賃金改善額が8,000円を超え、2014年以降で最高水準に/金属労協大手組合のヤマ場までの賃上げ回答

2023年3月24日 調査部

金属労協(JCM)に加盟する大手組合の先行回答状況によると、3月17日現在では、賃金改善分の平均額は8,131円となっており、昨年の最終結果である1,994円を大幅に上回るだけでなく、賃上げが復活した2014年以降で最も高い水準となっている。JCMが集中回答日に設定した3月15日に記者会見した金子晃浩議長は「JC共闘による相乗効果を発揮できた」などと評価した。

集中回答日の時点で約85%が満額回答

JCMは、春闘の最大のヤマ場である「集中回答日」を、今春闘では3月15日(水)に設定した。賃上げ相場の牽引役として、「集計対象組合」として各加盟産別から登録された大手組合は全部で54組織ある。15日の午後1時30分時点で、うち43組織が回答引き出しを終えたが、43組織の約85%にあたる組合で満額回答となり、回答日を待たずに経営側が回答を提示する早期決着が相次いだ。

JCMがまとめた3月17日現在での回答集計によると、集計対象組合54組合のうち、51組合がベアや賃金改善などの「賃金改善分」を要求。要求額の単純平均は8,280円となっている。51組合すべてで回答を引き出しており、51組合すべてで賃金改善分を獲得。回答額の単純平均は8,131円となっている。

賃上げが復活した2014年以降でみると、賃金改善分の平均額は、昨年までは最終結果で最大2,801円(2015年)、最低で1,051年(2017年)だったことから、今年の改善額は突出して高い水準であることがわかる。

経営側が例年以上に要求の考え方に理解を示す

3月15日に行われたJCMおよび連合金属共闘連絡会議による記者会見で、JCMの金子議長(自動車総連会長)は、今次交渉での経営側での交渉姿勢について「経営側は経済の好循環に向けた社会的要請を意識し、物価の上昇による生活への影響や、労働市場の動向などを意識し、われわれの要求の考え方に対して例年以上に理解を示した」と振り返った。

同時点ですべての組合が賃金改善を獲得し、2014年以降で最も高い改善額となるとともに、満額回答が相次いだ結果について、金子議長は「異例」と表現しながら、「組合の生活の安定、安心はもとより、金属産業の現場力、競争力を高め、日本経済を好転させる契機となり得る、金属労使の社会的役割を果たすもの」と評価。特に満額回答の獲得については、「産業間の連携を密に図りつつ、JC共闘の相乗効果を発揮することができた」と述べた。

早期決着が目立った点については、「今年は物価上昇の影響も大きく、生活への影響の変化もあり、組合員の声に経営側としても共感する部分が多々あったのでは」との見方を示した。 

先行組合の一時金の平均獲得月数は5.40カ月

3月17日現在での一時金の状況をみると、集計対象の54組合中、要求方式を採用しているのは31組合で、すべての要求組合で交渉を終えている。昨年と比べると、昨年の水準を「上回った」のが16組合、「同水準」が3組合、「下回る」が11組合で、平均月数は5.40カ月。2014年以降の最終結果と比べると、昨年の5.61カ月に次ぐ高い水準となっている。

企業内最低賃金協定については、今次闘争では34組合が協定額の引き上げを要求。25組合が水準引き上げを果たした。平均引き上げ額は7,395円で、昨年の最終結果である3,093円を大きく上回るとともに、賃金改善と同様、2014年以降で最高の引き上げ額となった。

金子議長は17日に行われた連合と各共闘連絡会議の共同記者会見では、「これから続く中小が良い流れを引き継ぎ、回答を波及させることが大事」などと語った。