加重平均1万1,114円・3.70%に/連合の第3回回答集計

2023年4月12日 調査部

連合(芳野友子会長)は4月5日、2023春季生活闘争の第3回回答集計結果(3日17時時点)をまとめた。平均賃金方式で回答を引き出した2,484組合の定期昇給相当分込みの賃上げ額の加重平均は1万1,114円で前年同時期比4,795円増。賃上げ率は3.70%で、前年同時期を1.59ポイント上回った。300人未満の中小組合(1,528組合)の加重平均は、8,554円・3.42%で、こちらも額・率ともに前年同時期を大きく上回っている。賃上げ率はこの時期の集計結果が残る2013年闘争以降で最も高く、高水準を維持している。

全体・中小とも3%台の賃上げ率を維持

第3回回答集計結果によると、集計組合7,660組合の約7割にあたる5,423組合が月例賃金の改善を要求しており、2,290組合が妥結済み。そのうち賃金改善分を獲得したのは1,377組合で、要求組合に対する獲得割合は60.1%となっている。

平均賃金方式で回答を引き出した2,484組合の定昇相当込みの賃上げ額は、加重平均で昨年同時期比4,795円増の1万1,114円。率は同比1.59ポイント増の3.70%。これを組合規模別にみると、「300人以上」では額が昨年同時期比4,912円増の1万1,325円で、率は1.60ポイント増の3.72%。「300人未満」は、額が同比3,429円増の8,554円で、率が1.36ポイント増の3.42%となっている。

「300人未満」の賃上げ率は、第2回集計では3.39%だったが、第3回集計は若干上がった格好。連合が公表している第3回集計結果の推移をみても、300人未満の賃上げ率は賃上げを全体で取り組む春闘を再開した2014年闘争以降、ほぼ2%前後だったが、今回は3%強を維持している。

先行組合の賃上げの流れを継続

ベアや賃金改善などの「賃上げ分」が明確に分かる1,786組合の賃上げ分の加重平均は6,130円(2.16%)で、昨年同時期を4,498円(1.63ポイント)上回った。このうち、「300人未満」の中小組合は、額が同3,557円増の5,338円で、率も1.36ポイント増の2.07%となっている。いずれも額・率ともに賃上げ分の集計を始めた2015闘争以降で最も高い。連合は、「中堅・中小組合が、先行組合が作り出した『賃上げの流れ』をしっかりと引き継いだ成果だ」などとして交渉の波及効果を強調している。

パート・有期契約社員の賃上げ率はフルタイム組合員より高水準に

パートタイマーや有期契約社員などの「有期・短時間労働者・契約等労働者」の賃上げの状況は、時給では加重平均(62万111人の集計)で58.70円となり、昨年同時期を33.18円上回っている。月給は加重平均(同1万7100人)で8,897円となり、昨年同時期を3,313円上回った。賃金の引き上げ率を概算するとそれぞれ5.5%、4.0%となり、フルタイムの組合員の平均賃金方式での賃上げ率よりも高い水準となっている。

初任給の伸び率は3.59%

一時金については、フルタイム組合員の年間月数の加重平均は4.92カ月(161万8,133円)で、月数では昨年同時期を0.02カ月下回った(額は同2万3,375円増)。短時間労働者は前年同期比0.21カ月増の0.99カ月で、額は同4万4,701円増の11万5,706円だった。

なお、連合は今回から初任給についても集計をまとめている。それによると、429組合の単純平均は7,511円で改定後の初任給は21万6,999円となった。伸び率は3.59%。「正確な比較のデータは持ち合わせていないが、バブル期以来の高い伸び率ではないか」(仁平章総合政策推進局長)という。

「雇用形態間格差是正の取り組みが進んでいる」(芳野会長)

同日、開いた記者会見で芳野会長は、「賃上げ要求、妥結とも昨年より早いペースで進んでいるなかで、回答は依然高い水準を保っている」ことを評価。「このタイミングの集計には中堅中小組合が引き出した回答が増えてきているが、そのなかにあって中小組合の率が前回(3月24日)公表分の結果を上回ったのは特筆すべき」とした。パートタイマーや有期契約労働者などの賃上げ率がフルタイム組合員を上回る回答が示されていることにも触れ、「3月末時点では2017闘争以来7年連続であり、雇用形態間格差是正の取り組みが進んでいる」と強調した。

各共闘会議も回答状況を報告

また、会見では各共闘連絡会議の代表も出席し、各共闘での回答状況を報告した。金属部門の金子晃浩副会長(自動車総連会長)は、3月末までに回答を引き出した組合の約8割の組合が賃金改善分を獲得していることや、賃上げ額の単純平均が5,647円になっていることなどを指摘して「直近で賃金改善分の取り組みを統一的にやり始めた2014年以降で最も高い水準だ」と述べた。

化学・食品・製造等部門の酒向清副会長(JEC連合会長)は、定期昇給相当分とベースアップの合計の回答額が昨年比5,156円増の1万2,250円になっているとしたうえで、今春闘の特徴として、人手不足に対応するための初任給の引き上げや有期・短時間・契約等労働者の時給改善、企業内最低賃金の引き上げ、働き方の改善などの取り組みが進んでいることに加え、人材育成の強化をめぐって労使協議が行われている状況を紹介した。

流通・サービス・金融部門の松浦昭彦会長代行(UAゼンセン会長)は、UAゼンセンの流通部門と総合サービス部門で賃上げ率が4%超になっていることを報告。生保労連の営業職員と内勤職員に係わる交渉では、「営業職員は手当の増額や特別支給金で実質的な収入の向上の回答を引き出しており、内勤職員は月例給与その他臨給も含めて、賃金改善に関する回答を引き出している」などと説明した。8年ぶりに業界統一で3%程度のベア要求を掲げた損保労連も、「目下交渉中だが、複数の組合で要求を満たす会社回答を引き出しているなど、おおむね順調」。コロナ禍で大きな打撃を受けたホテル・旅館業等とその関連会社の労組で組織するサービス連合は、「回復途上で1%以上の実質的な賃金改善要求だが、順次今回答が出始めていて、ベースアップや例年以上の賃金改善原資の確保などに合意する加盟組合が目立っている」という。

インフラ・公益部門の安藤京一副会長(情報労連委員長)は、「多くの組合で暮らしを支えるインフラ事業の持続性・継続性の確保に向けて、その必要性を労使双方が認識しながら交渉を進めた」結果、「若年層を中心とした人材確保に向けた賃金改善を引き出した組合や、高騰する物価への対応の必要性を労使で共有し、企業業績にばらつきがあるなかでも満額回答を含めて賃金改善やインフレ手当などを引き出すことができた組合も複数あった」などと報告した。

交通・運輸部門の難波淳介副会長(運輸労連委員長)は、民鉄では「多くの組合でコロナ前の水準に回復し、物価高・物価上昇を加味して賃金改善がはかれた」ことを指摘。JRは「主要7社すべてでベアの獲得ができ、グループの中小労組で主要7社のベア額を上回る回答を得た組合もある」とした。物流については、「妥結した179組合の80.4%が前年同額以上を確保。とりわけ999人以下の中堅中小組合で前年を上回る妥結結果を得た」。航空は49労組が要求書を掲げ、48労組において交渉が終了したなどと話した。