賃上げ要求額の平均が1万円を超え、2014年以降で最高水準に/金属労協の2024闘争要求状況
2024年3月6日 調査部
自動車総連、電機連合、JAM、基幹労連、全電線の5つの産業別労組でつくる金属労協(JCM、金子晃浩議長)は2月29日、2024闘争の要求状況を発表した。ベースアップ等の賃上げ(賃金改善分)を要求している組合の要求額の平均は、金属労協全体では1万2,392円で、集中回答日に回答を引き出す大手の集計対象組合だけでみると1万5,115円。それぞれベア・賃金改善が復活した2014年闘争以降で最高水準となっている。
昨年最終結果の8,280円を大きく上回る
金属労協が集中回答日に設定した3月13日に回答を引き出す集計対象組合(54組合)の2月27日現在での要求状況をみると、賃上げ(賃金改善分)を要求したのは52組合で、要求額の単純平均は1万5,115円。昨年の最終結果8,280円を大きく上回るとともに、ベアや賃金改善が復活した2014年以降で最高となった。
全体集計でみると、構成組合(3,062組合)のうち1,653組合が賃金についての要求提出を終えた。そのうち、1,484組合(対要求組合比89.8%)が賃上げを要求。要求額の単純平均は1万2,392円で、ほぼ前年同期にあたる昨年3月初旬の集計結果である7,819円を大きく上回るとともに、2014年以降で最高となった。
299人以下の組合でも1万円超え
全体集計で組合規模別に賃上げの要求額をみると、「1,000人以上」(賃金改善要求組合数206組合)が1万3,258円、「300~999人」(同393組合)が1万3,200円、「299人以下」(同885組合)が1万1,860円となっており、すべての規模で1万円を大きく超えている。また、すべての規模で、2014年以降で最も高い要求水準となった。
2月27日時点での要求状況を産別ごとにみると、自動車総連は1,101構成組合のうち、621組合が要求提出しており、電機連合は179組合のうちの54組合、JAMが1,456組合のうちの788組合、基幹労連が291組合のうちの156組合、全電線が35組合のうちの34組合で要求提出を終えている。賃上げの要求額の平均は、自動車総連が1万1,075円、電機連合が1万3,071円、JAMが1万1,693円、基幹労連が1万9,823円、全電線が1万3,824円。
「いいスタートが切れた」(金子議長)
金属労協が2月29日に開いた第4回戦術委員会の確認事項は、交渉序盤における経営側の姿勢について、「経営側は、人材の確保と定着は重要な経営課題であり、そのための施策の一つとして賃上げが重要であるとの認識を示し、物価上昇への対応の必要性も一定の理解を示している。また、賃上げの基盤となる価格転嫁を実現しようとする機運も高まりつつある」としている。
同日の記者会見で金子議長(自動車総連会長)は、「われわれの想定以上に各産別が意欲的な要求を推進している結果、交渉前半ではいいスタートが切れている」と、ここまでの要求状況を評価。自動車メーカーなどですでに満額回答が示されている点については、波及効果の観点から「好意的に受け止めている」と話した。
JAMの中小も賃金改善要求額が1万円を超える
JAMは3月1日、2月27日時点での第2回集計を発表した。それによると、ベア等の賃金改善分の要求額の平均は金属労協の発表のとおり1万1,693円(前年同期比2,964円増)で、組合規模別にみると、「99人以下」が1万1,364円、「100~299人」が1万1,964円、「300~499人」が1万1,550円、「500~999人」が1万2,200円、「1,000~2,999人」が1万1,570円、「3,000人以上」が1万3,611円と、いずれの規模も1万円を超えた。300人未満で括ると、1万1,610円(前年同期比2,851円増)となっている。JAMによると、全体の賃金改善要求額も300人未満の同額も、1999年の結成以来、最高水準。
JAMの今次闘争での賃金改善の要求基準は1万2,000円だが、賃金構造維持分を明示してかつ、賃金改善を要求している630組合のうち、ほぼ3分の1にあたる207組合は産別方針どおり1万2,000円を要求しており、「1万1,000~1万3,000円未満」以上の要求額となっている組合は430組合に及んでいる。1万9,000円以上を要求している組合も21組織ある。
1日に会見した安河内賢弘会長は、「順調なスタートを切ることができた」とし、「大きな一歩を踏み出せそうな期待感がある」などと評価した。