ベアなどの要求基準を9,000円とする2023年春季生活闘争方針を決定/JAMの中央委員会

2023年1月20日 調査部

機械・金属関連の中小労組を多く抱えるJAM(安河内賢弘会長、36万7,000人)は17日、都内で中央委員会を開催し、2023年春生活闘争方針を決定した。物価上昇下での実質賃金の確保を強く意識し、ベアや賃金改善分だけでみた賃上げ要求基準について、昨年から3,000円上積みして9,000円に設定した。

闘争の役割について「実質生活の維持・改善をめざす」と明記

方針は2023年春季生活闘争の役割について、「2022年からの賃上げの流れを継続し、すべての単組がJAM方針に基づいた要求を提出し、実質生活の維持・改善をめざす」と強調。要求準備段階で、人手不足や賃金水準の低下、格差拡大などの中期的な課題や価格転嫁の必要性などを「職場討議において共有し、『賃金水準にこだわった要求』の徹底を進める」とした。

また、「エネルギー・原材料価格の高騰の対応と賃上げ分の確保をめざし取り組みの強化を図る」とし、本部が作成したマニュアルなどを活用しながら、適正取引に関する職場のチェックと当該企業に対する「価値にふさわしい価格取引実現に向けた環境整備」の取り組みの要請を継続するとともに、関連省庁や業界団体への働きかけを連合・金属労協(JCM)と連携して継続するなどとした。

賃上げ要求基準9,000円は昨年より3,000円高い水準

賃金要求の考え方は、「すべての単組は、賃金の『底上げ』『底支え』『格差是正』に向け、賃金の絶対額を重視し、賃金水準にこだわった要求を追求する」とし、今年も賃金の上げ幅ではなく、絶対額を重視した考え方を強調。各単組は、自らの賃金水準のポジションを確認したうえで、方針のなかで設定する「JAM一人前ミニマム基準」「標準労働者の要求基準」(それぞれ内容後述)に基づき、あるべき水準を設定し、要求するとした。

また、「中長期的に実質賃金が低下し、世界に見劣りする賃金の改善、過年度物価上昇に対する実質生活の維持、あるべき水準との乖離を踏まえ、JAMは、分配構造の転換を進める観点から『底上げ』『底支え』と『産業内及び企業内の格差是正』をめざす」とし、「具体的には、賃金構造維持分を確保した上で、所定内賃金の引き上げを中心に、単組の課題を積み上げ、9,000円を基準とし『人への投資』を要求する」と、昨年方針よりも3,000円増の要求基準で取り組む姿勢を提示。さらに、物価上昇下での実質賃金確保を強く意識させるため、「すべての単組は、従来からの取り組みに加え、生活防衛の観点から実質賃金を維持・向上させる」と記した。

一人前ミニマム基準では18歳~30歳までを増額

具体的な賃上げの要求基準をみると、絶対額での水準向上につながる個別賃金要求では、単組が各年齢ポイントにおいて、目指すべき賃金水準の参考とする「JAM一人前ミニマム基準」について、所定内賃金で18歳:16万9,000円、20歳:18万1,500円、25歳:21万2,500円、30歳:24万3,000円、35歳:27万円、40歳:29万5,000円、45歳:31万5,000円、50歳:33万5,000円と設定。18歳~30歳までの年齢ポイントはすべて昨年方針から増額した。

また、30歳と35歳の標準労働者の要求基準(高卒直入者の所定内賃金)として、全単組が到達すべき水準である「到達基準」については、30歳で27万3,000円(昨年比3,000円増)、35歳で31万3,000円(同3,000円増)と設定。到達基準に達している単組が目標とすべき水準である「目標基準」では30歳を29万円(昨年と同額)、35歳を34万円(同1万円増)と設定した。

有期雇用労働者が無期転換した場合や、中途採用者の採用賃金の最低規制としても位置づける年齢別最低賃金基準も設定。「35歳まで、各単組の年齢ポイントの一人前労働者賃金水準の80%を原則とし、高卒初任給を勘案して決定する」とするとともに、最低水準として、18歳:16万9,000円、25歳:18万4,000円、30歳:19万4,500円、35歳:21万6,000円を掲げた。

平均賃上げ要求基準は構造維持分込みで1万3,500円以上

平均賃上げ要求に取り組まざるを得ない単組のための平均賃上げ要求基準では、「JAMの賃金構造維持分4,500円に9,000円を加え『人への投資』として1万3,500円以上とする」とした。平均賃上げ要求する単組においても、賃金実態を把握するなど、賃金水準にこだわった取り組みを進めるとしている。

企業内最低賃金協定の締結に向けて、18歳以上の協定を締結していない単組では、まず、18歳以上の協定締結に取り組む。地域別最低賃金と企業内最賃の差が50円に満たない場合は、直ちに引き上げを要求し、その際の基準として、「18歳正規労働者月例賃金を、所定内労働時間で割り戻した時間額とする」ことなどを明示した。

一時金要求は、「年間5カ月基準または半期2.5カ月基準の要求とする」とし、最低基準を「年間4カ月または半期2カ月」とした。

中小企業の価格転嫁を進める取り組みについては、JAMでは日頃から「価値を認め合う社会へ」の取り組みとして様々なメニューを講じているが、賃上げ交渉と並行して、労使協議などに取り組む。

闘争の日程については、統一要求日を2月21日(火)とし、統一回答指定日を3月14日(火)、15日(水)とした。

「30年にわたる実質賃金低下に歯止めを」(安河内会長)

中央委員会であいさつした安河内会長は「今年は、30年にわたる実質賃金の低下に歯止めをかける春闘だ。それぞれの企業状況はまだまだ厳しい状況が続くが、今次春闘でしっかりとした賃上げを実現しないと日本の国際的な地位はますます低下する」と強調。中小企業の価格転嫁の実現に向けては、23日に予定される連合と経団連との懇談会のなかで直接訴え行くことを明らかにした。