持続的な賃上げ実現に向けた適正な配分・交渉の積み上げを強調/自治労の中央委員会

2024年2月9日 調査部

地方自治体の職員などを組織する自治労(石上千博委員長、約71万7,000人)は1月29、30の両日、都内で中央委員会を開き、「2024春闘方針」を決めた。方針は、春闘を「1年のたたかいのスタート」との位置づけのもと、2024春闘の重点課題として、① 賃金改善、② 働きやすい職場の実現に向けたワークルールの徹底――を提示している。石上委員長は今春闘を「物価高騰が続くなかでそれを上回る持続的な賃上げを実現できるかが極めて重要」として、適正な配分の要求や労使交渉の積み上げなどに一丸となって取り組んでいくことを強調した。

組合員の意見集約や職場点検による課題の洗い出しを行い要求・交渉に取り組む

地方自治体の職員の賃金改定は、人事院勧告を踏まえて行われる、都道府県や政令市での人事委員会の勧告などをもとに年度後半期に決定される。2023年は人事院が8月7日に、官民格差に基づき、月例給の引き上げを初任給および若年層を中心にしつつ、全職員を対象に平均3,869円、一時金の支給額を0.10カ月分増とすることを勧告。その後、都道府県等の人事委員会でも同様に引き上げ勧告・報告が行われている。

自治労では、春闘を「1年のたたかいのスタート」と位置づけ。職場討議や学習会といった組合員から意見を集める機会の確保や職場点検による課題の洗い出しなどを通じて、組合員の意見・要望を踏まえた要求書の作成と要求・交渉、単組活動の活性化に取り組むことを指摘している。

石上委員長はあいさつで、「2023春闘は30年ぶりの賃上げ水準となったものの、中小企業全体に波及したとは言いがたい」として、賃上げを全国や中小企業に広げていくために春闘時期での交渉の決着と取り組みの強化を訴えた。

ただし、実際には交渉が春闘時期に決着しないことも多く、人事院勧告や都道府県等の人事委員会勧告の内容が明らかになった秋以降に、賃金確定闘争で再び要求提出を行い、当局側との交渉を追い込むことになる。

年齢ポイント賃金の到達目標を設定

方針は、① 賃金改善、② 働きやすい職場の実現に向けたワークルールの徹底――を2024春闘の賃金・労働条件改善の重点課題に設定している。

賃金改善については、すべての自治体単組で春闘期に職員の給与実態を把握・分析し、単組が目標とする賃金の到達水準の確認を行うことを提示。目標の実現に向けた具体的な運用改善について、「少なくとも『1単組・1要求』を行い、労使交渉に取り組む」としている。

具体的な賃金要求・運用改善については、単組ごとに昇給・昇格ライン(賃金カーブ)の実態を明らかにする必要性を示したうえで、「組合員個々の賃金実態を把握し、近隣自治体・同規模自治体との昇給・昇格ラインと比較し、具体的な到達目標を設定するため、モデルラインを作成する」とした。

なお、自治労では、単組の到達目標として、 ① 30歳・24万8,775円 ② 35歳・29万3,807円 ③ 40歳・34万3,042円――の個別ポイント賃金を設定している。

最低賃金については、自治体で働く労働者に適用する最低賃金として、「月給17万6,100円以上、日給8,805円以上、時給1,136円以上とすること」を求めている。

発注する取引に労務費を適正に転嫁する取り組みを推進

賃金改善ではほかにも、会計年度任用職員の処遇改善について、2023年4月の改正地方自治法の可決・成立により2024年度以降から勤勉手当が支給できるようになったが、「その他の賃金・労働条件についても常勤職員との均等・均衡に基づき、さらなる処遇改善が必要」と指摘。最低でも総務省が発表する「会計年度任用職員制度の導入等に向けた事務処理マニュアル」に示す内容へ到達する必要があるとして、労働条件の点検や課題の洗い出しを行い交渉・協議を進め、とりわけ、期末・勤勉手当が常勤職員と同月数になっていない単組には早急に是正を求める。また、遡及改定については、確定期に決着がついていない単組は、引き続き年度内の遡及改定に向けて交渉・協議に取り組むこととしている。

そのほか、自治体で民間委託が進むなか、昨今の物価高騰が公共民間職場にも大きく影響していることから、2023年11月に内閣官房・公正取引委員会が公表した「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」を踏まえ、自治体に適切な対応を求める必要性を提示。

石上委員長は、「自治体は発注者として、労務費の適正な転嫁に取り組まなければならない立場・責任がある」として、地域全体の賃上げを目指して、当局に対し委託料や工事費など、自治体が発注するすべての取引に労務費の上昇分を反映させる取り組みを進めていくことを訴えた。

対策マニュアルを基にカスタマーハラスメント対策の具体化を

働きやすい職場の実現に向けたワークルールの徹底については、カスタマーハラスメント対策等の推進や人員確保、長時間労働の是正と各種休暇の整備を重点課題と位置づけている。

カスタマーハラスメント対策等の推進については、県本部・単組に対し、自治労本部が作成した対策マニュアルを参考に、「当局にパワハラ指針や人事院規則を踏まえたカスタマーハラスメント対策の具体化を求める」として、実態を踏まえた職場別対策の要求の具体化やハラスメント防止指針等の策定を求めることとしている。

人員確保については、人員確保要求チェックリストなどを活用し、職場オルグや職場点検などによる実態把握を通じて、人員確保の交渉を全単組で実施することを指摘。

長時間労働の是正と各種休暇の整備については、すべての労働者の始業・終業時間や休日労働の正確な実態把握、不払い残業の撲滅、年次有給休暇の完全取得に向けた計画的使用促進に取り組むことなどを強調した。

70周年を新たなスタートとして、自治労運動のさらなる前進を/石上委員長

中央委員会では、2023春闘に引き続き、「公共サービスにもっと投資を!」キャンペーンの展開を実施することにも言及。本部作成の動画やチラシを活用し、地方連合会・地協および協力議員などと連携して地域アピール全国統一行動に取り組むことを示した。

中央委員会初日は自治労結成70周年の節目の日だったことから、石上委員長は、「改めて地方自治、地方財政の確立、地域公共サービスの向上を図っていく決意を持って、70周年を新たなスタートとして、自治労運動をさらに前進させていく」との考えを示した。