24春闘で実質賃金の低下をとり戻す賃上げを/全労連評議員会

2023年8月2日 調査部

全労連(小畑雅子議長、約70万2,000人)は7月28、29の両日、横浜市で第64回評議員会を開き、2023年度運動方針を確認した。方針は、「たたかう労働組合のバージョンアップで職場・地域から労働者が声を上げ平和で公正な社会をつくろう」と呼び掛け、24春闘での実質賃金の低下を取り戻す賃上げの実現や、労働者の権利を守り労働条件を改善する運動の展開などを運動の方向性として示し、今後1年間の取り組みの具体化と充実を訴えている。

たたかう労働組合のバージョンアップで要求の具体化をはかる

方針は、「たたかう労働組合のバージョンアップで職場・地域から労働者が声を上げ平和で公正な社会をつくろう」をスローガンに掲げたうえで、運動の方向性として昨年の定期大会で確認した、① 賃上げと時短・労働法制改悪阻止 ② 公共を取り戻すこと ③ 軍拡・増税反対、改憲阻止――の3つの要求の柱について、「さらに具体化をはかる」としている。

正規労働者を上回る非正規労働者の賃上げと格差是正を

一つ目の「賃上げと時短・労働法制改悪阻止」の取り組みでは、「24国民春闘で、大幅賃上げ・底上げと労働時間短縮の実現、労働法制の規制緩和を阻止する」ことを提示。「物価高騰から生活をまもるだけでなく、世界に類を見ない30 年余りに及ぶ実質賃金の低下をとり戻す賃上げとしなければいけない」ことを強調している。

方針は、23春闘では「全国で1,529 組合(57.2%)がスト権を確立し、341 組合(支部・分会を1組合として換算)が405 回のストライキを実施してたたかった結果、平均6,000 円台となるのは2001年以来の23 年ぶりの高い賃上げを実現させた」などと記載したうえで、「統一闘争とストライキ権を背景にした春闘は、中小企業やもともとの賃金水準が低い産業・職種においても、『労働者が労働組合で声を上げれば変えられる』とのビジョンを労働者に示す意義ある実践となった」と評価している。その一方で、「一部の労働組合を除くと、物価高騰を上回る賃上げには至らず、『月3万円、時給190 円、10%』の統一要求基準から見て、不十分な妥結水準であることは直視しなければならない」ことも指摘しており、24春闘で「低賃金・不安定雇用で働く多くの非正規労働者が正規労働者を上回る賃上げを実現し、雇用や男女間などの格差是正をはからせる」ことをめざす考えを打ち出している。

最賃1,500円の早期実現や労働者の権利を守る闘争も

また、2024年の通常国会での法案提出と法改正をめざす「最低賃金全国一律への法改正をめざす2024プラン」の取り組みでは、「早期に1,500円実現をめざし、10月改定までのたたかいを強化」する考え。職場・地域からストを含む多彩な行動を展開する「最賃ビッグアクションデー(仮称)」の開催を検討するとともに、中小企業支援策の抜本的な充実を訴えていく。

労働政策・労働法制については、現政権のすすめる ① 労働移動の円滑化 ② 多様な働き方の普及 ③ 労働時間法制の規制緩和 ④ 「雇用によらない働き方」の普及・促進――を取り上げ、「労働者の権利を守り、労働条件を改善するための闘争を展開する」とした。あわせて、法定労働時間7時間への短縮や長時間労働の解消をめざし、所定労働時間を短縮する「時短運動」を展開。「加盟組織で労働時間・休日休暇制度を改善する労働協約を広げ、さらに地域的な拡張適用(労働組合法18 条)を進めて、法定労働時間短縮の運動へと発展させる」としている。

地域の「公共」を取り戻す運動を推進

方針は、ケア労働者をはじめとする公務・公共サービスや教育に携わる労働者の人手不足にも言及。「利用者に対するサービス水準確保、社会機能維持のためにも、社会的な役割にふさわしい処遇の改善が急務」だとして、「対使用者に向けた要求運動の強化とともに、公定価格で規定されるケア職場などでは、国や自治体の責任を求めて行く運動をすすめる」ことを主張している。

二つ目の「地域の『公共』」に関しては、「医療や公衆衛生体制や公務をはじめ、介護や福祉、保育、学校、郵便局、公共交通、通信、流通、エネルギーなど、止めてはならない公共財の多くが市場に放り出されている」などと指摘。 ① 公共の職場で働く労働者の労働条件を抜本的に改善する ② 「地域ならではの公共」を地域住民との共同で取り戻すたたかいをすすめる ③ 地域ぐるみで「地域循環型の経済・社会の構築」をめざす ④ 食と農業をまもる――ことで、地域の公共を取り戻す運動を進める姿勢を強調している。

三つ目の「憲法を守りいかす政治への転換」については、「平和と人権と民主主義が守られ憲法がいきる社会をめざし、労働組合として全力をあげる」などとしている。

4つの戦略の具体化・充実を

方針は、上記3つの要求の柱の実現に向けて、昨年の大会方針で確認・推進している ① たたかう労働組合のバージョンアップをはかる ② 格差是正へ「非正規や女性差別根絶、ジェンダー平等実現」を全運動に ③ 組合員の力を最大限に引き出し、要求運動と組織拡大の結合で組織の再生をはかる ④ 要求実現が可能な政治への転換で要求実現をはかる――の4つのアプローチ(戦略)の具体化・充実を進める構え。