賃上げは単純平均で8,318円、3.17%に/国民春闘共闘の24春闘中間総括
2024年6月21日 調査部
全労連や純中立労組懇などで構成する国民春闘共闘委員会(代表幹事:小畑雅子・全労連議長)は6月19日、都内でオンラインを併用して第2回単産地方代表者会議を開き、2024年春闘の中間総括を確認した。5月23日時点の賃上げ集計では、回答引き出し組合の単純平均が8,318円、3.17%。国民春闘共闘によると、額で1998年以来26年ぶり、率では1997年以来27年ぶりの水準。この結果について小畑代表幹事は、「26年ぶりとなる8,000円台賃上げを勝ち取ってきたが、3%程度の賃上げでは急激な物価高騰に追いつかない」などとして、今後「最低賃金・公務員賃金・ケア労働者賃金の抜本的改善を求めていく」姿勢を強調した。
加重平均は前年同期比2,471円増の8,881円(3.04%)
国民春闘共闘の第7回賃上げ集計によると、5月23日までに1,113組合が何らかの回答を引き出している。そのうち、金額もしくは率が明らかになっている有額回答を得た組合は669組合(60.1%)で、「定昇確保」などの言葉による回答を得た組合が444組合(39.9%)となっている。
有額回答を引き出した組合の単純平均(一組合あたりの平均)は8,318円(3.17%)で、前年同期と比べ1,640円増(0.62ポイント増)。組合員一人あたりの加重平均では8,881円(3.04%)となり、前年同期比で2,471円増(0.79ポイント増)となった。
さらに、前年実績との比較が可能な512組合の単純平均額をみても、金額では8,514円で前年を1,711円上回る。率で対比可能な321組合の賃上げ率も単純平均では3.20%と、こちらも前年を0.60ポイント上回る。なお、前年実績を超える回答を引き出した組合は、額で345組合、率では211組合となっている。
193組合で230回のストライキを実施(5月9日時点)
これまでの集計結果について中間総括は、有額回答を得た669組合の単純平均8,318円、3.17%の賃上げが、額で1998年以来26年ぶり、率では1997年以来27年ぶりの水準となっていることを指摘。「生計費原則に基づく大幅賃上げ・底上げ要求をかかげたたかってきた結果だ」と評価した。その一方で、「四半世紀におよぶ実質賃金低下と2020 年からの物価高騰が続くもとで、生活を支えるために最低限必要として求めた『月3万円以上、時間額190円以上、10%以上』の賃上げ要求に及ばない回答状況だ」としている。
ただし、ストライキや統一行動を背景とするたたかいの強化については、5月9日時点で1,532組合がスト権を確立し、193組合で230回のストライキを実施していることをあげ、「ストライキ戦術の強化を打ち出した22 春闘から見るとスト権を確立した組合は1.2 倍、スト実施組合は1.6 倍、回数では1.4 倍に増えている」ことを紹介。「産別闘争の強化、ストライキを背景としたたたかいの強化、年単位の粘り強いたたかいを通じて賃上げを実現させてきた」などと強調している。
非正規労働者の時間額の引き上げは47円・5.77%に
非正規労働者の賃上げ状況については、14単産220組合から469件の実績が報告されている。
時給制では227件の報告があり、そのうち引き上げ額がわかっている238件の単純平均は47円、率では45件の平均で5.77%。前年実績を額で15.5円、率では2.84ポイント上回っている。月給制では94件の報告が寄せられ、引き上げ額は88件の単純平均で5,206円、率では23件の平均で3.23%となった。こちらも前年実績を額(668円)、率(0.62ポイント)ともに上回っている。
中間総括は非正規労働者の賃上げについて、「低賃金労働者の底上げをはかり、雇用による賃金格差の是正をはかる姿勢が見られない回答」などとして、「正規労働者の賃上げを上回る引き上げを勝ち取るまでたたかい抜くこと」に加え、「均等待遇の実現や正規労働者への転換を積極的に要求していく」ことを今後の中心課題に据えた。
なお、企業内最低賃金協定の改定状況は、10単産74組合から時間額70件、日額22件、月額32件の報告があがっている。そのうち、時間額の改定では、新協定額の報告があった59件の単純平均が1,083円、日額では同14件の平均8,909円、月額は同22件の平均が18万1,030円となっている。
「24春闘の最大の特徴」は低調なケア労働者の賃上げ回答
一方、中間総括はケア労働者の賃上げ回答が低調な状況になっていることを「24春闘の最大の特徴」だと強調。「現場段階では5月を終えてもまだ有額回答を示さない経営者が多数。回答があったところでも、他産業に比べても低額回答となっている」と訴えた。賃上げ集計を産業別にみても、金融・保険業(1万9,953円・4.12%)や農林水産(1万267円・4.18%)、製造業(1万22 円・3.49%)で5桁を超えている半面、医療(7,068円・2.69%)や社会福祉・介護(7,211 円・3.11%)は回答が低く抑えられている。
「3%程度の賃上げでは急激な物価高騰に追いつかない」(小畑代表幹事)
小畑代表幹事はあいさつで、こうした24春闘の結果について、「26年ぶりとなる8,000円台、3%を超える賃上げを勝ち取ってきたが、4月の毎月勤労統計では、実質賃金は前年同月比マイナス0.7%となり、過去最長の25カ月連続で減少となるなど、3%程度の賃上げでは急激な物価高騰に追いつかない状況だ」などと指摘したうえで、「24国民春闘のたたかいの到達に確信を持つと同時に、この夏から秋に向けて最低賃金・公務員賃金・ケア労働者の賃金の抜本的改善などを求めていく」との決意を表明した。