組合員一人ひとりが「働きがい・生きがい」を実感できる総合労働条件の改善・向上を/生保労連定期大会

2023年8月30日 調査部

生命保険会社の労働組合で構成する生保労連(勝田年彦委員長、約23万8,000人)は8月22日、都内で定期大会を開き、2023年度の運動方針を決めた。方針の柱の「総合的な労働条件の改善・向上」では、組合員一人ひとりが「働きがい・生きがい」を実感できる総合的な労働条件の改善・向上に向けた統一闘争の積極的な推進などを掲げる「総合生活改善闘争・基本方針」を提起。勝田委員長は、当面続く見込みの物価上昇を踏まえ、「23春闘からの流れを一過性のものに終わらせるのではなく、24春闘以降も持続的な賃金改善を実現していく必要がある」と訴えた。

全組合参加の統一闘争で総合的な労働条件の改善・向上を

運動方針の柱は、 ① 生保産業の社会的使命の達成 ② 総合的な労働条件の改善・向上 ③ 組織の強化・拡大 ④ 生保産業と営業職員の社会的理解の拡大――の4本。このうち、春闘の取り組みも含む「総合的な労働条件の改善・向上」については、「組合員の意識や取り巻く環境が変化していく中、『人への投資』を通じて安心と働きがいのもてる職場・ルールをつくることが一層求められている」との認識のもとで、「統一闘争を通じた共闘効果の発揮や相場形成、各組合の取組みに資する情報交換・情報提供等を通じて、組合員の総合的な労働条件の改善・向上をはかる」考えを示している。2024春闘も包含した「総合生活改善闘争」の基本的考え方を踏まえ、年間を通じた全組合参加の統一闘争に取り組む考えだ。

消費者物価やコロナ禍での業績動向を従来以上に注視して取り組んだ23闘争

生保労連では2004年度から、春闘を「労働諸条件全般を見据えた総合的な生活改善闘争」と位置付け、「総合生活改善闘争」として、年間を通じた統一闘争を推進してきた。2018年度には、中期ビジョン「チャレンジビジョン2030」を策定。「『人への投資』を通じて安心と働きがいのもてる職場・ルールをつくる」ために、労働条件の引き上げ・底上げ・安定化に取り組む重要性を再確認した。

23年度も同ビジョンの示す方向性を踏まえ、統一取り組み課題として ① 経営の健全性向上 ② 営業職員体制の発展・強化 ③ 賃金関係 ④ ワーク・ライフ・バランスの実現⑤多様な人材が活躍できる環境整備――の5つの柱を設定して秋季・春季を通じた取り組みを展開。「『生産性の高い活動・働き方』と『生活時間の充実』の相乗効果による働きがい・生きがいの向上に向けた取組みの推進」を全ての加盟組合が取り組む「統一共通課題」に設定し、年間を通じて取り組んだ。

統一要求基準の策定にあたっては、「組合員の生活と活動に影響を与える消費者物価の動向や、コロナ禍の中での業績動向を従来以上に注視しながら検討を進める」なかで、 ① 上昇基調にある消費者物価への対応 ② 新たな活動・働き方(オンライン活動、テレワーク)の定着・実効性向上に向けた対応 ③ 生産性の向上に向けた支援の充実――に取り組む必要がある点を共有。23春闘を「生保産業や組合員の将来に関わる重要な春闘」と位置付け、中央委員会で「組合員を後押しする積極的な『人への投資』を求める特別決議」を採択し、労使協議会を通じて生保協会・会員各社に誠意ある対応を要請するなどの取り組みを展開した。

「賃金改善の定義」を踏まえた幅広い要求を行い着実な成果が/営業職員

大会で報告された「2023春闘の取組みの成果と課題」をみると、実質的な収入の向上をめざした営業職員は、「日々の活動・努力が反映される労働評価をめざして」10組合が取り組んだ結果、「支給規定上の改善」に関わる回答を3組合が獲得したほか、「新契約活動に対する労働評価」(7組合)、「保有・保全活動に対する労働評価」(4組合)、「資格格付基準の緩和」(4組合)「臨時・特別措置の実施」(4組合)、「施策関係」(5組合)などの回答を得た。

こうした結果について「成果と課題」は、「各組合は『賃金改善の定義』を踏まえた幅広い内容の要求を行ったことから、着実な成果があった」ことを評価。今後の課題に、「各組合が営業職員の期待・納得感に最大限応えていけるよう、また、取組みの成果が実効性あるものとなるようフォロー・後押ししていく」ことをあげたうえで、「上昇傾向にある物価への対応等、営業職員の活動・生活に影響を与える情勢変化も見据えた上で、組合員の生活の安定・向上をはかるためにも、23春闘を起点とした賃金改善を継続できるよう努める」必要性を強調している。

賃金改善の考え方や「学び・学び直し」手当の一層の定着・浸透を/内勤職員

一方、年間総収入の向上に取り組むことを確認して臨んだ内勤職員の賃金改善は、10組合が月例給与の引き上げに関する要求を行った。また、臨時給与で12組合、年収制では3組合が要求を掲げたほか、4組合がパート・契約社員の賃金改善を求めた。

その結果、月例給与では3組合が「全層一律の引上げ」の回答を得たほか、「昇給ファンドの引上げ」と「特定層のさらなる引上げ」をそれぞれ1組合、「現行水準の維持」を2組合が引き出した。

