2012年結成以降で最も高い賃上げで妥結/UAゼンセンの第1のヤマ場回答の状況

2023年3月24日 調査部

UAゼンセンは16日、本部で記者会見を開き、2023労働条件闘争の第1のヤマ場(15日)を終えた16日午前10時時点での賃上げ妥結集計結果を公表した。正社員組合員、短時間組合員ともに、UAゼンセン結成(2012年秋)以降の闘争で最も高い賃上げ額となっている。正社員組合員では、「制度昇給」と「ベアなど」を合わせた賃上げ額全体の加重平均で1万3,830円(4.56%)となっており、パートタイマー組合員の時給の引き上げ額(制度昇給込み)は61.8円(5.90%)。

正社員1万3,830円(4.56%)、約4割で満額回答

UAゼンセンが16日に発表した妥結集計によると、正社員組合員については117組合、短時間(パートタイム)組合員については91組合、契約社員組合員については19組合が妥結した。合計で74万人強の組合員の賃上げが決まったことになる。

正社員から妥結状況をみると、「制度昇給」と「ベアなど」を合わせた賃上げ額全体での妥結額の加重平均は1万3,830円、率にすると4.56%で、昨年同時期の7,490円(2.42%)を大きく上回った。UAゼンセンは、妥結した117組合の約4割にあたる45組合で満額回答だったと説明した。

賃金体系維持分が明確な77組合についての「ベアなど」の引き上げ額をみると、加重平均は9,144円(2.95%)で、昨年同時期の2,563円(0.84%)を大きく上回った。

中小が大手を上回る妥結額と引き上げ率に

規模別にみると、「制度昇給」と「ベアなど」を合わせた賃上げ額全体での妥結額の加重平均は、「300人以上」が1万3,799円(4.55%)、「300人未満」が1万5,926円(5.27%)で、中小組合のほうが高い妥結額と引き上げ率を達成している。

中核組合で、満額回答以上で妥結した主な組合は、製造産業部門ではカネボウ労組(引き上げ分だけで8,260円、3.0%)、日東紡績労組(同9,120円、3.0%)、クラレ労連クラレ労組(同2万円、5.97%)、東京応化工業労組(同1万1,164円、3.17%)など。流通部門ではイオンリテールワーカーズユニオン(同1万1,404円、3.81%)、ダイエーユニオン(同9,424円、3.01%)、全髙島屋労働組合連合会髙島屋労組(同9,000円、2.12%)など。総合サービス部門ではすかいらーくグループ労連すかいらーく労組(1万200円、3.02%)、サイゼリヤユニオン(同8,718円、3.46%)など。

短時間組合員は平均61.8円(5.90%)、率で正社員上回るのは7年連続

組織の約6割を占める短時間組合員の妥結状況では、「制度昇給」と「ベアなど」を合わせた賃上げ額全体での妥結額(時給)の加重平均は61.8円、率にして5.90%となっており、正社員組合の引き上げ率(4.56%)を1%以上上回った。ヤマ場直後のこの時期で、短時間組合員の引き上げ率が正社員の引き上げ率を上回るのはこれで7年連続のこと。前年と比較できる90組合の加重平均額で昨年同時期と比べると、37.5円(3.55%)の増加となっている。

主な中核組合の短時間組合員の時給引き上げ額(制度昇給除く)をみると、ウエルシアユニオンが55.0円(5.52%)、イオンリテールワーカーズユニオンが65.5円(6.38%)、イオン九州ユニオンが64.96円(6.57%)、ダイエーユニオンが73.5円(6.75%)、マックスバリュ東海MYユニオン72.37円(6.53%)などとなっている。

契約社員組合員の妥結状況については、19組合で妥結しており、「制度昇給」と「ベアなど」を合わせた賃上げ額全体での妥結額の加重平均は1万675円(4.64%)となっており、短時間組合員と同じように、正社員の引き上げ率を上回っている。

正社員組合員と短時間組合員の賃上げ額全体の妥結額はそれぞれ、UAゼンセン結成(2022年秋)以降で最高の水準となっている。松浦昭彦会長は記者会見で、「物価上昇に見合う形で賃上げを獲得できている」と評価。産業間、規模間、雇用形態間の格差是正についても「前進する妥結内容になっている」と語った。

化学・繊維素材などで昨年を大きく上回る妥結水準

部門別の妥結状況をみると、「製造産業」では、正社員組合員の賃上げでは18組合で妥結しており、「制度昇給」と「ベアなど」を合わせた賃上げ額全体での妥結額の加重平均は1万5,799円(4.78%)で、賃金体系維持分が明確な17組合についての「ベアなど」の引き上げ額は加重平均で9,679円(3.00%)。製造産業部門の吉山秀樹事務局長は、他の製造業とも「遜色ない妥結水準」だとし、化学・繊維素材を中心に昨年を大きく上回る妥結水準になっていると説明。その要因として、「物価上昇で負担が増えている組合員の暮らしを守り、期待に応えるという強い意志のもとで、同業種で共闘体制をつくり、常に情報交換を図った結果」などと話した。

「流通」は、正社員組合員の賃上げでは63組合で妥結。賃上げ額全体での妥結額の加重平均が1万2,824円(4.36%)で、賃金体系維持分が明確な38組合についての引き上げ額は加重平均で8,887円(2.92%)。流通部門の波岸孝典事務局長は、会見の時点で正社員組合の賃上げ交渉ではほぼ半数が妥結していると説明し、「異例の早さだ」と話した。また、住生活や家電、ドラッグストア、GMS(総合スーパー)などが、ヤマ場前にパート組合員の高い引き上げ、満額回答を引き出したことに他の組合も「刺激を受けた」とし、コロナ禍で厳しい状況にあった百貨店や専門店でも「苦しい中でも現状を認識して回答を引き出した」と話した。

「総合サービス」は、賃上げ額全体での妥結額の加重平均が1万6,435円(5.27%)で、賃金体系維持分が明確な22組合についての引き上げ額は加重平均で9,654円(3.03%)。総合サービス部門の原田光康事務局長は、同部門の妥結組合の3割は外食関係だとし、コロナ禍で最も打撃を受けた部門だが、「会社側も世間の情勢をふまえて回答し、この妥結状況につながった」と話した。