中小でも回答を受けた約7割の組合が賃金改善分を獲得/3月を終えての金属労協と各加盟産別の賃上げ回答状況

2023年4月12日 調査部

自動車総連、電機連合、JAM、基幹労連、全電線でつくる金属労協(JCM、金子晃浩議長)は4日、今次闘争での3月31日現在の賃上げ回答集計をまとめた。それによると、回答を引き出した組合の約8割、中小組合だけでみても約7割の組合が、ベアや賃金改善などの「賃上げ」を獲得。「賃上げ」額の平均は5,647円と昨年同時期の1,735円を大幅に上回るとともに、賃上げが復活した2014年以降での最高水準となっている。

回答・集約組合の8割がベアや改善分を獲得

JCMが4日に公表した3月末現在での「2023闘争要求・回答状況」によると、3,102ある構成組合のうち、2,520組合が賃金について要求。そのうち2,177組合(86.4%)がベアや賃金改善などの賃上げを要求しており、賃上げ要求額の単純平均は7,798円となっている。

回答・集約に至ったのは1,342組合で、そのうち1,194組合が賃金構造維持分を確保。さらに、「賃上げ」を獲得したのは1,082組合で、「賃上げ」を要求した組合のほぼ半数(49.7%)が「賃上げ」を獲得。回答・集約した組合に占める「賃上げ」獲得組合の割合は80.6%で、「299人以下」の中小組合でも同割合は7割超(73.3%)となっている。

中小でも5,000円を超えるベア・改善分を獲得

「賃上げ」分の回答額の単純平均は5,647円で、昨年同時期の1,735円を大きく上回るだけでなく、賃上げが復活した2014年以降で最も高い水準となっている。規模別にみると、「1,000人以上」が6,900円、「300~999人」が5,969円、「299人以下」が5,082円となっている。

一時金は、1,971組合が要求し(このほかの235組合は業績連動方式などを採用している)、回答・集約しているか、確定しているのが904組合。平均月数は4.67カ月で、昨年同時期を0.07カ月上回った。JCMでは4カ月を最低獲得水準に定めているが、4カ月以上を獲得した組合の割合が80.0%と8割に達した。370組合が前年の水準を上回っており、同水準だったのが222組合で、下回ったのは232組合となっている。

4日に行われた記者会見で金子議長(自動車総連会長)は「大手組合がつくり、高めてきた良い(賃上げの)気運が、中堅・中小の回答に至っても継続しており、例年にないレベルの賃上げの広がりをみせている」と話した。

自動車総連では賃上げ総額でも改善額でも昨年の3倍以上

それぞれの加盟産別の回答状況をみると、自動車総連では、4月3日現在で、300人未満の中小組合の90.4%が賃金改善を獲得。賃金構造維分も含めた全体の獲得額は8,578円で、改善分は前年同時期の3.1倍にあたる5,042円となり、2014年以降の最高水準となっている。販売部門でも回答の引き出しが進んでおり、改善分の獲得額は昨年同時期の3.3倍にあたる6,658円となっている。一方、非正規雇用で働く従業員の回答額は時給で40.8円(昨年同時期15.0円)で、「月額換算すると正社員組合員よりも高い獲得額になっている」(金子会長)。

電機連合では、回答を受けた201組合のうち、199組合で水準改善を獲得。92.5%の組合が、回答のヤマ場直前に歯止め基準に設定した5,000円以上を獲得しており、7割以上の組合が、産別としての統一要求基準である7,000円以上の改善額を獲得している。水準改善額の平均は6,723円で、神保政史委員長は「これに6,000円~8,000円の賃金体系維持分が乗るので、4%~5%の賃上げを図れたことになる」と説明した。

基幹労連では、263組合が要求しており、57.7%にあたる161組合が回答を引き出している。要求貫徹期間を3月末までとしていたが、4月末までに延長した。3月末までの賃金改善の回答額の平均は6,573円で、定昇相当分込みでは1万897円となっている。神田健一委員長は、造船専業では1万円台の満額回答を獲得している組合も出ていると話した。すべての加盟組合が改善分を要求した全電線からは、2014年以降で初めて、すべての組合で有額回答を引き出したとの報告があった。

JAMでは改善額も定昇込み妥結額も過去最高

中小労組を多くかかえるJAMでは、3月末時点で、全体の45.9%の組合が回答を引き出しており、32.5%の組合が妥結に至っている。賃金改善額、改善獲得率、賃金構造維持分も含めた妥結額ともに、結成(1999年)以降での最高となっている。

賃金改善額の平均は、全体で5,445円、300人未満の組合で5,199円と、どちらも5,000円を超える水準。300人未満では、17.1%にあたる59単組が、JAMの要求基準である「9,000円以上」の回答を引き出している。

賃金構造維持分も含めた妥結額の平均は、全体では9,543円。300人未満では8,985円(3.56%)で、安河内賢弘会長は、厚生労働省の過去の統計における中小の賃上げ額と比較すると、1993年の8,699円(3.91%)に匹敵する水準だと説明し、「歴史的な回答が中小組合でも出ている」と話した。ただ、その一方で、中小では3万円にも及ぶ回答を引き出した組合もあれば、1,000円にとどまった組合もあると説明し、「なかには非常に厳しい経営状況によって、組合の要求に応えられなかったところもあった」と話した。