臨時給与は、「現行を上回る支給水準の引上げ」を4組合が引き出したほか、「特別対応分を含めた現行水準の引上げ」を5組合、「基準ファンドの引上げ」と「現行水準の維持」の回答をそれぞれ1組合が得た。年収制でも、「現行を上回る支給水準」、「特別対応分を含めた現行水準の引上げ」、「昨年を上回る水準の昇給原資獲得」の回答をそれぞれ1組合が獲得。パート・契約社員の処遇改善では、1組合が「一時金の支給」の回答を引き出している。

「成果と課題」は、「長期化するコロナ禍の中での組合員の頑張りに応えるとともに、急激な物価上昇の中で組合員の生活の維持・向上をはかるため最大限の対応が示された」と評価する一方、今後は「賃金改善をめぐる各組合の課題認識にきめ細かく応えていくため、賃金改善の考え方および『学び・学び直し』に関する手当について一層の定着・浸透をはかる必要がある」などと指摘している。

24春闘の基本的な考え方や取り組み課題を含めた「総合生活改善闘争・基本方針」を確認

こうした結果を踏まえ、大会では2024春闘の基本的な考え方や取り組み課題を含めた「総合生活改善闘争・基本方針」を確認した。

生保労連は22年度に、「総合生活改善闘争をめぐる状況が大きく変化する中で、共闘効果を一層発揮し、各組合へのさらなる後押しにつなげる」ことを目的に、「2022年度『今後の総合生活改善闘争に関する研究会』を設置し、人への投資の理論補強や総合生活改善闘争の枠組みの見直しなどを検討してきた。

24年度の総合生活改善闘争では、検討内容に沿った基本方針や春季方針を掲げ、「組合員一人ひとりが『働きがい・生きがい』を実感できるよう、総合的な労働条件の改善・向上に向けた統一闘争をより積極的に推進する」方針。「チャレンジビジョン2030」の趣旨も踏まえて、各組合の取り組みや労使協議をバックアップする。さらに、「国際情勢や国内の経済・景気動向、各社の経営状況が、営業職員体制、組合員の雇用・労働条件等に与える影響を十分注視しつつ、新たな活動・働き方のさらなる定着・浸透に向けた支援を行う」ことも明記している。

取り組み課題を「統一取組み課題」「主体的取組み課題」「重点課題」に整理

取り組み課題について「基本方針」は、「『賃金改善』をはじめとした『賃金・制度関係の取組み』を全組合が統一して取り組む『統一取組み課題』」に設定。「『誰もが安心と働きがい・生きがいをもてる職場の実現に向けた取組み』等を各組合の課題認識に基づき取り組む『主体的取組み課題』」に位置付けている。さらに、必要に応じて「統一取組み課題」と「主体的取組み課題」のなかから、「全組合が統一して取り組む『重点課題』も設ける。これまでの総合生活改善闘争の趣旨も踏まえて、「統一闘争として共闘体制を確立し、年間を通じて情報交換・情報提供体制の充実をはかる」ことも明記。そのうえで、各組合は基本方針に掲げる「統一取組み課題」「主体的取組み課題」「重点課題」を踏まえて、「秋季から実効ある取組みを展開する」としている。

賃金改善は統一要求基準を定め、統一闘争で要求実現をめざす

「統一取組み課題」は、「賃金・制度関係の取組み」として、水準・施策面で「営業支援策の充実」と「賃金改善」、制度・運用面では「営業職員体制の発展・強化」と「人事・賃金制度」を提示している。「営業支援策の充実」と「賃金改善」については、中央委員会で「統一要求基準」を決め、統一闘争による効果を最大限発揮することで要求の実現をめざす。「営業職員体制の発展・強化」と「人事・賃金制度」は、各組合が主体的・積極的に課題を設定して取り組む。

各組合が主体的・積極的に取り組み課題を設定して経営の健全性向上をはかる

「主体的取組み課題」は、「経営の健全性向上」と「誰もが安心と働きがい・生きがいをもてる職場の実現」「ダイバーシティ&インクルージョン」を掲げる。「経営の健全性向上」については、通年的な労使協議による取り組みを中心に、各組合が主体的・積極的に取り組み課題を設定。「誰もが安心と働きがい・生きがいをもてる職場の実現」は、「『職場におけるジェンダー平等』および『ワーク・ライフ・バランスの実現』の着実な前進に向けた中期取組み方針」の考え方を踏まえた取り組みを展開する。「ダイバーシティ&インクルージョン」では、各組合の組織事情等に応じて、60歳以降の就労環境、パート・契約社員の処遇改善、障がい者、外国人の就労環境に関する取り組みを行う。

「重点課題」に関しては、「年次有給休暇取得日数の増加」と「男性の育児休業取得の推進」に加え、内勤職員の「『学び・学び直し』に関する支援の充実・強化」をあげている。

「24春闘以降も持続的な賃金改善の実現を」(勝田委員長)

勝田委員長はあいさつで、「長期化するロシアによるウクライナ侵攻や円安の影響等によるエネルギー価格の上昇により物価高はこれからも当面続く」との見通しを示したうえで、「23春闘からの流れを一過性のものに終わらせるのではなく、24春闘以降も持続的な賃金改善を実現していく必要がある」と強調した。

役員改選では勝田年彦委員長(住友生命)、田中祥平書記長(朝日生命)を再選した。