賃上げ額の単純平均は9,593円で、高水準の回答引き出しが継続/金属労協(JCM)の3月末時点での回答状況
2024年4月5日 調査部
自動車総連、電機連合、JAM、基幹労連、全電線の5つの産別労組でつくる金属労協(JCM、金子晃浩議長)は2日、記者会見を開き、3月29日現在の賃上げの回答状況を発表した。獲得したベアや賃金改善などの賃上げ額の単純平均は9,593円で、2014年以降での最高額となっている。産別ごとの報告では、自動車総連が1日現在で賃金カーブ維持分と賃金改善分を合わせた引き上げ額が1万2,211円となっており、1976年以降での最高を記録している。
回答組合の87.8%で賃上げを獲得
金属労協の集計によると、3,062ある構成組合のうち、賃金について2,524組合が要求を提出しており、そのうちベアや賃金などの賃上げを要求したのは2,268組合(賃金要求組合比で89.9%)。要求額の単純平均をみると、全体計が1万1,991円、「1,000人以上」の組合が1万3,421円、「300~999人」が1万2,990円、「299人以下」が1万1,428円。なお、金属労協は今次闘争で、「すべての組合で1万円以上の賃上げに取り組む」ことを要求方針に掲げた。
回答状況をみると、1,227組合が回答を受けるか、回答を集約しており、うち、賃上げを獲得したのは1,077組合(回答・集約組合比で87.8%)となっている。回答額の単純平均は、全体計が、昨年同時期の5,647円を4,000円程度上回る9,593円、「1,000人以上」の組合が同6,900円を5,500円程度上回る1万2,389円、「300~999人」が同5,969円を5,000円程度上回る1万1,000円、「299人以下」が同5,082円を3,000円程度上回る8,019円となっている。
「実質賃金を改善しうる水準の獲得ができている」(金子議長)
金属労協によれば、賃上げ獲得組合の割合、賃上げ額ともに、賃上げが復活した2014年以降で最高だとしている。金子議長(自動車総連会長)は、3月13日の集中回答日からの高水準の賃上げ回答の傾向は依然として変わっていないとの認識を示しながら、「(規模別にばらつきはありながらも)実質賃金を改善しうる水準の獲得ができていると思っている。引き続き金属共闘として、組合の生活の安心確保はもちろん、金属産業の魅力の維持向上、さらには日本経済を好転させる原動力になり得る取り組みを現時点でもできている」などとコメントした。
会見に同席した連合の仁平章・総合政策推進局長は、連合のなかで金属と商業・流通の共闘連絡会が、連合全体の平均を超える回答を引き出し、平均を押し上げているなどと説明した。
自動車総連の引き上げ総額は1976年以降で最高
会見では、各産別のトップも出席し、回答状況を説明した。自動車総連の最新の回答状況を、総連が2日に発表したプレスリリース(4月1日現在)でみると、賃金カーブ維持分と賃金改善分を合わせた引き上げ額全体の総額は1万2,211円で、1976年以降で最高額となっている。賃金改善分は8,167円で、昨年同時期の水準を2,748円上回った。
300人未満の中小組合でみると、95.1%が賃金改善分を獲得。獲得額は総額で1万651円、改善分だけでみると前年同期の水準の約1.5倍となる7,053円となっており、比較可能な1995年以降の最高額となっている。金子議長は自動車総連会長の立場で、「規模にかかわらず、改善分の獲得を現時点でも図ることができている」などと評価した。
電機連合では、金属労協の集計によれば、賃上げ獲得額の平均は1万1,912円となっている。会見で神保政史委員長は、要求を提出した組合の93.4%が賃金水準の改善を果たし、80%の組合が1万円以上を獲得。1万円以上獲得組合の73%の組合が統一要求基準に設定した1万3,000円以上の改善額になっていると説明した。
JAMは300人未満の賃金改善も結成以来で最高
中小労組を多く抱えるJAMでは、賃金構造維持分を明示している単組が獲得した賃金改善分の単純平均は8,135円、300人未満の組合でみると7,270円となっており、ともにJAM結成(1999年)以来最高となっている。
会見で安河内賢弘会長は、平均賃上げで、300人未満の組合の定昇相当分込みの賃上げ率を加重平均にすると4.41%になると説明し、「中小においても物価に負けない力強いベースアップが獲得できている」と評価した。
ただ、大手と中小で格差が開いた点を課題として指摘した。その一方、同日、JAM本部で開いた記者会見で安河内会長は、中小労働者の賃金が低く押さえられている分、儲かっているのは「中小企業の経営者でもなく、取引先である大手で、不当な取引が続いている証左だ」と強調。価格転嫁など公正な取引に向けた取り組みをいっそう強化していく考えを示した。
基幹労連の賃金改善分だけで6%超に
基幹労連の津村正男委員長は、交渉単位となる288組合のうち、177組合が回答を受けており(要求組合の約64%)、賃金改善分だけの賃上げ額の単純平均は1万6,680円で、率にすると約6.1%となっていると説明。300人未満の中小組合でも1万3,214円と高い水準になっていると説明した。
全電線の佐藤裕二委員長は、回答を集約している34組合のうち、33組合が賃上げを獲得。賃金改善分の単純平均は1万1,487円となり、昨年実績の6,104円から増加したと説明した。299人以下でも1万207円となっており、「大手単組の早期決着が中小にも波及し、多くの単組で要求水準を満たす回答を引き出した」などと総括した。