春闘期から物価上昇分以上の賃上げや格差是正の取り組みを/自治労中央委員会

2023年2月10日 調査部

地方自治体の職員などを組織する自治労(川本淳委員長、73万4,000人)は1月30、31の両日、都内で中央委員会を開き、「2023春闘方針」を決めた。方針は、春闘を「1年のたたかいのスタート」として、すべての単組で「要求-交渉-妥結(書面化・協約化)」のサイクルを確立することを強調。「あなたの声ではじめる春闘」を掲げ、重点課題として、① 賃金改善 ② 会計年度任用職員の処遇改善 ③ 職場からの働き方改革――を提示している。川本委員長は実質賃金が上がらない状況や物価上昇を踏まえて「これまで以上に積極的に賃上げを求める春闘にしていきたい」として、労働組合が一丸となって物価上昇分に留まらない賃上げを求めていくことや、月例賃金の改善、格差是正の取り組みなどを強力に推し進める必要性を訴えた。

賃金改善を目指して実態・課題の把握や取りまとめ、要求に取り組む

地方自治体の職員の賃金改定は、人事院勧告を踏まえた都道府県等に置かれている人事委員会の勧告などをもとに年度後半期に決定される。2022年は人事院が8月8日に、官民格差に基づき、月例給の引き上げを若年層を対象として平均921円、一時金の支給額を0.10カ月分増とすることを勧告。その後、都道府県・政令市等の人事委員会でも同様に引き上げ勧告・報告が行われている。

自治労では、春闘を「1年のたたかいのスタート」と位置づけた上で、すべての単組で「要求-交渉-妥結(書面化・協約化)」のサイクルの確立を徹底するよう要請している。とくに今季交渉では、物価上昇が続く状況や組合員の厳しい生活実態を踏まえ、「勧告通りの給与改定にとどまらない賃金改善を勝ち取っていく」として、春闘期から実態と課題の把握や要求の取りまとめなどに取り組むことを求めている。ただし、実際には春闘時期に交渉が決着しないことも多く、人事院勧告や各団体の人事委員会勧告の内容が明らかになった秋以降、賃金確定闘争で再び要求提出を行い、最終的な回答引き出しに向けて当局側との交渉を追い込むことになる。

川本委員長はあいさつで、今春闘を「質の高い公共サービスの維持、各職場で奮闘する組合員の期待に応えるための重要なたたかい」と強調。公務員労働者の賃金については、「労働組合の基本的役割である要求・交渉すらしないとなれば組合員が結集してくれるはずがない」として、秋以降の賃金確定闘争を見据えて、昇給・昇格の運用や手当の改善などによって「すべての単組でラスパイレス指数100を目指す賃金闘争を展開するために、春闘期から強い決意を持って賃金要求を行ってほしい」と訴えた。

また、新規採用者の組織化の重要性にも言及。「加入率の低下は、労働組合としての影響力の低下、組織の存亡に関わるものであり、改めて春闘期に集中的な取り組みを行って、継続的に多くの職場の仲間の組合結集を追求してほしい」と訴えた。

目標とする賃金の到達水準を確認した上で改善に向けて「1単組・1要求」実施を

方針は、① 賃金改善 ② 会計年度任用職員の処遇改善 ③ 職場からの働き方改革――を2023春闘の賃金・労働条件改善の主要課題に設定している。

賃金改善については、すべての自治体単組で春闘期に職員の給与実態を把握・分析し、単組が目標とする賃金の到達水準の確認を行うことを徹底した上で、目標の実現にむけた具体的な運用改善について、「少なくとも『1単組・1要求』を行い、労使交渉に取り組む」ことを目指す。

具体的な賃金要求・運用改善については、単組ごとに賃金カーブの実態を明らかにする必要があるとして、「単組は組合員個々の賃金実態を把握し、近隣自治体・同規模自治体との昇給・昇格ラインと比較し、具体的な到達目標を設定するため、モデルラインを作成」することを強調した。

なお、自治労では、単組の到達目標として、 ① 30歳・24万8,775円 ② 35歳・29万3,807円 ③ 40歳・34万3,042円――の個別ポイント賃金を設定している。

最低賃金については、自治体で働く労働者に適用する自治体最低賃金を確立するとして、「月給16万9,800円以上、日給8,500円以上、時給1,096円以上とすること」を求めている。

中途採用者の初任給・昇格要件や定年引き上げに伴う運用改善も目指す

賃金改善の取り組みではほかにも、中途採用者の状況について、「初任給格付けは低く抑えられ、昇格も遅い実態がある」として、「すべての単組で中途採用者の初任給決定(前歴換算)・昇格要件に関する規則・運用の点検・改善を行う」とした。

また、定年引き上げについても言及。2023年4月からのスタートに向けて、既に条例化できている単組では「運用面の積み残し課題や再任用職員の賃金格付け等についての交渉・協議を進める」とし、条例化できていない単組では「条例事項に関する最低限の獲得目標を踏まえ、条例化を目指す」としている。

常勤職員と同月の期末手当支給を達成している単組では勤勉手当を積極的に要求

会計年度任用職員の処遇改善に関しては、2020年4月に導入されたものの、「2022春闘および2022年度賃金等制度調査結果集約において、常勤職員との均衡に基づき制度が整備されている自治体は低位にとどまっている」と指摘。最低でも、総務省が発表する「会計年度任用職員制度の導入等に向けた事務処理マニュアル」に示す内容へ到達する必要があるとして、「会計年度任用職員制度の整備状況チェックリスト」を活用し、労働条件の点検や課題の洗い出しを行い交渉・協議を進めることを強調した。とりわけ、期末手当の月数が常勤職員並びとなっていない単組は、早急に是正を求めることとしている。

また、勤勉手当について、常勤職員と同月の期末手当の支給を達成している単組は積極的に求めることを提示。本部は「会計年度任用職員に勤勉手当をはじめとする手当支給を可能とする法令等の改正を早期に行うことを求める」などとしている。

職場点検や安全衛生委員会の活用により全単組で人員確保の交渉を

職場からの働き方改革では、まず、人員確保について、2022春闘において要求を提出した自治体単組が約5割にとどまっていることを受けて、「2023春闘においても全単組で要求書を提出し前進回答を得ることを目指す」と強調。職場オルグや人員配置の実態などの「職場点検を実施し、安全衛生員会での時間外労働状況データを活用して、人員確保の交渉を全単組で実施する」としている。

また、長時間労働の是正については、厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」や、自治労本部が作成した「適正な労働時間管理のための職場チェックリスト」などを踏まえ、交渉・協議と合意により、「すべての労働者の始業・終業時間や休日労働の正確な実態を把握できる労働時間管理体制を構築すること」を提起している。

春闘期からの人員要求やキャンペーン行動を通じての人員・財源確保を訴える

中央委員会では、2022春闘に引き続き、「公共サービスにもっと投資を!」キャンペーンの展開を実施することにも言及。新型コロナウイルス感染症の対応などで「公が果たすべき役割やそれを支える公共サービス労働者の重要性についても社会的認知が進んだ」として、本部において、地域で公共サービスを支える人員の確保に見合った財源の確保などを求めることを示した。

川本委員長は、「現場の組合員からは、人が足りないという切実な声が寄せられている」として、6月の人員確保闘争に向けて「春闘期から全ての単組が当局に人員要求を行うこと」や「キャンペーン行動を通じて全国で公共サービスを守るため人員と財源の確保を訴える取り組みをお願いしたい」と訴えている。