9割の介護施設で2交替制の夜勤を実施/日本医労連「2023年介護施設夜勤実態調査」
2024年3月6日 調査部
介護施設の89.3%で、16時間程度の長時間勤務になることが多い「2交替制夜勤」を実施している――日本医労連(佐々木悦子委員長、約14万4,000人)の「2023年介護施設夜勤実態調査」では、介護施設で夜勤に従事する職員の過酷な労働実態が明らかになった。集計データからは、多くの施設で1人体制(ワンオペ)での夜勤が実施されており、月の夜勤回数やシフト数も依然として多く、深刻な状況であることがうかがえた。医労連は介護報酬の大幅引き上げや増員、夜勤改善を求めている。
2交替夜勤を実施する施設の87%は16時間以上勤務に
調査は、日本医労連傘下の労働組合がある介護施設(特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、グループホーム、小規模多機能型居宅介護施設・看護小規模多機能型居宅介護施設、単独型短期入所施設、介護医療院)を対象に、昨年6月の実績を尋ねたもの。2013年より毎年実施し、今年は124施設179職場の職員総数3,332人(介護職員71.6%、看護職員18.2%、その他職員10.1%)の回答を集約した。
それによると、回答施設における夜勤形態は、「2交替制」が89.3%と昨年(87.4%)に比べて1.9ポイント増加。2交替夜勤を実施する施設は2013年の本調査開始当初以来、おおむね80%台後半から90%台前半の高い水準を維持し続けている。そのほか、「3交替制」が6.3%、「変則3交替制」(通常の3交替夜勤の入り時間を前倒して行う夜勤)が2.7%、「当直と3交替の混合」が1.8%となっており、3交替夜勤はすべてを合わせても1割強にとどまった。
なお、2交替夜勤を実施する施設の87.0%(全回答施設における77.7%)が16時間以上の長時間勤務となっている。2交替(16時間以上)の割合を業態別にみると、特にグループホーム(88.0%)、小規模多機能型居宅介護施設・看護小規模多機能型居宅介護施設(85.2%)、介護老人保健施設(78.4%)で割合が高くなった。
夜勤の上限回数を定めた協定を締結している割合は6割台にとどまる
ひと月当たりの夜勤日数をみると、3交替夜勤を実施する施設では「6日以下」が52.7%、「7日」が16.4%、「8日」が23.4%となっており、8日以内に収まっている施設が9割を超えている。「9日以上」は7.4%と、昨年(14.0%)と比べて半減した。
一方、2交替夜勤を実施する施設では、42.1%が月4回を超える夜勤を実施している。業態別にみると、特にグループホーム(64.8%)、単独型短期入所施設(61.8%)で割合が高くなった。
なお、看護師は、1992年に制定された看護人材確保法の基本指針(看護師等の確保を促進するための措置に関する基本的な指針)において、離職防止対策・夜勤負担軽減のために、3交替制の場合は「複数を主として月8回以内の夜勤体制の構築」を掲げているものの、介護職には夜勤日数(回数)の上限を定めた法律・指針が存在しない。そのため、労働組合が施設と協議し、独自に上限回数の協定(夜勤協定)を結ぶことが夜勤従事者の負担軽減のために重要となるが、今回調査では夜勤協定を締結している割合は64.5%と、昨年(68.0%)を下回る結果となった。
6割の施設が職員1人体制で夜勤を実施
職場単位の夜勤配置についてみると、2交替夜勤を実施する施設の40.6%で複数体制での夜勤を実施している一方、残りの59.4%は1人体制(ワンオペ)での夜勤を実施していた。介護施設の夜勤配置は2000年に定められた「厚生労働大臣が定める夜勤を行う職員の勤務条件の関する基準」によって業態ごとに要件が示されているものの、規模が小さい施設の多いグループホームや小規模多機能型居宅介護施設・看護小規模多機能型居宅介護施設など、業態によっては要件が1人以上(グループホームの場合は1ユニットに1人以上)となっている場合もある。今回調査でも、2交替夜勤を実施する施設の夜勤配置を業態別にみると、グループホームや小規模多機能型居宅介護施設・看護小規模多機能型居宅介護施設ではすべての職場が1人体制となっており、特別養護老人ホームでも回答職場の57.1%は1人体制で夜勤を行っていた。
また、複数体制での夜勤を実施している施設でも、「施設が二階建て、三階建ての場合はフロアごとにみると、1フロアにつき1人配置となっていることもある」(日本医労連)など、完全な複数体制が取れていない実態もあることがうかがえた。
仮眠室のない施設が36.4%に
シフト数についてみると、全体の勤務シフト数は平均で5.3通りと昨年(5.5通り)から微減するも依然として多くなっており、回答施設のうち57.8%は平均5通り以上のシフト数となった。シフト数が多くなる要因として、日本医労連は「介護施設では利用者の生活リズムに合わせて介護が提供されるが、人員配置が十分でないため、勤務シフトが多様化・変則的になっている」と言及している。
また、夜勤を行うために必要な仮眠室の有無について尋ねたところ、36.4%の施設で仮眠室がないと回答。業態別にみると、特に規模が小さい施設の多い看護小規模多機能型(84.6%)や小規模多機能型(71.4%)で設置されていない割合が高くなった。
人手を増やすため賃金引き上げと働き続けられる職場にする必要性を強調/佐々木委員長
調査結果をうけ、佐々木委員長は、「介護現場は深刻な人員不足で、非常に少ない人員体制のなかで入所者・利用者の命と健康、暮らしを守るために職員が奮闘している状況。超高齢化をむかえている今、介護施設の需要は高まっているが、他産業にならぶ賃金まで引き上げるとともに、働き続けられる職場にしなければ、介護現場の人手は増えない」として、介護報酬の大幅引き上げも含めた対策や増員、夜勤改善の必要性を訴えた。