正社員組合員、短時間組合員ともに結成以降で最高の引き上げ額/UAゼンセンの3月末までの賃上げ回答状況

2023年4月12日 調査部

UAゼンセン(松浦昭彦会長)は5日、2023労働条件闘争の3月末までの妥結概況を発表した。賃上げ額は正社員組合員、短時間組合員ともに、UAゼンセン結成後の2013年賃金闘争以降での最高となっており、正社員の制度昇給込みの妥結額は1万2,350円で、短時間(パートタイム)組合員が時給で59.2円となっている。短時間組合員の引き上げ率(5.68%)は正社員組合員の引き上げ率(4.16%)を8年連続で上回った。

正社員組合員の「引き上げ分」は7,731円

正社員組合員については、415組合(39万1,353人)が妥結しており、制度昇給とベア・賃改善などを合わせた賃上げ額全体の加重平均は1万2,350円(4.16%)。賃金体系維持が明確な組合(226組合、25万6,697円)でみたベアや賃金改善などの「引き上げ分」は7,731円(2.54%)となっている。「引き上げ分」を昨年同時期(2,356円、0.78%)と比べると、額では5,000円以上高い水準となっている。

規模別にみると、制度昇給とベア・賃金改善などを合わせた賃上げ額全体の加重平均は、「300人以上」が1万2,449円(4.17%)で、「300人未満」が1万730円(3.90%)と、ともに1万円を超えている。「引き上げ分」は、「300人以上」が7,784円(2.54%)で、「300人未満」が6,690円(2.35%)。

パート妥結組合の4割弱が満額回答

短時間組合員については177組合(59万6,620人)が妥結しており、制度昇給とベアなどを合わせた時給引き上げ額の加重平均は59.2円(5.68%)で、正社員組合員の引き上げ率(4.16%)を1ポイント以上上回った。短時間組合員の引き上げ率が正社員組合員の引き上げ率を上回るのは、これで8年連続のこと。また、妥結した組合の4割弱にあたる66組合で満額回答となった。前年と比較できる173組合で引き上げ額を前年と比べると35.2円(3.35%)の増加となっている。

契約社員組合員については、51組合で妥結しており、制度昇給とベア・賃金改善などを合わせた月給の引き上げ額は9,164円(4.10%)。前年と比較できる48組合で引き上げ額を前年と比べると4,772円(2.12%)上回っている。

「今でも早め、高めの波を継続」(松浦会長)

5日に記者会見した松浦会長は「今でも賃上げ回答は早め、高めの波を続けることができている」と評価。パートの引き上げ率が正社員を上回っている点をあげ、「雇用形態間格差の是正にも資する数字となっている」と述べるとともに、全体の賃上げ率からみて、「物価上昇から組合員の生活を守ることができている」などと話した。

労働時間の改善など総合労働条件の改善についての主な回答状況では、5日の会見のなかでは、「年間休日増(1~7日)による年間所定労働時間の短縮」(元気寿司労働組合ほか10組合)や、「定年年齢の60歳から65歳への引き上げ」(アツギ労働組合、はせがわ労働組合など)、「配偶者出産休暇を全雇用区分同一の有給特別休暇とする」(全ヤオコー労働組合)、「人材育成強化に向けた労使専門委員会を設置する」(イオングループ労働組合連合会イオンモール労働組合)などの報告があった。

製造中小の6割以上が昨年水準を3,000円以上上回る

部門別の妥結状況をみると、製造産業部門では、制度昇給とベアなどを合わせた賃上げ額全体の加重平均は1万2,905円(4.16%)。「引き上げ分」は7,695円(2.49%)となっている。5日の会見で同部門の吉山秀樹事務局長は、300人未満の中小では、「引き上げ分」獲得組合の6割以上が、昨年水準を3,000円以上上回っていることなどを報告した。

流通部門では、この時期として妥結組合数がUAゼンセン結成後の2013闘争以降で過去最高となっており、制度昇給とベア・賃金改善などを合わせた賃上げ額全体の加重平均は1万1,774円(4.04%)で、「引き上げ分」は7,757円(2.56%)。同部門の波岸孝典事務局長は「先行組合が生み出した相場を継続できている」とし、パート組合員の賃上げについて、「正社員組合員の賃上げが過去最高となるなか、正社員を大幅に上回る引き上げとなっており、雇用間格差の是正ができている」と話した。総合労働条件では、パート組合員に対する連続休暇や休暇積立制度、一時金、退職金で成果があがっている状況についても報告した。

総合サービス部門では、制度昇給とベア・賃金改善などを合わせた賃上げ額全体の加重平均は1万3,706円(4.59%)で、「引き上げ分」は7,703円(2.51%)となっている。同部門の原田光康事務局長は、正社員組合員の賃上げでは妥結組合数が今年は100組合で、昨年同時期(61組合)を大幅に上回っている状況を説明するとともに、「引き上げ分」の水準が昨年のほぼ3倍だと話した。コロナ禍で打撃を受けた外食でも健闘がみられ、「フードサービス部会」で妥結している組合の賃上げ額全体の平均は1万3,367円で、同一組合で昨年と比較すると8,186円増となっているという。