30年ぶりに賃上げ率を3%台に乗せる/連合のヤマ場を終えての賃上げ回答集計結果

2023年3月24日 調査部

3月14日~16日のヤマ場を含む13日~17日までを「先行組合回答ゾーン」に設定していた連合(芳野友子会長)は17日、同日10時時点での第1回回答集計結果を発表した。定期昇給相当分込みの賃上げ額の加重平均は1万1,844円、率で3.80%となり、1994年以来、30年ぶりに賃上げ率が3%を超えた。

昨年のヤマ場を5,000円以上上回る

回答集計結果によると、805組合(158万9,739人)について集計した平均賃金方式での定昇相当分込みの賃上げ額の加重平均は、昨年同時期よりも5,263円高い1万1,844円。賃上げ率は、昨年同時期よりも1.66ポイント高い3.80%となった。まだ第1回の集計であり、集計組合数が増えるにつれて賃上げ率は変動していくものの、賃上げ率が3%を超えたのは、1994年(3.11%)以来。また、過去の第1回集計結果と比べると、比較可能な2013年以降で最も高く、初めての3%台となっている。

規模別にみると、300人未満では、額が昨年同時期よりも3,642円高い9,026円で、率が1.40ポイント高い3.45%。300人以上は、額が昨年同時期よりも5,310円高い1万1,928円で、率が1.66ポイント高い3.81%となっている。300人未満の中小の賃上げ率が3%を超えるのも、全体集計と同様に1994年以来のこと。第1回集計だけでの比較をみると、やはり2013年以降で最も高い水準となっている。

ベアや賃金改善などの「賃上げ分」が明確に分かる組合(612組合、134万1,474人)でみた「賃上げ分」の加重平均は、昨年同時期より5,265円高い6,907円で、率は1.83ポイント高い2.33%となった。規模別にみると、300人未満が昨年同時期よりも3,978円高い5,724円で、率は1.49ポイント高い2.12%。300人以上は、額が昨年同時期よりも5,297円高い6,937円で、率が1.84ポイント高い2.34%となっている。

時給引き上げ額も2013年以降のヤマ場で最高水準

パートタイマーや契約社員などの「有期・短時間・契約等労働者」の賃上げについてみると、時給の加重平均(49万7,865人について集計)は、昨年同時期の26.25円を大きく上回る61.73円となっている。時給引き上げ額を過去(2013年以降)の第1回集計と比べると、最も高い水準。月給の加重平均(7,247人について集計)は1万598円(4.58%)で、昨年同時期の4,680円(2.09%)を大きく上回るだけでなく、1万円を超える水準となっている。

連合の芳野会長は、17日に行われた共闘連絡会議との合同記者会見で、ヤマ場を終えての回答状況について、「物価高が組合員の生活を直撃するなかで、組合が職場の現状をしっかりとふまえた要求を出したのに応えて、会社側も企業の中長期発展を見据えて、人への投資の観点から真摯かつ有意義な交渉が行われたことこそ、意義がある」と語った。

金属共闘では約8割が満額獲得

会見では、「金属」、「化学・食品・製造等」、「流通・サービス・金融」、「インフラ・公益」、「交通・運輸」の5つの共闘連絡会議の各議長が、同時点での共闘における回答状況を報告した。

「金属」の議長である金子晃浩・自動車総連会長は、金属共闘連絡会議に登録している57組合のうち、約8割にあたる46組合で満額を獲得したと報告。「化学・食品・製造等」の議長である酒向清・JEC連合会長は、「引き上げ分」の平均獲得額が、昨年の2,318円を大きく上回る8,037円となったと報告した。

「流通・サービス・金融」の議長である松浦昭彦・UAゼンセン会長は、UAゼンセンの流通・サービスの組合が獲得した「引き上げ分」の引き上げ率は3%前後となっていると説明。パートタイム労働者の時給引き上げでは60円強の水準で妥結が進んでいるとした。生保労連の加盟組合では、営業職員で営業手当の増額などが獲得できていると報告。コロナ禍の影響を大きく受けたサービス連合では、1%以上の賃金改善を要求した結果、1%を上回る内容で合意した組合があるなどと紹介した。

コロナの影響を受けた病院ではベアゼロも

「インフラ・公益」の議長である安藤京一・情報労連委員長は、情報サービスについて、業績は好調であるものの人手不足であり、賃上げについては有額回答だけでなく、手当の支給の回答も出ているなどと紹介。パート・有期労働者の賃上げ交渉では、正社員を上回る率の賃上げを獲得した組合が複数出ていると報告した。ヘルスケア関連では、コロナの影響で病院経営が苦しくなっており、ゼロ回答のところもあると話した。

「交通・運輸」の難波淳介・運輸労連委員長は、JRではベアの満額回答が出ているとし、民鉄では、おおむね賃金改善が図られていると説明。航空関連では48組合中、17組合が回答を引き出しており、16組合で水準引き上げを獲得していると報告した。物流では、厳しい会社との交渉が続いており、運輸労連加盟組合ではいまのところ満額回答はゼロだと報告。ただ、引き上げ額は昨年に比べれば500円程度上回っていると話した。難波委員長はまた、運輸業界に関して、他産業との賃金格差の拡大と、運転者に対する時間外規制が強化される2024問題の影響が危惧されると話した。