すべての組合で1万円以上の賃上げに取り組む2024闘争方針を決定/金属労協の協議委員会
2023年12月13日 調査部
自動車総連、電機連合、JAM、基幹労連、全電線の5つの産業別労働組合でつくる金属労協(JCM、金子晃浩議長、199万9,000人)は6日、都内で協議委員会を開催し、2024年の賃上げ交渉に向けた2024闘争方針を決定した。賃上げの要求水準について、「定期昇給などの賃金構造維持分を確保した上で、すべての組合で1万円以上の賃上げに取り組む」と掲げ、前年の闘争方針から要求水準を4,000円引き上げた。
実質賃金の低下の早期改善を
方針は、「要求の基本的な考え方」のなかで「2013年闘争では、近年にない高い賃上げ額を獲得したが、3%を上回る物価上昇が継続し、実質賃金を改善するに至っていない。また、中長期的な労働分配率の低下や主要先進国で最も低い賃金水準などの課題についても、継続的な賃上げによって解決していく必要がある」と指摘。また、「賃金は組合員の生活の基盤」だとして、「実質賃金の低下を早期に改善する必要がある」と述べるとともに、景気の腰折れを防ぐため、「日本の基幹産業である金属産業の役割として、積極的な賃上げをさらに加速させていく必要がある」と強調した。
さらに方針は、人材獲得競争が激化するなかで、人材の確保・定着は金属産業のバリューチェーン存続にかかわる課題だとして、「『人への投資』を強化していく必要がある」と主張。2024年闘争では、「2023年闘争を起点とした積極的な賃上げを一過性のものとせず、さらに加速させていかなければならない」と述べた。
具体的な取り組みの内容について、賃金の引き上げ・改善からみていくと、「JC共闘全体で前年を上回る賃上げに取り組む」と明記。賃上げの要求水準について「定期昇給などの賃金構造維持分を確保した上で、すべての組合で1万円以上の賃上げに取り組む。具体的な要求基準については、各産別の置かれている状況を踏まえて決定する」「わが国の基幹産業にふさわしい賃金水準の確立の観点から、『金属産業のめざす個別(銘柄別)賃金水準』への到達に向けて賃上げに取り組む」と掲げた。
総合的な検討で結果的に1万円の大台に
JCM議長の金子・自動車総連会長は同日の記者会見で、1万円以上と設定した根拠について、「物価水準を上回る水準というのが生活を守るうえで重要であるという観点や、この1年間で培ってきた生産性向上を賃金に反映させるべきだということ。また、中期的、長期的にも低下している労働分配率という観点でも、引き上げる要素は多々ある」と述べるとともに、海外との賃金水準の差を少しでも縮めていく必要性を指摘。そのうえで、「そもそも金属産業に見合う水準、その絶対値に向けてギャップを埋めていくために、今年どれだけ引き上げられるかを含めて総合的に判断した。結果的に1万円の大台になった」と説明した。
また、金子議長は、方針の検討にあたって、5産別で最初から前提としてきた点が2つあるとし、「昨年を上回る水準感が必要だということは当然だが、とにかく今年は金属産業が引っ張っていかなくてはいけないという思いをもって、みんなでやるぞ、というのが1つ。他方で、JCの方針は5産別がしっかり足並みを揃える水準感でなければだめ。上目と下限と、そのなかで高めのぎりぎりはどこかと、ぎりぎりまで協議を重ねてきた。その結果が1万円だった」と述べた。
個別水準では「到達基準」を33万4,000円以上と設定
「金属産業のめざす個別(銘柄別)賃金水準」は、35歳相当・技能職の銘柄で、到達基準を上回る組合が製造業の上位水準に向けてめざすべき水準である「目標基準」を「基本賃金36万4,000円以上」とし、全組合が到達すべき水準である「到達基準」を「基本賃金33万4,000円以上」、全組合が最低確保すべき水準である「最低基準」について「到達基準の80%程度(26万7,000円程度)」と設定した。
これらの要求指標を前年方針と比べると、賃上げ要求水準は前年の「6,000円以上」から4,000円引き上げた。個別銘柄賃金水準については、「目標基準」は2万6,000円引き上げ、「到達基準」は2万4,000円引き上げで、「最低基準」は前年も到達基準の80%程度という設定だった。
企業最低賃金協定の最低到達目標は前年と同じ17万7,000円
企業内最低賃金協定については、前年方針と同様、17万7,000円(時間あたり1,100円)を「最低到達目標」と位置付け、これに到達していない組合は、早期に実現に向けて取り組むとしている。「最低到達目標」を達成した組合が、中期でめざす企業内最低賃金の目標については、前年方針と同じ「月額19万3,000円以上(時間あたり1,200円以上)」とした。
金属産業で働く35歳の勤労者で、これ以下の水準で働くことをなくす運動の「JCミニマム(35歳)」の水準は前年方針から1万円引き上げ、22万円とした。
一時金については、例年どおり、「年間5カ月分以上を基本とする」とし、最低到達水準は年間4カ月分以上とした。
人権デュー・ディリジェンスはプロセスからの参画を
23闘争方針で初めて盛り込んだ企業活動で人権侵害を撲滅する「人権デュー・ディリジェンス」の取り組みでは、プロセスへの労働組合の参画を掲げ、「人権デュー・ディリジェンスを実施するためのプロセスの設計段階・整備段階から参画」することや、実施にあたって、社内横断的な「人権デュー・ディリジェンス委員会」などにメンバーとして参加したり、労使専門委員会を設置するなどの形で参画し、情報提供・意見反映を行うことなどを盛り込んだ。
闘争日程については、要求提出について、大手で構成する集計対象組合を中心に2月20日(火)までに行うとし、ヤマ場の設定は、戦術委員会、中央闘争委員会で決定する。
金属労協に加盟する産別では、中小の機械・金属関連の労組を多く抱えるJAMが、賃金改善分だけで1万2,000円以上を基準とする賃上げ要求方針の素案を策定し、議論を進めている。基幹労連では、2年サイクルでの賃上げ交渉を実施しているものの、2024年の交渉では24年度の賃上げ要求基準だけを提示し、賃金改善分だけで1万2,000円以上を求める内容をベースに検討を進めている。