が影響している回答が多く寄せられた。

半数前後が身体的あるいは精神的な不調をかかえる

地震以降の業務量、労働時間の変化についてそれぞれみると、業務量は「非常に増えた」が54.1%で半数を超え、「増えた」も32.1%になり、合わせた8割超で業務量が増えたと実感。労働時間も「非常に増えた」(47.6%)、「増えた」(31.0%)を合わせた約8割で増えたと感じている。業務量・労働時間ともに、増えた理由について自由記述で尋ねたところ、「人員が増えず、震災業務だけが増えている」「通常の勤務時間内では業務を完遂できないため」など、人手不足のなか避難所運営や災害に関する窓口・申請業務などの対応に追われ、業務量や労働時間が増えている声が寄せられた。

地震以降、身体的不調・精神的不調があるか、それぞれ尋ねると、「ある」の回答割合は、身体的不調が51.4%、精神的不調が45.9%にのぼった。

45%はサービス残業があると回答

次に、労働条件・職場環境についてみていくと、職場の人員が足りているかについて、「足りていない」と回答した割合は71.0%と、7割超にのぼっている。

休日勤務が「ほとんどない」のは全体の3分の1に過ぎず、「毎週」(15.3%)や「月4回以上」(13.9%)といった頻度で出勤している職員も少なくない。そうしたなかで、いわゆる「過労死ライン」を超える時間外勤務が「ある」とする割合も52.4%と半数を上回った。

サービス残業の状況をみると45.0%でサービス残業が「ある」と回答。その理由を自由記述で尋ねると、「日中は住民への対応や電話対応があり、落ち着いて仕事ができるのが定時以降」「残業を申告できない雰囲気」といった回答のほか、「震災がなければ通常でできる業務だから、時間外として申請しにくい」といった地震の影響によるコメントも寄せられた。

年次有給休暇・特別休暇の取得状況については、「取得できる」(40.2%)、「時々取得できる」(42.1%)がそれぞれ4割を超える一方、「ほとんど取得できない」も17.7%に及んだ。

改善を求めることでは「人員配置の見直し」がトップ

調査は、住民からの執拗なクレームや不当要求行為(以下、カスタマ-ハラスメント)があるかについても尋ねている。その内容をみると、「ある」が41.3%で最も割合が高い。以下、「自分はないが直接見聞きしたことがある」が21.2%、「他の部署から聞いたことがある」が13.0%となっている。7割以上が、カスタマーハラスメントの被害を受けたり、見聞きしているにもかかわらず、こうした行為への対策(マニュアルや研修の実施など)が「ない」は67.5%を占める。

そこで、カスタマーハラスメントが復旧・復興の妨げになると思うか尋ねたところ、「そう思う」が64.9%、「ややそう思う」が29.3%となり、合わせた9割超で妨げになると感じていた。

安心して働き続けるために、組合に対して最も改善を求めることをみると(複数回答)、「人員配置の見直し」が74.6%で最も割合が高く、次いで「カスタマーハラスメント対策」(45.4%)、「休暇の取得環境向上」(38.0%)、「時間外勤務の削減」(35.6%)、「メンタルヘルス対策」(35.1%)などの順で高くなっている。

国が先頭となって公務職場の人員の見直しを

自治労石川県本部は今回の結果について、「様々な問題の根幹にあるのは現場の人手不足」として、国が先頭となり公務職場の人員を見直す必要性を指摘。また、カスタマーハラスメントについては「現場任せの対応となっており、法的対応も含め対応の強化が急務」と訴えた。