「対話と学び合い」と「たたかう労働組合のバージョンアップ」の発展で要求実現をはかる/全労連定期大会

2024年8月7日 調査部

全労連(小畑雅子議長、68万3,000人)は7月25日から3日間、都内でオンライン併用の定期大会を開き、今後2年間の運動方針を決めた。方針は、①賃上げ・労働時間短縮、最低賃金、社会的な賃金闘争、労働基準法の骨抜きを許さない②「公共の再生」で持続可能な地域循環型の経済・社会の確立、新自由主義経済の転換をせまる③平和と憲法を守る、憲法をいかす政治への転換をはかる――の3つの要求の柱を提起。その実現に向けて、「対話と学び合い」と「たたかう労働組合のバージョンアップ」のさらなる発展などを打ち出している。役員改選では、小畑議長が退任。新議長に秋山正臣副議長が就任した。

全ての運動にジェンダー平等と最低規制強化の視点を

方針は、はじめに「この定期大会で提起したいこと」として、①賃上げ・労働時間短縮、最低賃金、社会的な賃金闘争、労働基準法の骨抜きを許さない②「公共の再生」で持続可能な地域循環型の経済・社会の確立、新自由主義経済の転換をせまる③平和と憲法を守る、憲法をいかす政治への転換をはかる――の3つの要求の柱を提起。その実現に向けて、組合員や労働者が「対話と学びあい」を重ねることで課題を運動への結集を強め、「組織自らが強くなることで要求実現をはかろう」との思いを込めて掲げた「『たたかう労働組合のバージョンアップ』の方針のさらなる発展と実践を広げる」姿勢を示している。

具体的には、「要求討議を徹底して強化することで自らの要求としてたたかう」ことや、「春闘に勝利して仲間を増やすのではなく『仲間を増やして春闘に勝利する』」こと、「組合員が自覚的に参加する労働運動の構築をはかるなど、たたかいのなかで組織が強く大きくなる」などの運動を展開。全ての取り組みにジェンダー平等の視点を取り入れるとともに、最低賃金や労働時間規制の強化などの最低規制強化の視点を位置付けることを運動の基調に据えている。

最低基準は月額24~25万円、時間額1,500円以上の収入

柱の一つ目に掲げた「賃上げ・労働時間短縮、最低賃金、社会的な賃金闘争」では、「すべての労働者とその家族に、人間らしい働き方と生活が保障されるよう、労働組合の社会的な役割を発揮する」ことを明記した。

具体的には、「職場や地域で最も困難な立場、低賃金・不安定雇用が強いられる非正規労働者や女性労働者の生活改善、雇用の安定に寄り添うことに最善をつくす労働組合でこそ社会的影響力とその地位を確保することができる」として、「賃金、労働条件の最低規制の強化とあわせて、非正規労働者・女性の賃金引き上げ、労働条件の改善をはかる」取り組みを進める。特に、賃金の底上げについては、全労連の最低生計費試算調査の結果を踏まえた賃金の最低基準(月額24~25万円、時間額1,500円)以上の収入が得られるよう、闘争を強化する。

「物価高騰を乗り越え、生活できる賃金への大幅引き上げ・底上げを」(小畑議長)

大会の冒頭あいさつで、小畑議長は24春闘の結果について「『賃金が下がり続ける国から、賃金が上がる国への転換』をめざすとりくみを単産・地方組織で力を合わせてすすめ、単純平均で26年ぶりとなる8,000円台、8,503円、3.23%、加重平均では27年ぶりとなる5ケタ、1万163円、3.49%となる賃上げを勝ち取ってきた」などと評価した。その一方で、「5月の毎月勤労統計においても実質賃金は上がらず、前年比マイナス1.4%、26カ月連続で減少となるなど、3%程度の賃上げでは急激な物価高騰に追い付かない状況となっている」と述べ、25春闘に向けて、「物価高騰を乗り越え、生活できる賃金への大幅引き上げ・底上げを実現する運動をさらに大きくしていこう」と呼びかけた。

公共職場で働く労働者の労働条件改善やアウトソーシングされた事業の再公営化を

二つ目の「公共の再生」については、長引くコロナ禍で「私たちの生活と地域の維持に欠かせない『公共』が、あまりに脆弱な状況にあることが明らかになった」としたうえで、「最も困難なことは、公共にかかわる職場で働く労働者の働く権利が奪われてきたことにある」と強調。公共職場で働く労働者の労働条件の抜本的な改善や「公共性が高く、民営化になじまない事業や自治体でアウトソーシングされた事業の『再公営化』をもとめる政策づくり」、物価の高騰から生活と地域を守るとりくみなどの運動を構築することで、「すべての地域が元気で活性化されることをめざし、『地域』を基礎に労働組合と地域住民の共同で前進をめざす」との考えを示した。

