2%の月例賃金改善と生活防衛のための年間10万円を要求/NTT労組の春闘方針

2023年2月17日 調査部

NTT東西やドコモ、データなど、NTTグループ企業の労働組合でつくるNTT労働組合(鈴木克彦委員長、約14万4,000人)は2月14日にWEB方式を併用して都内で中央委員会を開き、月例賃金で2%の引き上げと、生活防衛への措置として年間10万円を要求する「2023春季生活闘争方針」を決めた。冒頭のあいさつで鈴木委員長は生活防衛のための10万円について、「切実な要求として、会社側に決断を求めていく」姿勢を強調した。

すべての働く仲間の『底上げ』『底支え』に向けた年間収入の引き上げを

方針は、基本的考え方として「NTT労組に結集するすべての働く仲間の『底上げ』『底支え』に向け、年間収入の引き上げをめざす」ことを主張。そのうえで、要求の考え方として、① 持続的な賃金上昇を図る観点 ② 組合員の生活防衛 ③ NTTグループ事業の成長・発展に寄与している組合員の努力と成果 ④ 「中期経営戦略」の具現化を含む今後の事業戦略に対応していくための「人財への投資」――等を総合的に勘案して、月例賃金・特別手当(一時金)等の引き上げに集中する要求を提起している。

具体的には、NTT労組中央本部は、主要会社に対して「基準内賃金および成果手当の2%改善」を求めるとともに、「組合員の生活防衛への措置として10万円(年間)」を要求。それを受けて、各企業労組本部は「対置するグループ会社等に対し、本部要求に基づき、すべての雇用形態に具体的要求を確立する」こととしている。

月例賃金2%は主要5社の現行6,400円に相当

月例賃金2%の改善要求は前年春闘と同水準。NTT労組によると、「基準内賃金および成果手当」の2%は、主要5社の正社員の現行制度ベースで6,400円に相当するという。

また、年間10万円の要求は、「民間シンクタンク等の物価上昇に伴う家計負担の調査データを踏まえて設定した」(柴田謙司事務局長)もの。ナショナルセンターの連合や産別組織の情報労連が「3%程度」の賃上げを求めているが、それに対し「2%」としたことついては「『賃金改善のモメンタムの必要性について会社側も認識している』ことと、『NTTグループを取り巻く経営環境と、ここ数年の要求の考え方や決着水準を意識した』ことが理由だが、すべての雇用形態に対する生活防衛分の10万円と合わせれば求められる水準をクリアしている」(同)などと説明している。

なお、昨年は2%の改善要求に対して、正社員の月例賃金を一人平均2,200円(資格賃金700円、成果手当1,500円)や60歳超の継続雇用の月給制社員1,500円など、すべての雇用形態での賃金改善を引き出して決着している。

物価高騰に対応した10万円を「切実な要求として会社側に決断を求める」(鈴木委員長)

賃金改善の要求について、鈴木委員長はあいさつで、「『賃金は付加価値を生み出す原動力である』という認識をあらためて持ち、賃上げを中心とする『人への投資』によって、生産性と実質賃金を持続的に改善することを強く意識した」ことを指摘。そのうえで、2%の月例賃金改善に加えて、急激な物価の上昇等に対する10万円を要求したことについて、「現下の状況をふまえた社会的要請でもあることを極めて重く捉え、切実な要求として会社側に決断を求めていく」考えを強調した。

一方、特別手当(一時金)は、昨年水準を基本に業績堅調な会社は上積みをめざす構え。そのほか、地域別法定最低賃金に上積額を加算した「情報労連最低賃金」の協定締結の維持・拡大に取り組むとともに、サプライチェーン全体で生み出した付加価値の適正配分に向けて、すべてのNTTグループ会社等に対する「要請文」の提出などを通じて、公正な取引環境の実現に取り組む。