人員増を実現させる予算確保と長時間労働是正の取り組みを/日教組中央委員会
2024年7月24日 調査部
日教組(梶原貴委員長、20万人)は7月18日に都内で中央委員会を開き、教職員の賃金改善や学校の働き方改革などを重点方針とする「当面のとりくみ」を確認した。賃金改善について、24春闘の賃上げの流れを人事院勧告につなげて「やりがいを持って働ける職場を作る」(梶原委員長)必要性を指摘。長時間労働是正とワーク・ライフ・バランスの実現に関しては、「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法(給特法)」の廃止・抜本的見直しに向けて社会的な発信を強化するとともに、夏の概算要求に向けて、人員増を実現させる予算措置の確保や長時間労働を是正する取り組みなどに注力する。
日教組は昨年の定期大会で、① 教育政策 ② 教育行財政政策 ③ 労働政策 ④ 福祉・社会保障政策 ⑤ 男女平等政策 ⑥ 組織政策――からなる「23~24年度運動方針」を確認した。「当面の取り組み」は、方針の柱の一つである労働政策について、① 公務員制度改革 ② 教職員等の賃金改善③ 長時間労働是正、ワーク・ライフ・バランスの実現 ④ 権利擁立、雇用・労働条件改善――の向こう1年間の対応を列記している。
人事院勧告を踏まえた十分な交渉・協議と合意にもとづく対応を
特に、教職員の賃金に関しては、8月に予定される2024年の人事院勧告を踏まえた公務員給与の取り扱いについて「十分な交渉・協議、合意にもとづく対応を求め、公務員連絡会・公務労協地公部会に結集しとりくむ」とともに、その後の人事委員会勧告期・秋季確定期には「月例給・一時金の引き上げをはじめとする賃金改善にむけ、人事委員会・教委・首長部局との交渉・協議」に臨む構え。そのうえで、職場討議で議論を深めて、来年2月の全国代表者会議で「25春季生活闘争方針」を決定。連合の闘争行動に参加していく考えも示している。
人事院が検討を進める「社会と公務の変化に応じた給与制度の整備」への対応にも触れ、「公務員連絡会・公務労協地公部会に結集し、人事院や総務省、人事委員会・首長部局等との交渉・協議などにとりくむ」としている
24春闘の「賃上げの流れをとめずに人事院勧告につなげる」(梶原委員長)
梶原委員長は、今春闘での連合の賃上げ最終集計結果が5.10%と33年ぶりの高水準となったことなどを紹介して、「賃上げの流れを止めてはいけない」と指摘。「これを8月の人事院勧告につなげ、意欲のある人が公務をめざし、やりがいを持って働ける職場を作らなければならない」と訴えた。前述の「社会と公務の変化に応じた給与制度の整備」についても、「生活に直結する課題として意見反映を行っていく」姿勢を強調している。
給特法の廃止・抜本的見直しに向けて社会的発信の取り組みを強化
長時間労働是正とワーク・ライフ・バランスの実現では、学校の働き方改革について「『学校の働き方改革推進委員会』での議論のもと全国連帯でのとりくみを展開」。「給特法の廃止・抜本的見直しにむけ、社会的発信を強化」する。給特法では、給料月額の4%相当の教職調整額を支給する代わり、時間外勤務手当及び休日勤務手当は支給しないとされている。また、教職員の勤務実態を把握するために実施中の「日教組24Web調査」の結果をもとに「実効性ある長時間労働是正策を求める」などとしている。
あわせて、政府にも「在校等時間による勤務時間把握・公表を求める」とともに、「具体的な業務削減と財源確保、加配教職員及びスタッフ職の確実な配置、代替教職員の配置を求め、教委との交渉・協議にとりくむ」方針だ。
梶原委員長はあいさつで、文部科学大臣の諮問機関・中央教育審議会「質の高い教師の確保特別部会」が、働き方改革や処遇改善、指導・運営体制の充実等に関する論議の最終報告である「審議のまとめ」を文部科学大臣に手交していることについて、「重要な論点である、給特法の廃止・見直しなど長時間労働を是正する直接的仕組みが盛り込まれていないのは極めて残念だ」と指摘。「たとえ、『調整額』が10%以上に引き上げられたり、他の処遇が改善されたりしたとしても、現場の長時間労働は解消されない」などと述べ、給特法の廃止・抜本的見直しを改めて強く訴えた。
長時間勤務の教職員への面接指導の実施の安全配慮義務の徹底も
さらに「当面のとりくみ」は、職場の安全衛生体制の確立に向けて、「管理職に安全配慮義務の徹底を求める。特に長時間勤務の教職員の医師との面接指導の確実な実施を求める」。労働安全衛生法にもとづき、「持ち帰り時間も含めた勤務時間管理、産業医の配置、産業保健機構の強化、衛生委員会の設置、ストレスチェック実施と分析による適切な措置などを求める」考えも示している。
公立学校共済組合が今年6月に公表したストレスチェックのデータ分析結果によると、高ストレスと判定された教職員の割合は概ね上昇傾向にあり、「『就業時間が長いほど、高ストレス者割合は高く、特に12時間以上の就労時間になると、高ストレス者割合は急激に上昇し、睡眠の状態への顕著な影響もみられた』としており、医療の面からの警鐘が鳴らされている」(梶原委員長)状況。日教組では今後、夏の概算要求に向けて、「審議のまとめ」に記載のある人員増を実現させる予算確保と長時間労働是正のためのとりくみに力を注ぐ考えだ。