具体的には、コロナ災害や能登半島地震の経験から、「医療、公衆衛生、介護、福祉、保育、学校、郵便局、公共交通、通信、流通、エネルギーなど、ありとあらゆる社会生活に欠かせない公共財の多くが市場原理で効率化が優先され、災害時など必要なときにまともに機能しない事態を招いている」と主張。「地域のことは地域の住民が決定する民主主義社会の原則を取り戻す」必要性を強調している。そして、そのためには「公共にかかわる職場で働く労働者の権利も重要」だとして、「公共の職場で働く労働者の専門性を生かし、地域住民と一体となった運動」の展開を求めている。

三つ目の「平和と憲法を守る」では、「憲法改悪を阻止するたたかい」や「戦争のない平和な世界をつくる取り組み」、「核兵器のない世界をめざす取り組み」などの考え方と行動内容を列記している。

3本柱の要求実現のために「組織を大きくする」

さらに方針は、上記3つの要求を実現させるために「組織を大きくする」ことについても柱立てしている。

組織拡大に取り組みに関しては、物価の高騰と実質賃金の下落に伴う賃上げ要求の高まりや、職場の長時間労働やハラスメントの増加、業界・業務再編に伴うリストラなど、労働者を取り巻く現状をあげたうえで、「組合加入と組合づくりで問題を解決し、働き続けられる職場づくりをすすめていく必要がある」などと指摘。「対話と個人に寄りそう支援を職場・地域で強める」とともに、「地域での共闘と統一行動を展開して労働者保護、人権を守らせる取り組みを強める」方向性を打ち出した。

労働組合の組織率が下がったことで「産業、職場、地域への労働組合の影響力の低下」を懸念。「100万人全労連の回復に向け、組合員が行動に立ち上がり、非正規労働者、女性、青年の組織化と共済加入を重視」し、「単産と地方組織一体となって、組織強化と拡大に取り組む」などとしている。

新たな組織強化・拡大の4カ年計画を確認

全労連は2016年から8年間、2次にわたる組織強化・拡大の4カ年計画(2016~2019年度と2020~2023年度)を立てて、組織拡大を最重要課題に据えて取り組みを進めてきた。計画の実行にあたっては、「単産と地方組織の『総がかり』で取り組み、様々な成果が生まれた一方で、オルグする側の体制不足など組織的困難があり、当初の目標である『150万全労連』の復活を果たすことができずに至っている」。

そこで大会では、新たに「組織建設新中期計画(2024~2027年度)」を確認した。新中期計画でめざすこととして、①今後2年間を目標に組織人員数の減員に歯止めをかけ、増勢に転じる。そのための手立てを具体化し、100万人全労連の早期回復をめざす②組織拡大を全労連加盟のすべての組織で実践する。そのために請負型の労働運動を脱して、加盟組合、組織で職場の力を引き出すことのできる役員、オルガナイザーの養成をめざし、そのための研修・研究機能を具体化する③既存組織を強化し、単組では職場での「過半数組織」づくりを目標にすえる。地域では単産と地方・地域組織一体で拠点組織づくりをすすめる④特定最賃、公契約条例、労働協約の拡張適用制度の活用など単産機能を強め、地域での組織化をすすめる⑤ジェンダー平等の実現をめざす取り組みを推進し、非正規労働者、女性、若者の要求運動と組織化を重視する――などを掲げた。「労働者の自覚的、能動的な組合活動を職場からつくり、その活動の力で産別と地域組織の活性化をはかって組織拡大を成功させる」姿勢を示している。

なお、大会では、①産業別労働組合のさらなる強化・拡充をはかる展望②賃金・労働条件の改善へ国民春闘の再構築③組織強化拡大と学習・教育活動の再構築――の3つの問題提起に基づく提言をまとめた「全労連運動の新たな飛躍提言」も確認した。

新議長に秋山正臣氏を選出

役員改選では、2期4年、議長を務めた小畑雅子氏(全教)が退任し、新議長に秋山正臣副議長(国公労連)を選出した。黒澤幸一事務局長(日本医労連)は再選された。