定昇相当分2.0%プラスベア分1万4,600円を要求/私鉄総連が春闘方針決定

2024年2月7日 調査部

私鉄やバスなどの労働組合が加盟する私鉄総連(木村敬一委員長、約11万3,000人)は2月1日、都内で第3回拡大中央委員会を開き、2024年の春闘方針を決定した。賃上げの統一要求として、月額基本給2.0%(定期昇給相当分)プラス1万4,600円(ベースアップ分)の引き上げを求める。

ベア分は率で「生活維持分3.3%+生活回復・向上分2%相当」

賃金の産業別統一要求は、「現行の基本給を、『定期昇給相当分(賃金カーブ維持分)2.0%』プラス『ベア分』1万4,600円」引き上げる」とした。

ベア分の内訳は、「生活維持分9,100円+生活回復・向上分5,500円」。前者は過年度物価上昇分(2023年4月~9月の消費者物価指数(全国総合・前年同月比))を用いて3.3%、後者については、連合方針などを参考に「生活の回復・向上、他産業・同規模・同業他社との賃金格差の是正、『人財』の確保、『人への投資』の重要性などを総合的に勘案」し2.0%相当としている(昨年の要求は定昇相当分2.0%+ベア分9,900円)。

そのうえで、定期昇給に関する制度が確立されていて、定昇相当分について労使で確認している組合は引き続き維持・向上に努め、賃金・人事制度がなく定期昇給分の推計が困難な組合は、定昇相当分について各組合の平均基本給2.0%を要求する。

人材流出防止に人への投資が重要/木村委員長

木村委員長はあいさつで、「人材の流出を防ぐために、人への投資は極めて重要」だとして、継続した賃上げの必要性を指摘。「そのためには積み上げてきた健全な労使関係の下、これまで以上に労使が共通認識を図りながら真摯に議論を重ねることだ」などと述べ、産別統一闘争を職場から展開していく姿勢を改めて強調した。

年間一時金要求は5カ月

年間臨時給(一時金)は、「賃金の後払い」的な性質を持つことに加え「生活防衛」などの観点もあることから、「2023年度の協定月数を堅持する」とともに、コロナ禍で「削減を余儀なくされた組合は、回復分を強く要求する」。「年間5カ月に満たない組合については5カ月」を要求し、最低でも3カ月分の水準をめざす。また、「協定は夏冬別途ではなく年間協定」を結ぶよう求める。

方針は、賃上げ要求に付随するポイント引き上げ基準を設定。「最低引き上げ額基準(高卒19歳・勤続1年)」として1万8,100円、「高卒18歳初任基本給」として16万2,300円、「バス運転士25歳初任基本給」として18万円を設けた。

このほか、ハイヤー・タクシーの専業組合の統一方針では、歩合給中心の賃金体系から、基本給もしくは固定的手当の充実をめざし、月例賃金を基本に年収増をはかる。基本給については「定昇相当分2.0%プラスベア分1万4,600円」の引き上げを要求。出来高制賃金組合は、固定給中心の安定型賃金の確立をめざし、この要求を「固定的賃金の新設・拡充の原資として要求する」。年間臨時給は、年間5カ月分を求める。

なお、非正規雇用労働者の賃上げについては、「1時間あたり120円以上」の引き上げを基本とし、連合の考え方を参考に「時給1,200円以上」の実現をめざしながら、雇用形態間などの格差是正に向けた取り組みを進める。

ライドシェア解禁阻止に向けた運動を強化

春闘方針では、賃金要求に加え「交通政策要求に関する取り組み」も提示。要員確保と人材育成や改善基準告示の改正への対応、適正運賃の実現、ライドシェア阻止などの取り組みを列記している。なかでも、政府の「デジタル行財政改革会議」の中間とりまとめで2024年4月からの部分的解禁の方針が示された「ライドシェア」については、「①二種免許を持たない運転手が白ナンバーで運転することから、安全性をどう担保するのか②タクシー会社が運転手の運行管理、車両整備、事故時の対応などを行う負担をどう償うのか③事故の際、自家用の自賠責保険・自動車損害賠償保険で十分に保障されるのか、など課題は山積している」ことを指摘。「世界的に見ても利便性・安全性の高い公共交通を持つ日本には不要であるという姿勢を堅持しつつ、全面的なライドシェア解禁阻止に向けた運動を強化する」考えを強調している。

戦術日程は2月28日に決定

日程としては、賃金・臨時給および産別最賃委任取り付けの要求を2月8日に提出する。ストライキ権の確立については、同月13日から3月1日正午までに各組合が投票を行って結果を集約。争議予告は、スト権確立投票の結果をふまえ、3月4日に総連が一括して行う。具体的な戦術日程は、交渉の経緯などをふまえて、2月28日に開催予定の中央闘争委員会で春闘推進方針として決定する。