2014年以降で最高の賃上げ額となった2023年闘争を総括/金属労協の定期大会

2023年9月13日 調査部

自動車総連、電機連合、JAM、基幹労連、全電線の5産別でつくる金属労協(JCM、議長:金子晃浩・自動車総連会長、約199万9,000人)は5日、都内で定期大会を開催し、今春闘の総括となる「2023年闘争評価と課題」を確認した。賃上げ獲得組合比率、賃上げ獲得額ともに2014年以降での最高となったことをうけ、「評価と課題」は「組合員の生活の安心・安定はもとより、金属産業の現場力・競争力を高め、日本経済を好転させる契機となり得るなど、JC共闘の社会的な役割を果たすことができた」と総括。金子議長は2024年闘争に向け、「こうした取り組みをけっして今年単発で終わらせてはいけない」と強調した。

「賃上げ」獲得比率、獲得額ともに2014年以降で最高

2023年闘争の最終結果をみると、回答を引き出した2,634組合のうち、「賃上げ(賃金改善)」を獲得したのは2,078組合。賃上げ獲得組合比率は78.9%となり、賃上げが復活した2014年以降で最高を記録した。賃上げ獲得組合の賃上げ額の平均は5,391円で、こちらも2014年以降での最高水準となった。

これらの結果から「評価と課題」は、賃上げの全体感について、「2023年闘争では、取りまく状況を踏まえ、JC共闘として賃上げの要求基準を『6,000円以上』と示し、緊密に連携して取り組んだことで、相乗効果を発揮した。その結果、賃上げを獲得する組合を拡大するとともに、近年にない高い賃上げ額を獲得することができた。組合員の生活の安心・安定はもとより、金属産業の現場力・競争力を高め、日本経済を好転させる契機となり得るなど、JC共闘の社会的な役割を果たすことができた」と総括した。

また、規模別にみると、299人以下の組合の賃上げ額獲得組合の比率が前年を19.4ポイント上回ったことから、「賃上げ獲得の裾野を拡大することができた。これらの結果は、2014 年以降、10 年にわたってJC共闘全体で継続して賃上げを基軸とした『人への投資』に取り組んできた積み重ねが、成果につながったものと受け止める」と評価した。

課題は配分構造の歪みの是正の検証など

一方、課題については、「労働分配率の低下にみられる配分構造の歪みの是正に至っているかについては、検証していく必要がある」と述べるとともに、「2023年闘争では、経営側も物価上昇の生活への影響を考慮する姿勢を示し、近年にない高い賃上げ額を獲得することができたが、こうした成果を継続することによって、実質賃金を維持・向上させていく必要がある」と指摘。また、金属産業の賃金水準が付加価値生産性の高さに見合っていないことを課題としてあらためて強調した。

一時金については、最終的に2,187組合が回答を引き出し、平均月数は年間4.58月で、昨年を0.09カ月上回った。「評価と課題」は、「金属労協全体では、とりまく環境が厳しい中にあっても半数程度の組合が昨年を上回る回答を引き出し、平均月数についても2014年以降で最も高い水準となった。組合員の協力・努力と業績回復への貢献を企業が評価したものと受け止められる」と評価。一方、課題としては、JCMが定める最低獲得水準である年間4カ月を下回る組合は減少したものの、2割程度を占めている点をあげた。

来年も「継続して賃上げに取り組んでいく必要がある」と強調

「評価と課題」は2024年闘争について、経営は、「人への投資」は賃金に限らないとの主張を続けているとして、「賃上げを基軸とした『人への投資』の必要性について、引き続き粘り強く訴えると同時に、広く社会にわれわれの主張を訴え、賃上げの機運を醸成するよう注力していく」などと述べるとともに、「今次闘争を契機に、金属産業の付加価値生産性の高さに見合う、日本の基幹産業にふさわしい賃金水準確立に向けて、継続して賃上げに取り組んでいく必要がある」と強調。

「2024年闘争については、国内外の経済動向、物価動向、産業・企業の動向、雇用動向、賃金水準の動向などを見極めながら、賃上げを基軸とした『人への投資』によって、生活の安心・安定、大変革期を生き抜く『現場力』強化、個人消費を中心とする安定的・持続的な成長の実現を図るべく、積極的な賃上げを継続していくよう検討を進めていく」として、今春闘並みの賃上げの継続を求めていく姿勢を示した。

特に賃上げ要求水準の検討に向けては、「マクロの生産性向上に見合った賃金への適正配分、物価上昇に対応した実質賃金確保という考え方に立ち、総合的な判断を行った上で、取り組むことが基本となる。同時に、労働分配率の低下にみられる配分構造の歪みの是正、先進国の中で低位にある賃金水準の回復、賃金の底上げ・格差是正などの課題を解決していく観点も重視し、取り組んでいく」とした。

「今年の取り組みを単発で終わらせてはいけない」(金子議長)

あいさつした金子議長は、2024年闘争について、「来春に向けた方針策定に向けて少なくとも共有しておきたいのは、こうした取り組みを決して今年単発で終わらせてはいけないということだ」と述べたうえで、「日本の賃金水準をさらに引き上げていくということで日本 経済を軌道に乗せ、人材を確保し、産業・企業の国際競争力を維持向上させていく必要がある。そのためには今年の交渉を通じて、労使で共有した認識や価値観を引き続き持てるような経済環境をつくり、職場での成果を上げ、会社の理解が深まるように取り組んでいかなければならない」と話した。

賃上げなどの連合への移管は話し合いを継続

大会ではこのほか、向こう2年間の新運動方針を決定した。金属労協では、活動分野を、① 国際労働運動 ② 人材育成――の2分野絞り込む方向で、2021年度から組織改革に着手している。この大会以降、本格的な移行を図っていくことにしている。賃上げや労働条件に関する闘争については、連合の金属部門共闘連絡会議(JCM加盟5産別で構成)にその機能を移す方向性を提示している。

方針は、連合が10月の定期大会で決定する次年度運動方針の中で、「組織体制についても検証し必要に応じた見直しを提起する予定である」ことから、「『連合部門別共闘会議とJC共闘との連携強化』ならびに『連合の政策と金属労協の産業政策とをいかにして融合させていくのか』という観点で連合との話し合いを継続していく」とした。

役員改選を行い、金子議長(自動車総連)、梅田利也事務局長(電機連合)は再選された。